モノクロ同盟 (3)
1−4
しろい 先生、原稿ができました!
伊藤に原稿用紙を押しつける。
しろい 読んでください! 先生!
伊藤 ……じゃない!
しりぞく、しろい。
しろい ……誰?
くろかわ、はいじま、「知らない」のジャスチャー。
しろい (伊藤へ)誰?
伊藤 伊藤ふゆみ。あんたたちの先生の、もと恋人ですけど。
ぼうし、とりに来たんですけど!
合鍵、返しに来たんですけど!
そうね、あわよくば、ってのもあったわよ!
あわよくば、岩谷と話して、よりをもどせないか、とかね!
しろい ごめんなさい。
伊藤 いいわよ、もう。
先生? 先生ですって? 小娘どもを弟子にして……元気でやっているようね。もう二度と来ないわ。わたしのことは、どうぞ、適当にして……来たと言っても、来なかったと言っても……
しろい ごめんなさい。
伊藤 いいのよ、もう。
しろい もう1回、ゆっくり言ってください。
伊藤 ……伊藤ふゆみ。あんたたちの先生の、もと恋人ですけど。ぼうし、
とりに来たんですけど。合鍵、返しに来たんですけど。そうね、あわよくば、ってのもあったわよ。あわよくば、岩谷と話して、よりをもどせないか、とかね。
このあいだ、しろい、あきて岩谷の机で寝る。
しろい はーい。
伊藤 分かった?
しろい ……
伊藤 ……寝てる?
しろい (起きて)寝てないです。
伊藤 ……帰る。
伊藤、去ろうとする。
1−5
そこへ、岩谷、登場。伊藤とはちあわせる。
岩谷 ……ひさしぶり。
伊藤 ……ひさしぶり。
3人 先生!
くろかわ そうじが終わりました。
岩谷 ごくろうさん。
はいじま 食事ができました。
岩谷 ありがとう。
しろい 原稿ができました。
岩谷 置いといて。
しろい はーい。(寝る)
岩谷、自分の机で寝ているしろいをほうっておいて、持っていた封筒をしろいの原稿にかさねる。
岩谷 で?
伊藤 ……
岩谷 なんの用?
くろかわ 先生、この人、勝手に……
岩谷 まあ、いいから。
はいじま おなかすいてて、こわいんです。怒るんです。
岩谷 ああ、そう。
伊藤 わたし……
しろい (起きる)伊藤ふゆみ。あんたたちの先生の、もと恋人ですけど。ぼ
うし、とりに来たんですけど。合鍵、返しに来たんですけど。そうね、あわよくば……
伊藤 (さえぎる)なんでおぼえてんのよ。
岩谷 合鍵?
伊藤 あ、それは……
伊藤、くろかわを指さす。
くろかわ、合鍵を出して、見せる。
くろかわ 先生……
岩谷 なんだ。
くろかわ だって……
岩谷 ……やるよ。
くろかわ やった!
しろい 先生。
岩谷 なんだ。
しろい (封筒を手に)これは、まさか……
岩谷 新作。二〇〇枚。
しろい しろい、これ……
岩谷 読んでいいよ。
しろい (封筒をあける)失礼します!
くろかわ、はいじま、原稿をのぞきこんでいる。
くろかわ うーん……
はいじま ……仕事してて、いいですか?
岩谷 いいよ。
く・は かしこまりました!
くろかわ、はいじま、去る。
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