『指名を、受ける』vol.2
まず、家族(家内)に相談しました。
会社の名前や仕事の内容で私と結婚した訳ではないので、私が選んだ道であれば問題ないと、励ましてもらいました。
私は、祖父の孫、父の子として育ってきました。
その祖父は二代目の家元(二代目花柳壽輔)に大恩があり、花柳流があったから祖父の立場があり、自分の今の『生』があり、生活があります。
血筋として、一族として、流儀に貢献すべきとの考えに至りました。
また、幼少の頃より流儀の関連行事において、流儀の方々は、ただ祖父の孫というだけで何者でもない私をたてて下さり、社会人になったあとにおいても、その姿勢を崩さずにいて下さっていたので、血筋として一族としての、責務を果たさなければならないと思いました。
一族の中でその責務を果たせる者が、もう自分しかいないと言われて、そこから逃げることは、人として出来ないと考えました。
ただ、考えれば考えるほど、家元という立場は責任が大きく、青山貴彦という名前でなく花柳壽輔という名前になることからも、
青山貴彦という一個人ではなくなり、己を滅していかなければならず、なってなれるものでもないと、心に何度も尋ね、尋ねては立ち止まり、進んでは戻れない人生の選択を、することになったのです。
とにかくお預かりして、次の代へきちんと残し、初代、ニ代、三代目の家元に、そして流儀の方々のご恩に、報いることが大事だと考えていました。
・・・・・・
三代目と直接お会いすることになった時、東京會舘のプルニエに足を踏み入れた時から、私の「生きる道」は、変わりました。
本当に自分で良いのか、自分しか候補がいないのか、自分の口でお尋ねしました。三代目は丁寧に応えてくださいました。その真意をお聞きした上で、
お引き受けすることの、最後の覚悟をいたしました。
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