洋楽『Phantom Bride』(Deftones) 激情的な繊細
轟音のギターやベースがゴリゴリ鳴り、破壊的なドラミングと苦しい叫び声が響いてくる。それなのに、彼らの音楽はどこか泣けてくる。
Deftones。彼らは僕を飽きさせることなく魅了する。
彼らの音楽はオルタナティブメタルやらdjentやら分類されるけど、いわゆるメタルっぽさは実はあまりない。ギターリフも陰鬱で刻まれると言うよりかは、地響きや巨大な生物のいびきみたいな感じだ。それでいて全体的な雰囲気は退廃的で不思議な世界観を醸している。出始めの頃、「メタル界のレディオヘッド」とか評されていた。
ものすごい個性を持っている反動か、曲のレパートリーは広いとは言えない。けど、アルバムごとの変化は確かに感じられる。
個人的には7thアルバム『Koi No Yokan』(ていうかこのタイトルなに?)から大きく変わって、軽やかさが出てきている気がする。何より驚いたのがギターが前面に出てくるようになってきていることだ。このアルバムは(彼らにしては)アップテンポな曲で始まるが、途中に爽快さすら感じるギターソロがフィーチャーされている。気持ちいい。そしてアルバムラスト曲『What Happened to You?』もだいぶ衝撃だった…この曲、大好きです。
続く8thアルバム『Gore』も素敵なアルバムだ。サウンドのインパクトは従来のアルバムに比べると薄れているが、ギターがさらに複雑さを増して、妖艶さを伴っている。リードトラックの『Prayers/Triangles』なんて、最高。彼らが元々持っているニューウェーブの感覚が余すところなくはっきされている傑作アルバムである。
その中でも、僕が特に好きな曲が『Phantom Bride』だ。
悲しげな音色から始まる、彼らお得意のローテンポのナンバー。曲が進むにつれて激しさは増していくが、そのメロディもサビも切なさと美麗さがはっきりとしていて、ぐいぐい引き込まれる。どこまで音楽に貪欲なのだ。
そしてギターソロ。ここまで泣けるソロを弾けるとは。弾いてるのはステファンかな? チノかもしれないけど、どちらにせよあの強い見た目からは想像がつかないくらいの繊細さを感じる。このギャップがいいんだよなあ。
メンバーは複数のプロジェクトを進行させているけど、どれも素敵な作品を残している。ずっと、長く活動して、いい音楽をたくさん作って欲しい。
彼らの音楽を追いかけるとき、僕はいつも自分が少年だった頃を思い出す。純粋に音楽を、音を楽しんでいた頃だ。
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