漫画『江戸前の旬』 涙と食欲

読んでいる漫画に影響されて、その日何を食べるか決めた。結構な人がそんなことを経験したことがあると思う。

料理を題材にした漫画って、やっぱり面白い。バトルものよりも日常系や人情ものの方が個人的には好き。肩肘張らずに読めて、しかも何度読み返しても面白い。『孤独のグルメ』なんかが特にそう。

最近ハマっているのは『江戸前の旬』という、お寿司漫画だ。

いくつかシリーズがあって、物語の舞台となる「柳寿司」の大将(主人公である旬の父親)の若い頃を描いた『寿司魂』なんかがその一つだ。

というか『寿司魂』の方が面白い。作品の発表順は『江戸前』の方が先だが(多分)、『寿司魂』は作品全体に勢いがあってスイスイ読める。戦後の日本が舞台で、昭和の大事件や「こんなことがあった」というネタを挟み込んできて勉強にもなる。むしろそっちがメインで、お寿司は申し訳程度にしか出てこないなんていうこともザラだ。

『江戸前』の方は、いきなりバトル展開になったりする。旬が四方八方に噛み付くからだ。中には嫌なお客さんもいて、喧嘩になったりもする。こんなお店あるのかな……。

それにしても、お客さんが美味しそうに食べる。「こんなになるっけ?」っていうようなオーバーリアクションも多いが、読んでいると食べたくなるのだから正解だろう。

お店には、やっぱり良いお客さんや、どこか影のあるお客さんも来る。みんな最終的には泣きながらお寿司を食べている。お決まりパターンだけど、それで良いじゃないか。そんな謎の説得力がある。

読み始めてから、お寿司を食べることが増えた。スーパーのパック寿司だけど、美味しい。

人間、悲しくても腹は減るっていうのは、誰の言葉だったか。

いいなと思ったら応援しよう!