邦楽『羊の群れは丘を登る』(ストレイテナー) 「そのまま」を続けることの凄さ
時が経って変わるものがあれば、変わらないものもある。
どちらがえらいということではなく、変わり続ける凄さもあれば、変わらないことの凄さもある。
邦楽バンド・ストレイテナーの『羊の群れは丘を登る』は、その「変わらないことの凄さ」を感じる楽曲だ。
僕は彼らの熱狂的なファンというわけではないが、割とデビュー当初から断続的に聴き続けてきた。気だるいボーカルや初期衝動的なサウンド、ノスタルジックなメロディの組み合わせが素敵なのだが、一際グッときたのが歌詞の世界観(の独特さ)である。
そこで描かれる歌詞はまるで、知らない人が見ている夢をスクリーンで観ているかのようだ。連続性がなく、核心には迫らず、ぼんやりとした言葉選びをしていて、少し奇妙な雰囲気さえ漂う。だが置いてけぼりにもされず、妙に惹かれるのである。
当初からそんな感じだったのだが、デビューからちょっと経って出したこの『羊の群れは丘を登る』もまさにそんな具合である。これには驚いた。変わらないどころか、「変わらなさ」に磨きがかかっている。
もちろん楽曲自体も素晴らしい。切なくも激しいサウンドと馴染みやすいメロディに、何かを決意するような歌詞。彼らの王道といえばそうなのだが、やはり良い。
その胸に抱えるのは希望なのか、悲しみなのか。聴き手に解釈を委ねるようなこの姿勢は、とてもカッコいい。
世界には多くの人がいて、みんな平気そうに見えても、それぞれが本人にしか知り得ない痛みや悲しみを持っているはずだ。そんなことを感じさせてくれる楽曲なのである。
また時が経ってこの曲を聴いたとき、どんな感想を抱くだろうか。僕は変わっているか、変わらないでいるか。