ビール一缶(300円)の飲酒によって失われる健康の価値を試算する(3)

1回飲酒当たりのQALYの損失値(0.001QALY)と仮定すると、損失額は約1000円でした。これは本当なのでしょうか。

そこで、仮定の信頼性を検証するために、QALYの損失値(0.001QALY)が適切かどうかを検証するために、飲酒に関連する健康リスクや、健康状態の変化によるQALYの影響を考慮して、妥当性をチェックします。真の値が一桁多いか少ないかのレベルでの検証を行います。

ステップ1: 文献やデータに基づくQALYの参考値

まず、飲酒が健康に与える影響に関するデータを調査し、QALYに与える影響の参考値を見つけます。例えば、以下のようなデータを考慮します。

  1. 飲酒と関連するQALYの損失データ:

    • 飲酒習慣がある人が重度の肝疾患を発症するリスク増加。

    • 中等度から重度の肝疾患が1年あたりに失うQALYの範囲: 0.1QALY~0.3QALY。

    • これに基づいて、日常的な飲酒による年間のQALY損失が0.01QALY〜0.03QALY程度と仮定される場合もあります。

  2. 1回の飲酒が与える影響:

    • 1年における平均飲酒回数(例えば週2回飲酒する場合、年間約100回)。

    • 年間のQALY損失が0.01QALYと仮定すると、1回の飲酒によるQALY損失は以下のように算出されます。

ステップ2: 妥当性の評価

  • 0.001QALYが仮定の値: 最初に仮定した0.001QALYは、飲酒1回あたりのQALY損失が0.0001QALYと比べて、約10倍の大きさです。したがって、0.001QALYという仮定値はやや高めの推定であり、真の値がもう一桁少ない可能性があることが示唆されます。

  • 仮に真の値が10倍少ない場合:

    • 真の値が0.0001QALYであると仮定すると、ビール1缶あたりの健康価値の損失は次のように計算されます。

ステップ3: 結論

  • 仮定した0.001QALYは現実的なリスクを大まかに表しているかもしれませんが、実際にはその10分の1(0.0001QALY)程度である可能性が高いです。

  • この場合、1缶あたりの健康価値の損失は、割引現在価値を考慮しても約100円前後に収まり、最初に試算した925円よりもかなり低い値になります。

この分析から、最初に仮定した値が現実的な範囲内に収まっているものの、やや過大に見積もられている可能性が高いことが分かります。真の値は1桁少ないレベルで妥当性があると判断できます。

(4)に続く

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