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【破壊神】 統失2級男が書いた超ショート小説

朝のテレビの占いでは双子座の運勢は最悪だった。(何が占いだ、下らない)運勢が悪いと占われると、宮田奈穂は俄然と気力が湧いて来る人間だった。占いのラッキーカラーとは違う色のハンカチをポケットに詰め込み、一人暮らしのマンションを後にする。菜穂が恵比寿駅で電車を降りて職場まで歩いていると、頭上から建築資材の鉄パイプが落ちて来て頭に直撃してしまった。奈穂は即死だった。

奈穂が幽霊になって3年の年月が過ぎ去っていた。この3年間、奈穂は孤独だった。生きている人間たちから存在を認識されないだけでなく、奈穂自身が他の幽霊を発見する事もなかった。死んだ直後は常に恋人の和也の側に居たが、和也が新しい恋人を作ると、一緒に居るのが辛くなって和也の元を離れた。その後は千葉の実家に帰り家族に囲まれながら暮らしていた。とは言っても家族の誰も奈穂の存在には気付けず、奈穂は孤独のままだった。(私はずっと誰にも気付かれない幽霊のままなのだろうか?)奈穂は不安の中にあった。「輪廻転生とか天国とかは、嘘だったのかよ!!」奈穂は家族が夕食を囲んでいる居間で叫んでみたが、勿論、返って来る言葉は無かった。家族とのそんな暮らしを続けていると、より孤独を感じる様になったので、奈穂は実家を離れる事にした。東京に戻った奈穂はあらゆる宗教施設を訪ねてみた。(もしかすると私の存在を認識してくれる人間が、存在するかも知れない)しかし、どの宗教施設にも、そんな人間は居なかった。全国的に有名な宗教指導者の前で、その宗教指導者が好きなミュージシャンの歌を歌ってみた事もあったが、その宗教指導者が気付く事はなかった。また関東中の墓地にも出掛けてみたが、奈穂の様な幽霊は1柱も居なかった。

西暦2284年、機械たちが人間たちを絶滅させ、その後、機械たちも自らの意志で解体され滅んでいった。それから気の遠くなる程の年月が過ぎ去った頃、地球は猫人に支配されていた。猫から進化し顔は猫で体は人間風の生き物、それが猫人だった。猫人とは奈穂が勝手に付けた名前だ。奈穂は猫人の群れの中で暮らしている内に、猫人の言葉を覚える様になっていた。ある日、奈穂が猫人の集落で猫人の言葉を使い自作の歌を歌っていると、1人の猫人が同じメロディーを口遊み出した。奈穂は驚いたが、暫くして気を取り直し、そして、戸惑いがちにその猫人に猫人語で話し掛けてみる。「君には私の声が聞こえるの?」その猫人は混乱した様子で周りを見渡していたが、少し経つと落ち着いたようで「はい、僕にはあなたの声が聞こえます、あなたは悪魔ですか?神様ですか?」と逆に尋ねて来た。奈穂の姿は見えないが、声は聞こえるようだ。奈穂は少し考えた後に悪ふざけで「私は奈穂という名の神です」と答えた。

奈穂の声を聞いたのは、ギャという24歳の雄の猫人だった。気の遠くなる程の時間を
1人で過ごして来た奈穂に取って、ギャは貴重なオモチャだった。奈穂は神を騙りギャに命令を出し宗教を作らせて、戦争を起こさせ続けていた。ギャは多くの猫人を殺した後に74歳でこの世を去った。奈穂の声が聞こえる猫人は、その後も数百年毎に出現して来た。その度に奈穂は神の名を騙り、その猫人たちに宗教を作らせては、戦争ばかり起こさせていた。数千年後、奈穂の声を聞く猫人に世界的な科学者カニョが居た。奈穂はカニョに「地球よりも快適な天国を作りましたので、地球を爆破しなさい。あなた方をその天国に移住させてあげます」と命令を出した。カニョは奈穂の声を信じ地球を爆破した。

地球を失った奈穂は、光速を超える速度で宇宙の旅を続け、行く先々の文明の星で神の名を騙り、その星々の科学者たちに時には直接命令を下し、時には宗教指導者を介して命令を下して、その星々を爆破させていた。奈穂のこの遊びは永遠に繰り返される事となりました。

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