2の付くお金
「2000円札を使う会」の会長を務めていたことがある。会員は会長である私1人という小規模の会だ。会の設立目的は、できるだけ2千円紙幣を沢山使うこと。そのために当時は両替機で2千円紙幣を引き出すことのできたみずほ銀行で、ほかの紙幣をせっせと両替していた。物珍しい様子で私の2000円札を見て「1枚替えてくれない?」と言う友人の頼みにも快く応じ、世間での2000円札流通に微力ながら貢献できたと自負している。
2千円紙幣が発行されたのは2000年のこと。千年紀年を記念して発行されたのだった。小渕首相(当時)はもっぱらこの紙幣の発案者として知られる。「2000円札を使う会」元会長として、彼の功績を大きく称えたい。
さて、大変残念なことに、この紙幣を見かける機会はほとんど消滅してしまった。お店で使われることはほとんど無いようであるし、銀行でも保有量はわずかのようだ。実際に今年の春、とある銀行で2千円紙幣への両替をお願いしたところ、対応してくれた方の最初の一言はこうであった。
2000円札ですか‥‥‥。ただいま在庫を確認してまいります。
まるで家電量販店の店員のような物言いである。しばらくして戻ってきた彼は、申し訳なさそうにこう言った。
新札は在庫がまったくありません。新札でなければ多少はご用意できそうです。
私の方は単に、久しぶりで2000円札を見たくなったというだけなので、新札でなくともまったく構わないと伝えて無事に入手できた。肖像の代わりに守礼門が描かれたこの紙幣はやはり、ほかとは違う雰囲気を醸し出している。個人的にはこの色合いも好きで、普及しなかったのが残念だ。
使い勝手という面ではあまり評判が芳しくなかったものの、よく言われる話ではあるが、諸外国では2の付くお金は珍しくない。米20ドル紙幣や20ユーロ紙幣がすぐに思い浮かぶ。明治時代の日本でも2銭銅貨、20銭銀貨、2円金貨が発行されていた。お金ではないが、郵便では2円切手が長く使われている。2000円札がどうして受け入れられなかったのか、考えてみると不思議だ。
2024年から新しいデザインの紙幣が発行されるが、当然のように2000円札は含まれていない。今後もたぶん2000円札がデザインを一新して登場することはないだろう。もっともキャッシュレスを推進する世の風潮の中で紙幣を刷新するということ事態も不思議なことではある。