おうちでスパルタ旅行――『Assasin's Creed Odyssey』という傑作について
『アサシンクリード オデッセイ』のプラチナトロフィーを取得した。
(ゲームに最初から課せられているすべてのトロフィー=達成目標を取得した証。DLC未プレイの状態で、113時間かかった)
結論から言うと傑作だった。
理由はいくつかある。というか、そもそもどういうゲームなのかも簡単に説明する。
ちょうどいまは、みんないきなり家の中に閉じ籠らざるを得なくなって、有史以来もっともテレビゲームをやる人が増えたといってもいいのではないかという状況なので、「もしや100時間溶かせるコンテンツの話を聞いてもらえるのでは?」と、筆者が勝手に思っているのもある。
というわけで、向かうは、
ディス・イズ・スパルタァァァ!
1.アサクリオデッセイとはどんなゲームか。
ジャンルとしては、オープンワールド・アクションRPG。主人公はアサシンとなり、時代の節目に現れる横暴な君主を暗殺したり、その移動中に街中や洞窟で華麗にパルクールしたりするゲームである。
柱は歴史観光で、今作の舞台はギリシャ。
神話に片足突っ込んだ設定で、シリーズでも最もファンタジックなお話になっているが、脇役たちは史実に沿っている。ソクラテスの裁判に介入して彼を助けたり、ヒポクラテスを手伝うふりをして患者に毒を混ぜたりできる。(史実に沿っている?)
今作にはなんと、プラトンの『饗宴』がそのまんまイベントとして出てくる。岩波文庫を人生で一冊も読んだことがない人でも、これで友達に知ったかぶりができるぞ。
(『歴史』でお馴染みのヘロドトスさん。「本物のメデューサ見てきたよ」と耳打ちして、彼の価値観を根底から揺さぶってみよう!)
というのは、あくまで今までのアサクリの流れを踏まえた上での紹介である。これだけでも面白そうだなと思ったら遊んでいただきたい。ここから先は、アサクリを遊んだことがある人に読んでもらいたい点である。
マンネリからは脱却したと、声を大にして伝えたいのだ。
2.シリーズタイトルとしての蓄積と、野心的革命
アサクリファンなら一度は聞いたことがあるだろう。というか、体験しただろう。「煙幕ゲー/カウンターゲー」だと。
たしかに今までのシリーズは、ちょっと小さくまとまっている感じがした。用意されている舞台は広く、豪華なのに、ゲーム部分はマンネリ化していた。戦闘は単調で、クエストは繰り返しだなーと思う点が多かった。
短いスパンで新作が出まくっていたのもあり、マイナーチェンジしたところ以外は流用に見えていた部分も多かった。
だが、オデッセイは違う。
いままでのアサクリで作られてきた要素から、面白かったものをちゃんと抽出し、そこに新鮮さを加えている。
まず、戦闘が面白い。
パリィを主体とした、重厚でソウルライクな戦闘システムは、オリジンズで刷新された要素だが、それがブラッシュアップされていた。敵との間合いを図り、有効な戦術を取らないとタコ殴りにされる。雑魚戦でも、一定の緊張感は保たれている。
そもそも成長システムからして、弓主体のハンター/近接戦主体のウォリアー/暗殺主体のアサシンの三つのスキルツリーから選べる。気分やビルドを変えたくなったら。手軽にチェンジできる。
(町の近くで殺人を犯せば、悪名(※画面右下のゲージ)を聞きつけた傭兵がしこたまやってくる。クエストの最中に中ボスクラスが絡んできて、もはや小さな戦争なのではという事態になることも、ざらにある)
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そして、海戦もアツい。
基本的には、アメリカ編と呼ばれる3、4、ローグにあったシステムと同じだ。衝突や矢弾が主な攻撃手段である。
だが、今回から敵の船のどてっ腹に衝突すると、そのまま船を切断できるようになった。
どういうことなのか説明すると、敵の船のどてっ腹に衝突すると、そのまま船を切断できるようになったのである。
……きっと船首に備え付けている女神像のご加護だろう。上手く決まると、結構気持ちいい。
(時速にしていくら必要なのかはわからないが、この時のダメージは148万らしい)
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そして忘れてはいけないのが、ハクスラ要素である。
短剣やヘビーブレード、槍に大槌といった多種多様な武器に、着せ替えとしても楽しい鎧や兜それぞれにレア度とアビリティが付いている。一度でも見つけたアビリティは、防具屋で付け替えが可能だ。
武器や防具は、まず雑魚がバンバン落とすし、宝箱からもジャンジャン出るし、報酬としてもドンドン貰える。エピックレア確定のルートボックスもある。
この規模のオープンワールドゲームで、最初から最後まで徹頭徹尾ハクスラし続けることができる作品は他に類を見ないだろう。このあたりは本当に豪華だと思う。
(レジェンダリー装備は5つセットで着けることで追加のアビリティがある。「毒蛇の頭巾」は歴代アサシンっぽい見た目になれるぞ)
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「アサシンクリード」シリーズはほぼすべてのタイトルを遊んできたが、こんなに前のめりになって楽しめたのは「アサシンクリード3」以来かもしれない。
パルクールはより洗練され、暗殺はよりスムーズ且つ気持ちよく、ストーリーもメイン・サブともに冴えている。マップも、それを支えるコンテンツの量も膨大である。
選択したドラマを受け入れていくという点は『ウィッチャー3』を想起したし、弓術と近接戦闘によって神話的生物を倒していくイベントは『ホライズン・ゼロ・ドーン』のようなプレイフィールを覚え、とても贅沢な体験だった。
たしかに、ソロプレイ限定で、とにかく目標が多く、メカニクス上の驚きはそこまでではない。だが、すべてが高水準でまとまっており、気付いたらこんなに遊んでしまっていた。
ぜひ、今だからこそ『アサシンクリード オデッセイ』を遊んでみてほしい。美しき地中海が君を待っている。泳いでるのは人食いザメだけだけどね!
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