レコーディング日記㉙ミュージシャンは常に本気!印象と実際のギャップを知る
6月も中旬になりました。
東京では今年初の真夏日となり、季節感のズレを毎年更新している気がします。
今回は久しぶりにこちらのマガジンの記事となります。
ここ最近はMONOLITHイベントの記事になっていました。
今回は、印象と実際の違いについての回顧録です。
駅前でライブ勧誘
上京して専門学校に通い始め、バンド活動をする友人も増え、都内のライブハウスへ行く様になりました。
スタジオに就職してからも、ライブを観に行く事は多々あり、
様々なライブハウスへ行きました。
いざ行ってみると、ハウス内の状況は様々です。
チケットが完売となり、客席がパンパンになっている日もあれば、
床に座って見られるくらいの客入りの日もあります。
もちろんバンドも友人を誘ったり、HPやブログで発信して集客をしていますが、集客するという事は中々に大変です。
特にライブ当日にもなると、余っているチケットを見てため息も出てきます。
そんな時に良く出るので「駅前でナンパしてでもチケット配ろう」という言葉です。
駅前で「お姉さん、今日の夜ヒマ?僕らライブするから見に来てよ」「お兄さん、今日ウチらライブやるんだ!見に来てー!」と、リハーサルが終わった夕方前くらいから声を掛けにいくのです。
私が音楽を始めた頃に言われていた「バンドをやっているヤツはチャラい」という印象は、こういう姿を見た時に生まれたのかもしれません。
今はバンド=チャラいという印象はないかと思いますが、押しが強い時はあるかもしれません。
チケットノルマとは
ここで知っておいて頂きたい言葉があります。
それは「チケットノルマ」です。
ライブハウスで演奏するには、当然ライブハウス使用料が必要です。
ライブハウスを借りて、オーガナイザーが取り仕切る場合と、ライブハウス自体が主催する場合がありますが、ライブハウス側は売上を上げる必要があります。
そこでライブに出演するに当たり、ライブハウス側は決まった金額分のチケットをバンド、もしくはオーガナイザーにまとめて販売します。
購入したメンバーが手分けして、このチケットをまず売るのです。
最初に買い取った分を超えるチケットについては、ライブハウス側から追加購入が可能で、追加分からはキャッシュバックが発生する場合が多いです。
ライブハウスによって細かい点は変わりますが、ざっくりとした計算は下記です。
会場費÷出演バンド=チケットノルマ
例えば「会場費20万円÷出演が4バンド=50,000円/バンド」となります。
この時チケット1枚が2,500円だとすると「50,000円÷2500円/枚=20枚」です。
つまりこの50,000円=チケット20枚が、1バンド当たりのチケットノルマとなります。
もしバンド編成が4人だったとすると、バンドメンバーはそれぞれ、5枚のチケットを売ってプラマイがゼロになります。
もちろんノルマなので、チケットが売り切れず余ったとしても、
ライブハウスから返金される事はありません。
バンドでマイナス分を負担するのです。
「余ったチケットを見てため息が出る」のは、単純にお客さんがいない事だけでなく、自分達の生活費や活動費が減るからでもあるのです。
大事な経済感覚
もしお金に余裕があれば、「まぁいいか」で済ませる事もできるかもしれません。
しかし多くのバンドマンは、アルバイトで稼ぎながら練習スタジオ代、楽器代、移動費などを捻出しています。
10,000円が1か月分の食費というメンバーもいます。
とても「まぁいいか」とはいかないのです。
そこで「どうせ紙屑になるのなら、1,000円でも500円でも、最後は無料でも良いから配ろう!そして自分達の曲を、バンドを知ってもらおう!」となります。
駅前という人通りの多い場所で、音楽に興味がありそうな人や、この後の予定が決まってなさそうな人に声をかけて、自分達の20分というステージをmにてもらう。もしかしたら、次のライブに来てくれるかもしれない。
そう、ここでチケットノルマを損失ではなく、宣伝費に変えるのです。
これこそがバンドマンの逞しさと言えます。
印象と実際にギャップがある事を知る
こうした事情を知っていると、駅前で声を掛けているバンドマンを見かける度に心から尊敬と応援をします。
しかし、バンド側も「お願いします!ライブに来てください!」などどお願いをする訳にはいきません。
自分達を安売りしてしまいますし、それで来てくれた方がリピートするかと言えば難しいと思います。
あくまでお客さんが興味を持ち、自らライブハウスに足を運ぶ事が大事なのです。
そこもバンドマンは解っています。
だからこそ少し軽い感じで「良かったら来てね」「興味あったら来てね」と伝えます。
その上辺を見て、チャラいというのは本質が見えていないと思うのです。
見た目の印象で決めつける事なく、実際の想いや何故そうするのかを知る事が大切です。
まとめ
こうした事は、バンドマンに限らずあらゆる事に共通すると思います。
だからこそ、決めつける事なく、事実を見つめ察する力を磨く必要があると思います。
もし駅前でバンドマンが声掛けをしていて、チケットを配っている事があれば、ほんの少し、時間に余裕があれば、その20分を彼らと過ごしてみて下さい。
新しい世界が広がるきっかけになるかもしれません。
ではでは☆