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おもしろい研究、研究交流が見たくて

今、大学内の、そして大学を越えてつながる研究を活性化するセンターを立ち上げています。このセンターは、研究を、そして研究が見せてくれる世界、切り開いてくれる未来をよりおもしろく、味わい深いものにすることをミッションとして掲げます。

「おもしろい」とか「味わい深い」などというと、なにかフワッとしていて、ゆるく、まじめではない感じがするかもしれません。でも、実はこれ、考えに考えた末に覚悟をもってコミットすることに決めた、大真面目のミッションです。

「研究」というと、夢や好きなこと四六時中考える幸せな活動のように思われるかもしれませんが、実際のところ、厳しい競争の中で短期で成果を上げることが求められ、論文数など数値化できる指標だけで評価されるような環境です。そうした中では、研究者たちも、与えられたハードルを越えるため、競争に勝つため、結果を出すことばかりを追いかけなくてはいけないと思うようになっています。

そんな今、研究の活性化というと、論文の数を増やしたり、獲得する研究助成金の数を増やしたりするために研究者にプレッシャーをかけたり、インセンティブを与えたりするという活動が目立ちます。しかし、そうした直接的な「支援」「活性化」はこれまでさんざんやられてきて、皆疲れています。畑で言ったら、化学肥料や成長剤漬けにされて、もうしぼっても出涸らししか出てこない、そんな感じに近いかもしれません。でも、それでも、「研究支援」というと、より強力な化学肥料を、とお金や機会をエサやムチにした従来通りの方策ばかりが続いているように思えます。

研究者としても、そういう「支援」には辟易としていたので、それを繰り返すことはしたくありませんでした。エサやムチを組み合わせた力ずくのやり方は支援策として有効でないだけでなく、どこか研究者たちをモノ扱いしているような気もして嫌でした。

そこで、私たちは、いい研究、いいものを生み出す研究がどうやって生み出されるのか、について原点に立ち返って考えてみました。そこで改めて気づいたのは、「いい研究」、「すごい研究」を定型的に定義することはできず、その価値は後付けでしか測れないということです。とすると、「いい研究」を育てるためは、研究がのびのび育って広がる環境を作って育むことに力を入れるしかないのです。

成果が速いペースで求められる今の社会では、そうした根本的な環境整備に力を入れるのがとても難しくなっています。いい研究、おもしろい研究よりも、論文になる研究、研究助成が取れる研究をさせることに力が入ってしまいやすいのです。ここが、私たちの挑戦です。目先の論文数や助成金獲得数を伸ばすことをめざすのではなく、中長期的に、研究の活力、体力を作り出したい。大した挑戦でないように聞こえるかもしれませんが、これに本気で取り組むには、今の世の中で当たり前だと考えられていることに乗らないという困難とリスクを背負う覚悟が必要です。

それでも、私たちはやりたいのです。

研究が好きだし、探究が開く世界がおもしろいし、心からの好奇心で探究を深めている人と話すのが好きだし。だから。

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