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現場を見ていない政策が迷走するわけ

今話題の防衛費増額政策について、防衛省の元高官が語っていることには気付かされることがたくさんありました。

今回の防衛費増額政策は、日本の防衛力が量的にも質的にも不十分であるという課題に対して政府が打った対策なわけですが、防衛費に限らずこうした政府の肝入りで大きな予算を投じるという課題対応の仕方が迷走しがちな理由がよくわかります。こうした迷走はあらゆる方面で同じことが起きていますが、「現場」をよく見て、現象や問題を現場の中で考えることの重要さを見せてくれます。

この迷走の核にあるのは、政策を作っている人たちが問題を大きな構造で捉えられておらず、結局短期的なお金の大量投入という形の解決法しか考えていない点です。

システムを増強するということは単に物品を買えばいいというものではなく、新しい物品や仕組みが効果的に活用され、動くように徐々に再調整をしながら進化させていかなくてはなりません。

それなのに、急激な予算拡大だけが先行し、そうすると、十分な準備ができないまま巨額の調達だけが進む。短期的に資金だけで解決できるのはものの調達しかないですから。

今の選択と集中、即効性を求めた短期決戦の繰り返しの中では、中長期的な人材育成やリソース基盤やシステムの増強がしにくいです。

課題というのは、目の前に見えている問題よりも常に大きく、複雑な因果関係のネットワークと歴史的に形作られてきた物理的・社会的環境に埋め込まれているシステムを構成しているもの。したがって、課題解決は目の前に見えている問題をピンポイントで解決できるような単純なタスクではなく、複雑で大きなシステムに多方面から働きかけて徐々に変えていくプロセスになります。

効果的な対策・課題解決には、その策が展開される環境や文脈を十分理解した上で、それらとどう相互作用するかを考え、展開する必要があるわけですが、そうした課題の本質、課題の現場を知らず、理解せず、現場を知っている人たちの声も聞かなければ、同じ過ちは永遠に繰り返されることになります。

日本の経済力もそのような高価な過ちをあちこちで繰り返していけるほど強くもなく、将来への借金だけが積み上がっていく。その過ちの構図をどうやって変えられるのか…

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