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大学にとっての越境とそれがもたらす進化

自分のホームグラウンドからアウェイの場所、環境に出てみる「越境」が組織や個人の成長や進化にもたらす効果が注目されていますが、同じことが大学にも言えます。

今日は、大学にとっての「越境」とその効果について考えてみたいと思います。従来、特に人文社会系の大学では、研究教育活動が大学の中、自分たちの専門領域の中に留まる傾向が大変強くありました。

激しく変化する現代社会の中で、大学もその波を大きく揺らされています。一方で、今まで大学のシステムを支えてきた進学者数が減り、経済成長が鈍化する中で政府からの大学支援が減り、他方で、社会問題や環境問題などが複雑化する中で大学に対する社会課題解決貢献への期待・要請などもあり、今、大学は従来の枠組みを越えた活動の仕方、新たな役割を作り出していかなくてはなりません。そのためには、大学がアカデミアの境界をこえて、より広い社会の中で活動を展開することで、教育研究活動を進化させ、社会的役割を拡大していくことが必要だと思っています。

そのような文脈において今の大学に必要な越境は以下の3つ:

  • 学問分野間の壁を取り払う学際的コミュニケーションの創出

  • 産学官民の垣根を越えた関心の重ね合わせと共創の場の構築

  • 地域社会やグローバル社会との活動の重ね合わせ

このような越境を通して、大学での教育研究活動が以下のように進化して欲しいところ:

教育の進化

  • 実社会の課題に直接触れる機会を通じた実践的学習の充実

  • 産業界や地域社会の専門家との協働による、社会活動の現場での問題意識に共鳴した研究・教育活動の強化

研究の進化

  • 社会のニーズや課題により直接的に相互作用する研究活動の広がり:一方で社会課題解決により直接的に貢献する研究が活発化、他方で専門研究に新たな問題が持ち込まれることによる学術研究の進化

  • 異分野融合による新たな研究領域の開拓

  • 研究成果の社会実装を前提とした応用研究の促進

これらの進化により、大学の教育研究活動はより社会的意義の高いものとなり、社会に直接的なインパクトを与えることが可能になります。

境界を越えた活動展開により、大学の社会的役割は以下のように拡大することが期待されます:

「価値の翻訳者」としての役割

  • 学術知識と社会ニーズのマッチング

  • 異なる分野や領域間の知見を統合した新たな解決策の提示

  • 基礎研究と応用研究の橋渡し

イノベーション・ハブとしての機能

  • 産学官連携による新技術・新サービスの創出

  • 地域社会の課題解決に向けた実践的プロジェクトの推進

  • グローバルな課題に対する国際的な協働研究の場の提供

社会変革の触媒としての存在

  • 未来社会のビジョン提示と実現に向けた取り組み

  • 社会システムの革新に向けた実験的プロジェクトの実施

  • 次世代のイノベーターや社会起業家の育成

これらの役割を果たすことで、大学を、変革期の社会をより良い未来に導くための知の生産、人材の育成を担う中核的存在へと進化することができます。

大学は、社会との境界を越えてビジョンやミッションを拡大し、教育研究活動を広く展開することで、大学自身の進化だけでなく、社会全体の発展にも大きく寄与することができます。この新たな方向性を切り開いていくためにも、大学は、従来の枠組み、活動ドメインを越境し、社会との共創に取り組む中で得られる新しい経験や視点を基盤に自らを変革していく、その覚悟を持ちたいところです。

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