📕「アンの青春」朗読会とヒンメリワークショップ

昨日はイースター（復活祭）でした。
基本的にイースター春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるため、年によって日付が変わる移動祝日なんです。毎年日付は変わるものの、必ず日曜日です。
一方、クリスマスは12月25日と決まっているので、毎年曜日が変わります。

前日の土曜日に馬車道にあるLocal book store
Kita で「赤毛のアン」シリーズ第二作「アンの青春」の朗読会とヒンメリワークショップを開催しました。

『アンの青春』

「赤毛のアン」は原題は　Anne of Green Gables  
「緑色の切妻屋根の家のアン 」というものでした。

孤児のアンがマシューとマリラという初老の兄妹に引き取られ、
友達を作り、人生の喜びを感じ、成長する物語で、
マシューの死を乗り越え、奨学金で進学できる栄誉を諦めながら、
好敵手ギルバードの友情により、
地元の学校の先生となり、
マリラと愛するグリーンゲイブルスを守っていくところで終わっています。

「アンの青春」はその続編で、
16歳から18歳のアンが描かれています。
原題は　Anne of Avonlea  
小さな家に住むアンはアヴォンリーという小さな村のアンになっていきます。
この村の学校で若き教師となったアンは、
ほとんど年の違わない生徒から、小さな子供まで教えます。

子供たちに良い影響を与えるためには、
どんなやり方としたら良いか悩みながらも、
子供たちから慕われる熱心な先生になります。
と、同時に村をよくしようと景観美化の運動にも力を入れていきます。

一方、アンに手のかからなくなったマリラは、
なんと親を失くした双子のデイヴィーとドーラを育てることになります。
アンは視力の落ちたマリラを助け、家事もこなします。


アンはデイヴィーとドーラのほかに
教え子のポール・アーヴィングとアンソニー・パイと心を通じていきます。
この子たちは皆、親がいなくて、愛情に飢えています。
アンは自分の幼いころに感じた寂しい思いと、
この子供たちの中にみるのでしょうか。
誰かに愛されたいという強烈な思いをもつ子供に
惜しみない愛情を注ぎます。

親友ダイアナの婚約、
新しい年上の友人ミス・ラヴェンダーのロマンスに心は
ときめきますが、自身はまだ恋心を感じるまでには至りません。

夫婦仲のよくない隣人のハリソン氏、
若き日の恋に敗れて以来孤独に暮らす
美しいオールドミスのミス・ラヴェンダー。
夫を天国に送ったリンド夫人、
我が子をなくして深い悲しみを知ったアラン牧師夫人。
小さなアヴォンリーという村にもさまざまな人生が繰り広げられるのです。
アンはこの平和な世界を心から愛しながらも、
人生の次なる目標を忘れることはありませんでした。
それは文学への熱い思いでした。

カナダ本土の名門大学へ進学できるようにと、
教師しながら、ラテン語や文学の学びを続け、
その努力が実り、進学は現実となります。
　そして、アンは次のステージへと上がっていき、
「アンの愛情」（Anne of the Island)
へと続きます。
ざっとこのくらいでかつみさんにバトンタッチです、

ではここから本編です

第三章　　ハリソン氏の家へ　　　

あらすじ
前日に怒鳴り込んできたハリソンさんの畑で、またしてもアンの家のジャージー牛が大切な麦の穂を食べているところに出くわしました。
　やっとのことで牛を小道に連れ出した時、偶然その場にいたシアラー親子に、アンはに牛を売り払ってしまいました。でわかったのですが、そのジャージー牛はなんとハリソンさんの牛だったのです。アンはもう消えてしまいたいような重たい気持ちなりましたが、勇気を出してハリソンさんの家に行き、何が起きたのかを正直に話し謝りました。ハリソンさんは驚きながらも、「お嬢さん、もう何もおっしゃらずに。取るに足らんことだ。思いがけない事故は起きるものと言うじゃないか」と言ってすっかり許してくれたのです。その上、牛の代金２０ドルは受け取らず、代わりに、以前から売りに出そうと思っていたアンの牛を引き取ってくれたのです

アンが出て行くと、ハリソン氏が窓から見送った。しなやかな娘らしい姿が、夕映えに照らされてた牧場を 心も軽ろくはねるように歩いていく。
「わしは無愛想で、人嫌いの、気難しい爺さんだが」
ハリソン氏は声に出して言った。
「あの娘といると気が若返るな・・・それになんとも愉快だ、これからも、たまにはこんな気分になりたいものだ」
アンは弾む足取りで走って帰り、この思いがけないを、マリラに話して聞かせた。マリラはアンがなかなか帰ってこないのを案じて、探しに出るところだった。
「つまるところ、世の中って素晴らしいわ」アンは幸せそうに話を結んだ。
「この前、リンドのおばさんは、世の中なんてろくでもないってこぼしていたの。いいことがあると思って期待してると、多かれ少なかれ失望するものだ・・・期待通りにはいかないよって。それはそうかもしれないけど、世の中にはいいこともあるわ。上手くいかないだろうと予測しても、必ずしも悪くならないでしょう。・・・物事はたいてい、思っていたよりもずっと上手くいくのよ。今夜だってハリソンさんの家へ行く前は、どんなにいやな目にあうか心配したけど、ハリソンさんはとても親切で、楽しかったくらい。私たち大いに譲り合えば、本当にいい友達になれそうよ。それに結局は、何もかも、一番いい結果におさまったのよ。でもね、マリラ、これから牛を売る時は、まず飼い主を確かめるわ。」

＜45ページ17行目〜47ページ3行目＞

「感想」　
日本のことわざに「案ずるより産むがやすし」という言葉がありますが
人は困難や不安に直面した時、判っていてもなかなか勇気が出せずに躊躇してしまうことがあります。そんな時にはアンが勇気を持って目の前の問題に向き合った姿を思い出したいです。もし仮に、結果が思ったようにいかなかったとしても、目の前の困難に向き合い努力し、行動したことは、心を晴れやかにしてくれますね。そして、何よりアンの正直で 誠実な心がハリソンさんの心を開き、良き未来も開いたのですね

第七章　義務を語る　

大学という言葉が出たので、ギルバートは新しい話題に移った。しばらくの間、二人は、将来の計画と夢を語り合った・・・真剣に熱心に、希望いっぱいに。
　ギルバートは医者になろうと、ついに決意を固めたところだった。
「素晴らしい仕事だよ」ギルバートは夢中で語った。「人は、生涯を通じて闘わなければならないんだ・・・人は闘う動物だって、誰か言わなかったかい？・・・僕は、病気と苦しみと無知を相手に闘いたい・・・この三つは
つながりあった同じ仲間だからね。僕は世のなかの誠実と意義のある仕事に加わって、自分の役割を果たしたいんだよ・・・人類が始まって以来、偉人たちが積み上げてきた人間の英知に少しでも貢献したいんだ。僕より前に生きた人たちがこれほど多くのことを成し遂げてくれた、その感謝の気持ちを、後世の人たちのために尽くすことで表したいのさ。そしてこそ人は、人類に対する義務を全うできると思うんだ」
「私は人生に美しいものを加えたいわ」アンは夢見るように言った。「人に知識を与えることには、さほど興味はないの・・・もちろんそれは何よりも気高い目的よ・・・だけど私は、私がいることで、より楽しい時を過ごしてもらえたら嬉しいの・・・私が生まれてなかったら、決して味わえなかったさりげない喜びや幸せを、人に感じてほしいの」
「君はその願いを、日々果たしているよ」ギルバートはの面持ちで言った。
彼の言う通りだった。アンは生れながらに光の子の一人だった。きらめく光る陽ざしのように、アンが笑いかけ、言葉をかけて通り過ぎるだけで、少くなくとも その一瞬だけでも、人は自分の人生が希望に満ち、愉快で、評判が良いものに思えるのだ。
　ようやくギルバートは名残惜しそうに立ち上がった。

＜89ページ1行目〜90ページ6行目＞

「感想」
アンが言葉をかけて通り過ぎるだけで皆が幸せな気持ちになれるなんて
本当に生まれながらの光の子ですね。アンのようにはなかなか成れないかもしれませんが、でも私たちも今日出会った人、目の前の大切な人に微笑みかけることができたら。笑顔で温かな言葉をかけることができたら、
その時、その一瞬は光の子になっているかもしれません

第十五章　夏休み、始まる　

《あらすじ》
教師としての最初の一年が終わったアンは夏休みとなる校舎に鍵をかけた
マシューの墓参りに行くために丘のふもとまで下りて行きました。その途中に生徒のポール・アーヴィングがアンを待っていました。ポールは三年前に母を亡くし、父とも離れて暮らし、今は祖母の家から学校へ通っています。ポールは小さな胸に誰にも理解されない寂しさや悲しみを抱え、自分の心を分かってくれるのはアヴォンリーではアンしかいないと感じていました。
それはアンも両親の顔さえ記憶にない天涯孤独の孤児であり、またポールが描き出す想像の世界のお話を理解出来たことも理由かもしれません。
アンは手をつないで歩きながらポールの想像のお話「岩辺の人」について尋ねてみました

「夜、一緒に海岸へ行ったら、私も岩辺の人に会えるかしら」
ポールは真面目な顔になり、首をふった。
「いいえ、僕の岩辺の人たちは、先生には見えないの。ぼくだけに見えるんです。でも先生には、先生だけの岩辺の人たちが見えます。そうしたものが見える人だから。ぼくたち二人ともそういうタイプなんです」ポールはアンの手を親しげに握りしめた。
「そういう人なのは素晴らしいことでしょう」
「素晴らしいことよ」アンは灰色の目をきらめかせながら、ポールの青く輝く瞳を見つめた。アンもポールも知っていた

「その王国のなんと美しいこと
想像が風景の扉を開きゆく」
　この幸せな王国へ向かう道筋を 二人は知っていた。
　その国では喜びの薔薇が谷間や小川のほとりにに咲き、陽の輝く空には雲にることなく、甘い調べのも調子を外すことがない。そこには、
夢見る心の同類たちがっているのだ。王国のありか・・・
それが「太陽の東、月の西」であること・・これは大金を払っても教わることのない貴重な言い伝えであり、どんな市場へ行こうと買えない知識だった。それはきっと、生まれた時に良い妖精たちがけてくれる贈り物なのだ。になろうと、なわれることも 奪われることもない贈り物。
この贈り物をけれられた人はたとえ屋根裏に住もうと、それを知らずに宮殿で暮らすより、はるかに心が満たされるのだ。

　　＜201ページ6行目〜202ページ9行目＞

「感想」

人はお金や物で心を満たせることもあります。恋人ができたり、可愛いペットが家族になったら 夢のような幸せを感じます。でももし それらが無くなってしまったら、一瞬にして不幸な気持ち、奈落の底に落ちたような気持ちになるかもしれません。そんな時でも心の中に自分を幸せにできる宝物があれば、どんなことがあっても、どんな状況にあっても人は心を満たすことができるのかもしれませんね。それは誰にも奪うことはできないのです

第十九章　幸せな一日

アンがマリラに語ったことがあった。「結局、一番幸せで心楽しい暮らしとは、華やかなこと、驚くようなこと、胸ときめくことなどが起きる日々ではなく、さりげない小さな喜びをもたらす毎日が 今日、明日と静かに続いていくことなのね、まるで真珠が一つ、また一つと、糸からすべり出していくように」
　グリーン・ゲイブルズの暮らしは、まさにそうした日々の繰り返しだった。アンは思いがけない事件や災難に出くわすとはいえ、ほかの人々と同じように、に起きるのではなく、一年の間に点々と散らばっていた。
ふだんは何事もなく幸せな暮らしがまれ、アンは働き、未来の夢を描き、笑い、勉強を続けた。八月の終わりのある日もまた、そうした一日だった。

＜249ページ1行目〜9行目＞

「感想」
　若い時は、何もない日というのは、刺激もなく何だかつまらない日と思いがちですが、歳を重ねていくと、何事もなく穏やかな日常が実は奇跡なのだと感じるようになります。アンは幼い時から苦労をしてきたからでしょうか、まだ十代の若さで幸福とは何かを知り、多忙な日々の中に喜びを見出す生き方を実践していますね。

まとめとして「あとがき」から訳者松本侑子さんの言葉を抜粋してご紹介いたします

寂しい子どもたちと傷ついた大人たち

次回は第三巻「アンの愛情」へと移りますが
興味深いことに「赤毛のアン」の末尾と
「アンの青春」の冒頭のエピグラフはつながっています。
「赤毛のアン」の最後は
「これから辿る道が、
たとえ狭くなろうとも、その道に沿って、
穏やかな幸福という花が咲き開いていくことを、アンは知っていた」
と書かれています、
続く「アンの青春」のエピグラフの１行目は
「彼女のゆくところ次々と花が咲きいずる」とあり、
アンの幸福の花がたしかに咲き開いていくことが読者に伝えられるのです。

ではこのアンの青春の最後の章、第三十章の「石の家の結婚式」には
何が書かれているかご紹介しましょう・・

ロマンスとは立派な騎士が馬にまたがって登場するような、
しさやラッパのきをって 人生に訪れるのではないだろう。おそらく古い友が静かに歩いてくるように、そっと静かにかたわらに寄り添うのだろう。（略）
やがてヴェールはまたおりた。しかし暮れなずむを歩いていくアンは、前日の夕方、しげに馬車を走らせて来たアンとは同じではなかった。
少女時代のページは、目に見えない指によってめくられ、魅力と謎、苦しみと喜びをたたえた大人の女のページがアンの前に開かれたのだ
　　　　　＜423ページ　13行目〜424ページ　抜粋＞

次回の「アンの愛情」は一体どんな展開になっていくのでしょうか。アンとギルバートの関係も気になります。ぜひ楽しみにして頂けたら嬉しいです。

朗読の後はヒンメリワークショップです。

ヒンメリとは

ヒンメリ(himmeli)はフィンランドの伝統的なヨウル(joulu)の装飾品である。藁に糸を通し、多面体を構成したら、最後にそれらを繋ぎ合わせて吊るす。別名「光のモビール」。himmeliの語源は、スウェーデン語のhimmel(天)から。


ヒンメリの歴史は1150年頃から始まった。ウラル地方から移住してきた民族であったフィンランド人は、古くから自然を崇拝し、精霊信仰に基づいた生活を送っていた。寒冷な気候のフィンランドでは、太陽神の誕生祭や農耕神への収穫祭を12月下旬のヨウルの祭として行っていた。 その後、スウェーデン領になってからキリスト教が広まり、クリスマス装飾の一つとしても活躍するようになる。 1800年代の終盤には、ドイツからクリスマスツリーが入ってきて流行した為、ヒンメリの姿は消えかかってたが、 1930〜40年代にある女性団体や出版社がヒンメリを広めようと努めた。アーティスト達は新しいデザインを生み出し、今日に至るまで多彩に形を変えて、様々な行事で飾られている。　<wikiより>

翌日がイースターなので
イースターエッグを飾ってみました。

お土産は私が焼いたバナナケーキ。
教会の宣教師から伝わったレシピです。
なんと、アンツアーで行ったプリンスエドワード島の
お店で買ったケーキとほとんど同じお味でした。

次回もお楽しみに。

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