7日間ブックカバーチャレンジ
昨年今頃、尊敬するお友達からバトンをいただき、《7日間ブックカバーチャレンジ》に参加しました。
これは「読書文化の普及に貢献するために、
1日1冊、7日間好きな本のブックカバーを紹介していく」というチャレンジで、
ルールは次のふたつ。
1.紹介するのはブックカバーの画像のみで、それについての説明文は特別不要。書きたい人は書いてよし。
2.その都度、必ず一人FB友達を招待(タグ付け)し、同じ形でチャレンジのバトンをつなぎ、拡散していってもらう。
というものでした。
コロナ禍で自宅で過ごす時間を楽しくするための様々なバトンが渡され、
スルーしたものもありましたが、このバトンは喜んでお引き受けしました。
1年前を思い出して、ここに再び、
厳選した7冊を残しておきたいと思います。
目次
1日目 メンデルスゾーンとアンデルセン
2日目 『ヨシュア』〜自由と解放をもたらすひと〜
3日目 『コーンウォール』 〜妖精とアーサー王伝説の国〜
4日目 赤毛のアン
5日目 「羽仁もと子選集
『生活即教育』『おさなごを発見せよ』
6日目 秘密の花園
7日目 水の戯れ
📗1冊目
「メンデルスゾーンとアンデルセン 」(中野京子著 2006年)
ドイツの作曲家メンデルスゾーン、デンマークの作家アンデルセン 、
スウェーデンのソプラノ歌手リンド。
境遇も生まれも違う三人の出会いと別れを
激動の19 世紀を舞台に描かれた人間ドラマ。
小学校中学年くらいから読むことのできる小説です。
私は子どもの頃からメンデルスゾーンが好きでした。
小学校の音楽室に飾られている楽聖達の絵中でも
一番ハンサムなメンデルスゾーン…
裕福な銀行家の家に生まれ、十分な教育を受け、
モーツアルトの再来と呼ばれる才能を持ち、
何一つ不自由ないメンデルスゾーンは
「彼ほど幸せな音楽家はいなかった」と評されています。
しかし、ユダヤ人の彼が差別を受けずに済むことはなく、
個人の責任との関わりないところで蔑まれるという屈辱を受け、
優等生の常で、自分のしたいことより
周囲の期待に応えることを優先し、
精神的にも肉体的にも疲労をため、
38歳という若さでこの世を去りました。
一方、アンデルセン は極貧に生まれ育ち、苦労して作家になり、
親の愛を全く知らず育ったリンドも血のにじむ努力の末に、
世界的名声を得ました。
致命的ともいえる疵をバネにして大きくなった三人は、
まさに不運を幸運の鍵に変えていったといえます。
アンデルセン はリンドに求婚し、
リンドはメンデルスゾーンに恋をし、
メンデルスゾーンは…
二人の芸術に大きな影響を与えました。
ドイツ・ライプツィヒにあるメンデルスゾーンの家を訪ねた時、
壁に飾られたメンデルスゾーンの描いた絵の素晴らしさに目を見張りました。
両親の厳しい教育方針によって、
第一級の教養ある紳士となったメンデルスゾーン。
カビ臭い過去の音楽と言われていた「マタイ受難曲」を再演し、
見事にバッハを蘇らせたメンデルスゾーン。
誰もいない部屋の中で、
ふとピアノフォルテの音が聞こえたような気がしたあの日の思い出と共に、
この本はずっと手元に置いておきたい本となりました。
(ライプツィヒにあるメンデルスゾーンの家
愛用したピアノフォルテ)
📙2冊目
『ヨシュア』〜自由と解放をもたらすひと〜
ジョーゼフ.F.ガーソン 山﨑髙司 訳 (2003年)
アメリカの片田舎の小さな町外れに
物静かで誠実な男が移り住んできました。
その名はヨシュア。
一流の大工の腕前をもち、
その人柄で子どもたちから大人まで魅了していきます。
宗派を問わない行動と“人は真の意味で自由になるべきだ”
という発言の影響力の大きさに
各派の宗教指導者は警戒を強めていき、最後は…
ある日、本屋さんでこの表紙に出会い、
一目惚れで読みました。
真の自由とは何かを考させられる一冊です。
読むたびに初めて行った外国、
アメリカ カンザス州の片田舎の町の風景も浮かんできます。
📕3冊目
『コーンウォール』
〜妖精とアーサー王伝説の国〜
井村君江先生 1997年
英国最南端の半島コーンウォールは
アーサー王の故郷であり、
ケルト文化・妖精伝説が息づく異郷の地です。
この本はフォークロアの伝説から、
実際に暮らした経験談などが書かれた貴重な一冊です。
アガサ・クリスティー、デュ・モーリア、
ロザンムンド・ピルチャー
私の大好きな女流作家も愛した
コーンウォールの魅力がたっぷり書かれていて、
読むたびにコーンウォールへ行ってみたくなります。
ケルト大好き、
妖精大好きの私は不思議なご縁で、
宇都宮の井村君江先生のお宅へ訪問することができました。
興味深い、素敵な本が並ぶ本棚にあったこの本に
心を奪われた私に、
先生はサインをして、
プレゼントしてくださいました。
井村先生の童女のような笑顔が浮かぶ大切な
私の宝物です。
📗4冊目『赤毛のアン』
L.M.モンゴメリ 松本侑子訳(1993年集英社)
村岡花子先生訳の「赤毛のアン」を
小学生の頃から読み込んで育ちましたが、
その後、大人になって掛川恭子先生の翻訳を読み、
翻訳者による違いに興味が湧きました。
そして、ある日、本屋さんでこの美しい装丁の
「赤毛のアン」に巡り合いました。
読んでみて、松本侑子先生の徹底した解読による
画期的な新訳に驚きました。
聖書、シェークスピア、ワーズワース、ブラウニング、スコットの
詩や文章が散りばめられた
「大人向けの文学」であると認識しました。
数年後、松本侑子先生のツアーで
プリンス・エドワード島に行くことができるとは、
思いもしませんでした。
1999年、次男が大学卒業したとき、
自分に「卒業旅行」をプレゼントして、
以来、毎年侑子先生とご一緒に文学の旅をしました。
ツアーで知り合った「腹心の友」との旅は
心に残る素晴らしい思い出となりました。
2年前、孫娘の名前宛でサインを頂きました。
彼女が10歳のお誕生日を迎えたときに
プレゼントしようと思って大事に取ってあります。
現在は文春文庫から
“アンシリーズ”の全文訳が順次刊行されていて、
楽しみです。
私の人生後半変えてくれた一冊です。
📚5冊目
「羽仁もと子選集」
『生活即教育』『おさなごを発見せよ』
(1997年 婦人之友社)
二人の息子がお世話になった自由学園では
生徒も親も日常的に創立者羽仁もと子の
著作集の読書会をしていました。
父母会委員会で議事の前に輪読し、
感想を述べ合ったことは貴重な経験、
良い思い出です。
優れたジャーナリストでもあったミセス羽仁の
簡潔な文章を読むと頭がスッキリします。
常に時代の先を見ていたミセス羽仁が
今のステイホーム状況を見たら、
「チャンス到来!」とばかり、
学校内ではできない、
生活に根差した教育を最新式の方法で
呼びかけられるのではないかと思います。
「著作集」は全21巻ありますので、
読みこなすのは簡単ではありませんが、
親しみやすく読めるようにと「選集」が出ました。
時がたっても、いえ、今こそ、光る、生活教育の案内書です。
📖6冊目
『秘密の花園』バーネット
(野沢佳織訳 西村書店 2000年)
先日書いた「秘密の花園」をお読みくださいね。
📘7冊目
『水の戯れ』 荒井寿実 (1995年 新風舎) 絶版
最後の一冊は…
一番思い入れのある自作の本にしました。
嫁したら当然家業の仕事をするものだといわれ、
私は2歳違いの二人の男の子を
背中におんぶして仕事をしていました。
まるで「おしん」のようでした。
次男が小学校に入った時、
私は今のままの生き方でいいのか自分に問いました。
忙しい毎日の中でできたことは本を読むことと、
物を書くことだけでした。
1994年、毎日新聞への投稿が採用され、
女性記者の取材による「うたものがたり」」が5日間の連載となり、
紹介されました。その時の女性記者さんに
「小説を書いているのですよ」と言って読んでもらいました。
すると彼女は「自信を持って頑張ってください!大丈夫!」
強くと背中を押しくれました。
そして、自費出版に力を入れた新鋭出版社として
頭角を現してきた新風舎に応募すると、
佳作に選ばれ、100万円で本を出版できる事になりました。
100万円!自費出版としてはそれほど高くない金額でしたが、
もちろん、そんなお金はありません。
諦めかけていた時に、
目に止まったのが懸賞論文「毎日新聞21世紀賞」の募集広告でした。
“賞金100万円、副賞に富士通ワープロ”
そして最優秀者にはハワイ6ヶ月留学という夢のような賞です。
題は「人間とまち」
私は育った大好きな町横浜と、
嫁いだ下町浅草の比較をして、
一気に書き上げ、期限の6月末、ポストに投函しました。
3ヶ月後、入賞内定の知らせが届きました。
100万円!10万円をルワンダ難民救済に献金し、
残りの全てをかけて、出版することに決めました。
担当者と相談して、作りあげた一冊の本。
送られてきた本を手にしたときの感動は忘れられません。
さて、ジャンルは恋愛小説…
当時は「失楽園」を筆頭に不倫小説全盛期でしたから、
「主婦の願望小説」はピュアすぎて読み応えなかったと思います。
それでも、息子にお母さんお友達からは
「勇気をもらえた」
「私もできることをやりたい」というお手紙をたくさんいただき、
それがとっても嬉しかったです。
また、尊敬する牧師先生から
「あなたの書くものを綺麗事と片付ける人たちも出てくるでしょう。
それでいいです。
あなたは綺麗事を書き続けなさい。それがあなたのものだから」
と書かれたお手紙をいただき、
この言葉は今でも大切にとってあります。
この一冊を世に出してから25年歳月が流れました。
出版社はすでに倒産してしまいました。
これで終わってはつまらないかも…次はどうする?と
最近思うようになりました。
《ブックカバーチャレンジ》を続けた7日間は
自室にこもりながら、
どこか遠いところへ旅していたような気がします。
コロナ禍の自粛の只中で、
内省する十分な時間をもらえたような気がします。
私にバトンをつないでくれたお友達の選ぶ本を楽しみにしています。
ブックカバーチャレンジ撲滅キャンペーンもありますが、
楽しんでいる多くの方もいらっしゃるの事実です。
自粛時間をどう過ごすか!それも自由ですね。
医療従事者の方々をはじめとして、
たくさんの方々の献身的なお働きによって、
今日も無事に過ごせることを感謝する毎日です。
2020年5月9日 記
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