Web3時代の「Coffee2050」project
さて、いつぞやぶりの投稿だろうか…というのはさておき
2022年10月1日現在における、これまでとこれからについて語りたいと思います。
この記事を書いていた9月30日はちょうどメルボルンでバリスタ世界大会が開催されており、日本代表の石谷貴之バリスタが見事世界4位という速報が流れてきました。TAKAおめでとう!!!!!!!!!!!
プレゼンテーションを観ることはできませんでしたが、ロブスタ種を使用するなど品質重視の大会に、環境の視点を意識した素晴らしいコンセプトでした。
自己紹介
ども、yg/ヤギトシマサと申します。@ygtsms
2003年からバリスタとしてコーヒー産業に関わり、現在は芦屋・神戸・大阪で3店舗コーヒーショップを経営しています。(店舗バリスタ募集中)
また2009年から2019年まではバリスタ大会の審査員としてスペシャルティコーヒーに関わっており、石谷バリスタの活躍は大変嬉しく思っています。
現在、職業としての肩書きは珈琲体験研究家
良質なコーヒーの知覚体験を通してwell-beingに貢献すべく、神経科学者、哲学者、AI研究者などの研究者に教えを乞い、コーヒー業務の傍ら独学で研究活動に従事しています。
タイトルのWeb3、クリプト関連では2016年のICOバブルをきっかけに興味を抱きましたが、暗号資産の可能性というよりは、そのベースとなるブロックチェーン技術の社会実装に興味があり、現在に至ります。
Web3 coffee
わたし自身がweb3を語れる立場には到底ありませんが、もしかしたらweb3というキーワードすら聞いたことがないという読者の方に向けて、あえて解説からスタートしてみたいと思います。
昨今様々な方々が独自のポジショントークでWeb3を語っていると思われますが、ここでは伊藤穰一の記事がわかりやすかったので参考に掲載させていただきます。
JOI ITOさんの解説記事
上記記事でも語られていますが、2014年にPolkadot創設者のGavin woodが提唱したWeb3の内容
さて、わたしはコーヒーの専門家なので、その立場からWeb3の定義をわたしのビジネス領域であるコーヒー産業に当てはめて定義してみようと思います。
Web3 Coffee →「生産者も消費者も分け隔てない循環トークン経済」
とわたしは理解しています。
では次に「Coffee2050」問題について語りたい。この問題は聞いたことがない読者が大半だろうと思うので、このブログで私なりの解釈を解説していきます。
Coffee2050問題とは
Coffee2050年問題を一言で言えば
「温室効果ガスによる気候変動で2050年にはコーヒー生産が半減する」
という気候変動問題です。
この問題提起のきっかけは、2012年に英国王立Kew GardensのシニアリサーチャーであるAaron Davis 博士による調査発表だと理解しています。
The Impact of Climate Change on Indigenous Arabica Coffee (Coffea arabica): Predicting Future Trends and Identifying Priorities
この論文ではエチオピアにおけるアラビカ種の気候変動をモデリングしており、
2000年を閾値として2020,2050,2080年の3つの時間軸のシュミレーション
3つの温室効果ガス排出量によるシュミレーション
この組み合わせを検証しており、結果として2050年問題が提起されました。またこの調査をサポートしたメンバーが中心となりGCQRI(Global Coffee Quality Reserch Initiative)、現在のWorld Coffee Reserchが発足され、気候変動に耐えうる新たな種子の開発が始まりました。
GCQRI
http://www.ico.org/presents/1011/PSCB-gcqri.pdf
WCR
以下の動画は2013年にAaron Davis博士がSCA(Specialty Coffee Association)が主催したシンポジウムでの登壇内容です。
また2015年には以下の論文が発表されており、気候変動シュミレーションの違いによる生産量減少度が報告されています。
このように2050年問題は約10年前から提起されている問題です。現在も生産国における問題解決のアプローチはWCRを中心に進んでいます。また当社もWCRの会員として少額ですが拠出しており、メンバーとして問題解決にコミットしています。
Web3×Coffee2050問題の解決プロジェクト
これがわたしなりの問いです。
ここで整理しておきたいのは「web3×Coffee」と「ブロックチェーン×Coffee」はイコールではないということです。
「ブロックチェーン×Coffee」の組み合わせではすでに、大手の名だたるコーヒー企業が実証実験を繰り返しており、国内事例も増えています。また実証実験の事例の多くはトレサビリティとしてのブロックチェーン活用であり、ほとんどの実証実験はweb3のパブリックチェーンではなく、連携企業間で運用するコンソーシアムチェーンの実験です。
事例
このようにトレサビリティにブロックチェーンを活用した取り組みは多数の実証実験が行われています。しかしWeb3の視点からパブリックチェーンでの事例は非常に少ない状況です。
そこで「Web3×Coffee」組み合わせでは対象が狭いので、「web3×脱炭素」というテーマで調べてみました。
そこで一時話題になったのが、WE WORKの創業者であるアダム ニューマン氏が新たに設立し、a16zなどから総額7000万ドルを調達したことで話題になりました。
また、我々の思想に近い先行事例として、脱炭素農家と企業をマッチングするNoriが上げられます。
このように、脱炭素という切り口で見てみると、Web3領域では急速に発展しています。
そのような状況の中で、我々は有志の集まりでプロジェクトを開始しました。
Coffee2050問題解決プロジェクト "Value_way"
Value_wayとは
ブロックチェーン技術を用いて経済体験価値を記録するプラットホーム。
その中でもコーヒーに特化し、サステナブルかつ透明性が担保された経済圏の創出に挑戦しているプロジェクトがCoffee_wayです。
現在は2つのプロジェクトが進行しています。進行はプロジェクトメンバーが中心に行っておりますが、今後のプロジェクトにDAOとしてコーヒー問題に興味をお持ちの方はぜひwebサイトからdiscordにてご参加ください。
Value_wayの進捗状況
Value_way,Coffee_wayでは以下の国際機関と連携しながらプロジェクトを進めています。
1.Sustainable Coffee Challenge
Project :Visualization of the value chain around the carbon footprint
コーヒー生産活動における温室効果ガス排出量はまだデータベースが無い状況です。そこで我々のプロジェクトではアフリカの小国ルワンダにおける温室効果ガスの測定プロジェクトからスタートしつつ、他のチームと連携してコーヒー流通におけるcarbon footprintの可視化を進めています。
この辺りの各国でのデータベースに関してはSCA(Specialty Coffee Association)でも報告があると思いますので、しばらくお待ちください。
2.SDGs Challenge
プロジェクトの連携として国連プロジェクトサービス開発UNOPS、兵庫県、神戸市が主催するSDGs課題解決共創プログラム、SDGs Challengeにて、プロジェクト採択いただき、情報共有しつつプロジェクトを進めています。
現在は神戸市内での コーヒーかす実証実験の準備を進めており、神戸市はじめ、関係事業者と連携を計りつつ進めております。
3.Project Englobe
「地球に良いビジネスを神戸から」を合言葉に神戸市内の中小企業が中心となって、持続可能なビジネスにチャレンジする神戸市主催のイノベーション創出プログラムから派生したメンバーが中心となってValue_wayは活動しており、現在もメンターはじめ、多くのサポートをいただいています。
https://englobe-kobe.com/
4. Cardano Catalyst
Value_wayではパブリックブロックチェーンであるCardanoでの実装を予定しています。
Cardanoでは、コア開発・Dapps開発などを含む新しいプロジェクトの開発資金の提供、システムの根幹に関わる機能変更などに対する意思統一などが可能となる投票システムCatalystを備えています。Catalyst資金は、ステーキング報酬の一部をシステムが自動徴収したものから還元されている、世界最大のDAOとして機能し、世界中の開発者/起業家/ユーザーと協力できるための仕組みといえます。
このCatalyst に我々のプロジェクトがコミニティの皆様に多数投票いただき採択いただきました。
Proof of borderless
歴史を振り返れば大航海時代の到来とともに株式会社は誕生しました。 当時から今でも続く貿易の歴史は南北問題と呼ばれる格差問題も生み出しました。
コーヒーをはじめとした多くのコモディティ商品の歴史は、片方が飢え片方が富む、いわば一方通行の消費行動の歴史とも言えるでしょう。もしかしたらこの構造は今でも続いていると言えるかもしれません。
コーヒー産業を例に挙げると、世界の生産地の多くは小規模な農園主が経営しており、アフリカなどの諸国では自宅の庭に育っているコーヒーを収穫し農協に持っていくといった方法が今でも行われており、このような生産者の多くが貧しい実態は否定できません。またコーヒーを提供するバリスタなどの職種も多くの事例が所得が低く非正規雇用が一般的です。
一方で、物流に携わる総合商社の年収は日本の平均所得の2倍以上あることが公表されています。 (「会社四季報 業界地図2022年度版」)
この事実は何も富めることを否定するものではありません、我々は構造の問題だと考えています。
そこで、このような所得のベルカーブが起こる産業構造を変えることで生産、販売従事者の所得ボトムを上げることで、生産者も消費者も分け隔てしない循環世界をValue_wayでは目指しています。
我々のチームはエンジニア、UIデザイナー、コミニティマネージャー、AI研究者などで構成されています。現在はケニアやエルサルバドルなど海外の関係者とも情報交換を行なっていますが、わたしの語学力は大変乏しく困っています。この記事をご覧になったあなたにも、何かやれることがあるはずです。我々の活動に興味をお持ちいただけたなら、どうぞ気軽にお問い合わせください。
https://valueway.studio.site/
最後に
本日10月1日はInternational Coffee Dayです。
今日も明日も2050年の未来にも、毎日美味しい食事、コーヒーが愉しめる持続的な社会実現に向け、日々の生活を豊かに彩りつつ、未来への一歩を歩みはじめましょう。
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