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レディオヘッド
レディオヘッドの最良の作品を12曲ほど選んで、それを最高の曲順に並べ、ベストアルバムを作ろうという話が、友人との間で持ち上がった。選曲では両者一致し、残すところ並べるだけの段となった。
先に友人が作り、記事にした。いかにも良い並べ方だと思ったので、困ってしまった。妙案は思いつきそうにない。
すっかり追い込まれた形の私は、選ばれた曲のひとつ、True love waits(トゥルー・ラブ・ウェイツ)の歌詞について、簡単な感想を述べるにとどめて、勘弁していただきたいと思う。
True love waits
真実の愛は待っている
[Verse 1]
I’ll drown my beliefs
信念は捨てることにしたよ
To have your babies
あなたの子供を生むために
I’ll dress like your niece
あなたの姪っ子のような格好をして
And wash your swollen feet
あなたのふくれた足を洗うよ
[Chorus]
Just
だから
don’t leave
行かないで
Don’t leave
行かないで
[Verse 2]
I’m not living
私は生きているなんて言えない
I’m just killing time
時間を殺してきただけ
Your tiny hands
あなたの小さな手
Your crazy kitten smile
狂おしく子猫のような笑顔
[Chorus]
Just
どうか
don’t leave
行かないで
Don’t leave
行かないで
[Verse 3]
And true love waits
真実の愛は待っている
In haunted attics
幽霊が出る屋根裏部屋で
And true love lives
真実の愛は生きている
On lollipops and crisps
飴とお菓子を糧にして
[Chorus]
Just
どうか
don’t leave
行かないで
Don’t leave
行かないで
泣きたくなる歌だ。人間の脆さについての歌だと思う。愛する人はひたすら儚くて、すでに壊れかけている。手に触れただけで崩れてしまう。少しでも目を離せば居なくなってしまう。
気のせいだ、根拠がない、などと言っても始まらない。そう思われてならないのだから。人間の心に映り込む物が、常に科学的に妥当とは限らない。この曲はどこまでも心的事実に忠実である。
トム・ヨークという人は、人間の眼から見た人間が、どれほど異様な姿をしているかを知っている。それを表現するのに言葉だけでは無理で、音楽の力を借りなければ表現できないことも熟知している。
曲の調べが歌詞を優しく包む。夢の中で、逢いたかった人に逢えているのに、それが夢であることは明らかで、もうじき目が覚めることを知っているときの、あの切なさに近い。
陶酔に至ることはない。聴く人は覚醒の一歩手前で身動きができない感覚を味わう。曲の力が聴く人の位置を、そこに固定するのである。
終