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【短編小説】Back in The U.S.S.Rを聞きながら(1)

Narita in 1991   私は、今、成田空港行きのバスの車内である。始めて行く成田空港。東京駅からかれこれ一時間以上バスに揺られている。早朝に神戸をJRで出発し、すでに昼過ぎだ。いつもなら、大学で実験の真っ最中である。  昼間に実験室を離れること自体が、この一年間全くなかったので、日の光を浴びて車中の人であることの違和感が激しい。  それにしても、不便なところに空港を作ったものだ。車窓からは「三里塚反対!」の立て看板と、雑草がところどころに生える広大な空き地が見える

    • コンサートしました。

      暑い日が続いています。コロナの第11波となりました。高齢者にとっては過酷な夏になっています。 ある病院関連の雑誌をペラペラ見ていると、懐かしい顔がありました。大分白髪となっておられますが、私が研修医のときに、研修医担当となってお世話をして下された先生でした。とある公立病院の院長先生になっておられました。大変温厚な先生でしたので、人望もあつく院長になられたのでしょう。 当時、私はシンガーソングライターを自認しており、研修医の友人の前で自曲を披露したのです。研修医の友人の中で

      • 再生

        Sorry

        先日、ミニコンサートをしました。明橋先生もお元気になられました。

        • 働き方について

          医師の働き方改革が、いよいよ本年度からスタートしました。そのおかげで、患者さんから、「先生も休まんとね」と言われて、ありがたく思います。100時間の残業なんて、可能なのは若いうちで、ほとんど寝泊まりして研修している若手の多い大学病院のことです。一般病院では、そこまでのことはありません。時間を考えて仕事をしていては、いい仕事はできないという90年代的な考えが、この業界では、最近までまかり通っていましたからね。 私も定年と言われる年になり、自分で働き方改革を行うことにしました。こ

          小学校時代の恩師

          正月に大きな地震がありました。私の住んでる富山県は、石川県に比べると被害は少なかったのですが、これを機会に、故郷の人たちから安否を気遣うメールをたくさんいただきました。 その中に小学校の時の女性の同級生からメールが来て驚きました。実は昨年、小学校の同級生から突然電話があり、話をする機会がありました。その友人のご近所さんということで、さらになんと小学校の時の先生と同窓会を開くからまたメールしますと言う連絡がありました。  その先生は、当時初めて先生になられた若くて熱血先生でみん

          小学校時代の恩師

          エイジズムの話

          エイジズムとは、高齢者に対する偏見のことです。すなわち人種差別や女性差別と同様に年齢により差別すると言う事です。同じ仕事をしているのに、65歳を過ぎたと同時に給料が下がることは、問題であります。同じ会社で働く場合は、そう決められていれば、それを受け入れざるを得ません。最近、70を過ぎた女性が架空の妹の免許証を作り、40歳といつわって逮捕されたと言う事件がありましたが、本人は70代では就職先がないと言う理由を述べていました。免許を偽造する事は罪ではありますが、70過ぎたら一律に

          エイジズムの話

          赤盤青盤

          ビートルズの赤盤と青盤が新しくなりました。 赤盤青盤といいますのは、ビートルズの言うならばベストアルバムであります。初版が出たのが1973年ですから、今から思うと解散後たったの3年後に発売されたと言うことになります。ジョージ・ハリスンが選曲したと言われています。当時のLPレコードの時間の制約上、各26曲が収められています。私がビートルズを知った頃には既に解散してしまっていましたが、当時は今日のように世代を超えて引き継がれるエバーグリーンとなるとは誰もあまり考えてなかったように

          赤盤青盤

          ニッチな運動

          人には勧むれど自分の運動がなかなか時間がとれません。時間はあるのですが、どうしても優先順位で低くなってしまいます。典型的なのがジムです。数年前に心拍数が増加して仕事がつらくなりました。原因がストレスと運動不足と自己診断してジムで週二回の運動を開始しました。1年くらいで元気になりその後も運動をジムで続けていました。コロナ前くらいから徐々に足が遠のきついにコロナでジムには行かなくなりました。今でも不顕性感染が多いのがコロナ感染ですので、やはりジムは躊躇します。自主的に運動を行うの

          ニッチな運動

          読書感想1

          ご無沙汰しております。暑い夏でした。あまりの暑さに集中力が減退していきます。読みたい本はたくさんあるのに、なかなか捗りません。ましてやnoteは、書くことができませんでした。少し朝晩が涼しくなり、やっと1冊読み終えたので、ここに読書感想文を書いてみたいと思います。備忘録になります。 「60歳からめきめき元気になる人」榎本博明著、朝日新書 この手の本は、ほとんど読んでおります。自分のこともあり患者のこともあるので興味があるテーマです。前半は「人生で三度路頭に迷う。」「高齢期への

          読書感想1

          忘れられない友へ

          学生時代の後輩で、ちょっと面白い人がありました。文学部で詩作をしている人でした。学生の時、自費出版で詩集を出しました。私も曲を自分で作ったりしていましたので、何となくお互いの作品をよく理解できないまま、学生時代は過ごしていました。卒業して後、私も医者になって忙しく、しばらく音信不通になっていました。 卒業して10年くらい経った頃、久しぶりに彼から声がかかり会いました。「あの時の彼女は実は妄想なんです。」と言われて、驚きました。実に実在の人物のように、事細かく記載されていたので

          忘れられない友へ

          荒井由美を聞いて

          節目のごとに注目を浴びているユーミンです。高校生の頃、学園祭で級友の誘いで、卒業写真のギターを弾かされました。学園祭の曲は、ボーカルの友人の音程が最初から外れたまま、最後まで行っていました。その時初めて卒業写真の楽譜をもらったのですが、知らないコードばかりで困りました。適当に弾きました。その時は原曲をまともに聞いたことがありませんでした。中高校生のときは、洋楽ばかり聞いていて、お小遣いが限られていたので、まともに聞けず仕舞いでした。「あの日に帰りたい」のノスタルジー溢れる楽曲

          荒井由美を聞いて

          定年後をどう生きる

          私も還暦をすぎて、一応世間では定年と言われる時期になっています。ここまで極めて早いと実感します。国立、公立病院であれば65歳にて定年となり、人事刷新となります。このシステムは、一部への権力集中を防ぐという意味では、よいシステムです。一部の権力を手中にした人が、居残り続けると碌なことはないと歴史が証明しています。民主主義の制度では、一人の人間が権力を保持しない制度を作ってきました。しかし、それを反故にする権力者が後を絶ちません。ついに国を破滅に導いたりします。  この定年という

          定年後をどう生きる

          思い出深い患者さん

           書いておきたい方があります。  80代の女性で、毎回、外来のたびに職員にお菓子を持って来られる方がありました。それも大きな袋いっぱいに売店で買われたお菓子を、毎回いただきました。 職員も私もこの方が来られると、お菓子がもらえると少し楽しい気分になりました。職員はお菓子を持って行くと喜ぶということを知っておられました。ある日トイレで転倒して足を挫いて動けなくなられ、数時間後に家族に発見されました。その時は、下肢の筋肉の挫滅が起きており、私は残念ながら年齢も考えると、もう歩くこ

          思い出深い患者さん

          書くということ

          最近、手書きのデジタルインクのタブレットを導入しました。ほぼ手書きで文字を書くことがなくなってしまったからです。その結果、いざ文字を書こうとすると、明らかに意図したように書けない現象が出現しました。これはかなり危険な兆候と思いました。思えば、年賀状くらいしか手書きをしなくなっていました。もともと悪字であるのですが、悪字であるだけでなく書けないのは、明らかに手書きの能力を使用していないからです。一度獲得した文字を書くような能力は、身体的に記憶されていて生涯保たれるはずですが、年

          書くということ

          はじめるにあたって

           ブログ的なものを書くのは、ほぼ10年ぶりということになります。以前はmixiでしたが、今回はnoteを選びました。  現在私の仕事は、中小病院で内科医をしています。あの時なにを考えていたのかという備忘録のような形でこの文章を書いていきたいと思います。ですから読む人がなくとも、文章を書き続けていきたいと思います。  ただ最初にどのような内容にしようかと思う時、様々な迷いが出てきます。いつまで経っても書き始められないので、一番気がかりなことを、最初に書くことにしました。  戦後

          はじめるにあたって