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#9 ー 自営業ビザでも適用される?オランダ所得税控除「30%ルーリング」

こんにちは、としかです。 オランダ・アムステルダムに引っ越してきて1ヶ月半、ビザやセットアップ関連がようやく落ち着いてきたので、今日はオランダの、外国人向け所得税控除制度「30%ルーリング」について備忘録も兼ねてまとめたいと思います。

・これからオランダ移住考えている
・これからオランダである程度稼ぎたい
方の参考になれば嬉しいです。

*注意事項として、これからお話しする内容は、2024年10月の現行制度になっているので、今後変更される可能性があることをご了承ください


1. フリーランスビザだと損をする?

オランダ移住を考えたことのある人ならご存知だと思うのですが、1912年に結ばれた日蘭条約の名残りのおかげで、日本人にとってオランダは移住がしやすい国です。「オランダ」「移住」とググると「フリーランスビザ」「個人事業主ビザ」というタイトルのページが多くヒットするのではないでしょうか。そしてこの個人事業主(フリーランス)ビザをはじめとする「自営業ビザ」の取得条件がどういったものかをものすごく雑に説明すると、自分の法人口座に4,500ユーロに入っていれば、居住許可と労働許可が得れる、というものです。端的にいうと、約70万円あれば、オランダのビザゲットできる!ということですね。

   他にもワーホリやオランダの企業に雇われて転勤する人ももちろん移住が可能です。ただ上で言及したように、意外と語られていないのが、「個人事業主(フリーランス)ビザ」は、「自営業ビザ」の一種にすぎないことです。個人事業主(フリーランサー)ばかりが体験談としてインターネット溢れているけれど、それ以外にも、2名以上で行うパートナー事業、有限会社、株式会社、非営利団体など、選択肢は幅広くあります

  むしろ、オランダは個人の所得税が高い国。例えば稼ぐ額が1000万を超えてくると、個人事業主の支払うは税金は高額に。そこで、個人事業主(フリーランス)以外の自営業ビザを選ぶことで、外国人向けの所得控除制度である「30%ルーリング」が適用されるということを知って欲しくて、本記事を執筆しています。

2. アメリカ人みんなが知ってる所得税控除

もちろん日本人でも英語で情報収集している人・税理士や移住エージェントなど士業の方はこの「30%ルーリング」をよくご存知だとは思うのですが、体験談としての情報などは日本語ではまだまだ少ないように思います。
そしてそもそもなぜ情報格差を感じたかというと、移住を考えていた数ヶ月前、「日本人と同じ条件でオランダに移住できるアメリカ人が、節税対策に敏感である」ことに気づいたからです。

  経緯は省きますが、オランダは、アメリカともDAFTという友好条約を50年代に結んでおり、日蘭条約が最恵国待遇を約束するものだったために、アメリカ人・日本人はほぼ同じ条件でオランダに移住できることになります。 *100年以上前に締結された条約の歩みを知りたい方は、下記のリンクなどをご参照ください https://www.lifehacker.jp/article/33681/ https://www.jnconnect.nl/blog/20200103

そして彼らの移住の手順が

(1) オランダ国外にいる間に「非公開株式会社(BV)」を設立
(2) 雇用主である自分と、従業員である自分との雇用契約を交わす
(3) 渡蘭する
(4) 居住・労働許可を申請・取得
(5) 30%ルーリングを申請する

というものでした。

  今日の主役はこの(5)「30%ルーリング」ですが、まず(1)~(4)を回収し、(5)を説明したいと思います。

3. 30%ルーリングとは

シンプルに、30%ルーリングが適用されると、全所得の30%が、タックスフリーになります!オランダの高い個人の所得税がかかるのはあなたの稼ぐお金の70%だけということですね。この優遇措置は「ある程度稼いでいる」「オランダに赴任してきた外国人」を対象に、五年間だけ有効です。

  気になる「どのくらい稼いでいればいいの?」ですが、最低給与額が指定されていて、それが下記の通り:

・年収€59,934以上
・30歳未満で修士号を持っている場合は、年収€45,559以上

 *この修士号はオランダのでも、海外のでもOK
    *ともに30%の非課税枠を適用する前の給与総額

そして年収の下限以外にも条件は以下です:

・オランダ国内の企業と雇用契約を結んでいること
・採用時/雇用契約締結時オランダに住んでおらず、オランダ国外から採用される
・オランダでの最初の勤務日から遡って過去2年の間、オランダ国外に16ヶ月以上居住し、またオランダ国境から150km以上離れた場所に居住していた

  この原則は、オランダ国外在住時にオランダの企業に雇われた人、いわゆる海外赴任者は問題なくクリアできます。そして実は、自分で起業した人にも当てはめることもできます。その方法が、「個人事業主として登録」はせずに、「非公開株式会社を設立して」「自分を雇う」形をとることです。

  オランダでは外国人がオランダ国内におらずとも起業できます。また「自営業ビザ」は自分で自分を雇うという仕組みです。このふたつを鑑みると、下記のようなロジックで30%ルーリングが適用されます。

a. 日本にいる間に、外国人のあなたが「オランダ国内の会社」をつくる

b. 「オランダの国内の会社」の意思決定をする外国人のあなたが、あなた自身をオランダに赴任させる

c.  赴任を目的にオランダに来たあなたは、30%ルーリングの対象となる


 もちろんaでは登記作業に行政書士さんの助けを借りなければいけないし、bでもオランダ法に沿った雇用契約書を税理士さんに確認してもらったほうが良いです。またcでは税理士さんを介して30%ルーリングの適用申請を個人で行わなくてはいけないので、士業の方にお世話になるだけの初期投資が必要ではあります。具体的にいくらかかったか&おすすめの士業情報については、5章・6章の有料部分でお伝えしていきます。

4. 30%ルーリングがあるとき vs ないとき

さて、実際この30%ルーリングによってどれだけお得になるのか。オランダの個人所得税も交えながら実際に説明していきたいと思います。ざっくり、イメージしやすくするために日本円で解説します。

年収1000万円(約€60,000)の場合:
【30%ルーリングの適用がないとき】手取り約633万円/所得税約367万円
【30%ルーリングの適用があるとき】手取り約743万円/所得税約257万円

年収1600万円(約€100,000)の場合:
【30%ルーリングの適用がないとき】手取り約932万円/所得税約668万円
【30%ルーリングの適用があるとき】手取り約1172万円/所得税約428万円

円計算は2024年10月28日のレートです

だいぶ変わってきますよね。というかオランダの所得税高すぎない?という声も飛んできそうです。ちなみに税率の計算はこんな感じです。

€73,031以下分は36.93%、超えた分は49.50%の税率で計算される

年収1600万円(約€100,000)の場合:
【30%ルーリングの適用がないとき】
 
€73,031 × 36.93% = €26,984.88
 €26,969 × 49.50% = €13,353
 合計 €26,984 + €13,353 = €40,337

【30%ルーリングの適用があるとき】
 *€100,000のうち課税されるのは€70,000
 €70,000 × 36.93% = €25,851

例えば年収€100,000の所得税はこのような計算になる

  適用されるには年収€59,934が条件なので、円にするとほぼ1,000万円というのをハードル高く感じる方もいるかもしれません。私の個人的なおすすめは、€59,934稼げるかわからなくても、少なくとも可能性があるなら、この30%ルーリングにとりあえず申請してしまうことです。条件を満たさなかった時点で課税所得枠の30%控除は永久的に剥奪されてしまうけれど、同時に剥奪されるだけで罰金などはないからです。

  ちなみに基準年収に満たず、かつお金を使うような生活もしていない場合、他の節税策として自分に最低賃金を支払うことで個人の所得税をミニマムにして、会社の資産としてのお金を貯めたい方。法人税は以下の通りです。

オランダは何でもかんでも経費精算できない仕組みにもなってるので、迷いどころ。

  あと他の選択肢として、私は夫と共同で会社つくって、家計完全に一緒にして、そこから一人は最低賃金出して、もう一人は30%ルーリングで、っていうのも考えました。ちなみにオランダの最低賃金は年収380万円くらい(€23,212)で、その場合払う所得税は€8,580みたいです。

ここからは有料記事になります。私自身が具体的にBVの設立から30%ルーリングの申請を体験するまで、いくらかかったか&おすすめの士業情報について、5章・6章でお伝えしていきます:

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