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#6 ニューヨークで会社をつくる(1) 【Bビザ編】

お久しぶりです!としかです。

 二年ほど更新をしていないにもかかわらず、noteを読んでいただいたことをきっかけにご連絡をいただくことが多く嬉しいです。またニューヨークへ訪問されるタイミングでmonopo nycのオフィスにも遊びに来てくれる方も多く、日本の方が北米へ展開されることが増えているようにも感じていて、こちらも喜ばしい限りです。

 そんななか「米国国籍でもグリーンカード保持者でもないのに、どうやって起業したのか・オペレーションしているのか」という質問をよくいただきます。

 この質問の答えるにあたって、事務的ですが根本にあるのがビザ。

 会社体制によっては初めから就労許可のある移民ビザ(EビザやLビザ)を狙うことも可能ですが、私たちは当初は非就労・非移民ビザである「Bビザ」という短期商用ビザをとりました。 これがmonopo nycのシチュエーションには合っていたので、柔軟な選択肢を求める方に参考になればと、記録も兼ねてここでシェアしようと思います。

渡米したての2021年8月、初めて借りたBrooklyn, Greenpointのオフィスにて

*注意事項になりますが、私は移民法やビジネスにおける法律の専門家ではないので、あくまで一つの個人的な体験談として読んでいただければ嬉しいです。
**私がニューヨークで子会社を設立することになった経緯については、こちらの記事で詳しく書いています。

日本人にとっての、事務的なハードル

monopo New Yorkを作るぞ!…..と意気込み創業までのステップをまずググったところで、そもそも日本人が代表となって米国法人を設立するには、以下のような避けられない事務的な壁があることがわかりました。

1. SSN(ソーシャル・セキュリティー・ナンバー)がない

SSNは、アメリカ国民・永住権所有者及び労働等を目的とした一時的な居住者に対し発行される個人番号です。登記をはじめとしさまざまな場面で求められますが、銀行の法人口座の開設などにも必要なので、ペーパーカンパニーは別として、実際にオペレーションをするのであれば取得必須なもの。

2. 自身の就労許可がない

SSNを取得するためにも、そもそもアメリカに長期的に身を置くためにも、ファウンディング・メンバーには就労が許可された長期ビザが必要です(ビザについてはさまざまな種類があるので、プロセスを含めそれらはまた別記事で取り上げたいと思います)。

 長期的な労働ビザが取得できればSSNも取得できるのですが、私たちの場合ビザを取るにもまず法人登記が必要だったので、「卵が先か鶏が先か」的状況に。

 もちろんアメリカ市民やグリーンカードを持つ方に会社の代表者になってもらうなどの方法も存在するのですが、私たちには当時運営を任せれるほど信頼のできる現地のパートナーはいませんでした。

とりあえず踏み出すためのプラン

「なんか簡単には進まなさそう」というのは理解しつつも、とりあえずネットで得た知識を元に、以下のような計画を立てました。

 (1) 短期商用ビザである「Bビザ」でアメリカに滞在する。BビザではSSNはもらえないが、滞在中に現地の登記専門エージェンシーの力を借り法人設立をする

 
(2) 登記後自分達をスポンサリングする形で、「Eビザ(貿易もしくは投資駐在員ビザ)」か「Lビザ(企業内転勤駐在員ビザ)」か「Oビザ(アーティストビザ)」を取得する

 多くの人が知りたいのは(2)だと思うのですが、本記事を【前編】と位置付け、この二つのステップのうち(1)について解説し、(2)については後日取り扱おうと思います。

 Bビザは非移民ビザ(訪問者というステータスで、居住者ではない)という区分になるので、(2)のステージまでは原則現地での就労活動ができません。実際Bビザで渡米してからしばらくは、あくまで日本からの出張者というステータスで米国に滞在し、NY支社という法人格ではなく、NY「営業所」を運営する形をとりました。なので、現地クライアントからの報酬や自身の給与も、monopo Tokyo本社を通して処理していました。

 見通しの立っていないなか始めた感は否めませんが、コロナ禍で特に長期滞在のビザ取得に時間がかかることもわかっていたので、とりあえずのスタートをきるためには良い選択だったのかなと今は思っています。

渡米のプランを開始した時から実際に長期ビザが取れるまで、合計10ヶ月。
コロナ禍だったこともあり、Bビザの発行には5ヶ月もかかってしまいました。


「きっかけ」をくれるBビザ

さて、具体的にBビザとは何か。基本的には下記の2種類「B-1」「B-2」に挙げられる目的に対して発行されるビザで、実際の労働以外の活動が許可されています。「労働以外」という規定は、基本的にアメリカを源泉とする給与またはその他の報酬の受領を伴わない、という制限を意味します。私たちは商用目的なので、B-1を選択しました。

1. B-1(短期商用ビザ)がカバーする渡米目的

-   日本の企業の社員がアメリカで取引先との商談
-   営業・販売
-   カファレンス、研修、セミナーへの出席
-   講演活動
-   研究者としての活動、研修
-   創業準備、投資準備

2. B-2(短期観光ビザ)がカバーする渡米目的

-   現地に滞在する家族・友人・知人の訪問
-   医療の受診
-   報酬を目的としないボランティア活動
-   競技への参加

ESTAではできないけど、Bビザがあればできること

Bビザ魅力は、有効期限は最大10年、また有効期限内であれば、回数に制限なく渡米できるところ。いったん出国すると滞在期間は白紙に戻されるので、再度入国する際は、入国審査官が改めて滞在期間を判断する仕組みになっています。

 対して「ESTA(エスタ)」は旅行者の適性を審査する電子渡航認証システムであり、ビザではありません。年間累積滞在期間の限度は約90日、入国回数の限度はあくまで目安ですが、年間3回と言われています。

 注意点として、Bビザは最大で10年の有効期限が付与されることがあるとはいえ、入国の理由を考慮したうえで設定されます。ちなみに支社のセットアップを目的にし私たちに許された有効期限は、10年ではなく1年でした。

 また一回の入国での滞在期間は最長6ヶ月です。有効期限内であれば原則何度でも渡米が可能なビザではありますが、6ヶ月アメリカに滞在してから一度出国し、再びアメリカへ戻るといった行為を繰り返していると、移住の意思があると判断され、入国拒否の対象となりやすいです。実際にアメリカに滞在している知り合いの数多くが、はじめの6ヶ月以降に別室送りになったり、入国拒否をされたという経験をされています。渡米目的が終了した後は帰国の意思があることをスムーズに説明できるようにすること、また6ヶ月以上の中長期の滞在では、Bビザの後にどのようなビザで滞在するかを計画しておくのがおすすめです。

申請プロセスあれこれ

ステップ1: DS-160

Bビザの申請に必要な申請書を「DS-160」と言います。これは厳密にはアメリカビザの発給資格を事前に審査する制度のことで、Bビザ以外でも、非移民ビザを申請するすべての方はこの申請書を出さなければいけません。主には基本情報、例えば氏名・生年月日・出生地・国籍・申し込むビザの種類などが記入内容になります。

 特筆すべきトリッキーな項目はないはずなので、詳しくは大使館・領事館の公式サイトの「商用/観光ビザページ」を参照ください。申請書のダウンロードもここからできるので、まずは確認してみるのがおすすめです。

ステップ2: 大使館での面接

上記の申請書をオンラインシステムで提出後、オンライン決済で申請料を支払います。申請料は185ドル(2024年5月時点)です。

 支払いが終わると受付番号が割り振られるので、その番号を持って米国大使館・領事館での面接を受ける必要があります。面接ができる会場は、東京・大阪/神戸・札幌・福岡・沖縄の5箇所です。

 ちなみに面接日の変更は面接日の2営業日前まで可能で、変更自体は5回までできます。私たちの時は、残念ながらコロナ禍ということもあり、大使館側の決めで5ヶ月ほど延期が続きました…今はスムーズに予約ができると聞いています。

 また面接時に必要な書類は以下の5種類です。

1.有効期限内のパスポート原本
2.過去10年間に発行されたすべてのパスポート原本
3.DS-160の確認ページのプリント
4.面接予約確認ページのプリント
5.   そのほか関連書類

 関連書類ですが、私たちは支社の立ち上げということで、東京本社CEOからその命を受けた証拠となるレター(と書くと大袈裟ですが、要は紙に渡米の概要について一筆書いてもらったという粒度のもの)、東京本社にて雇用されているという証明(過去の給与明細・雇用契約書)を持っていきました。これらの書類を大使館のスタッフの方が精査したかは正直わからないのですが、面接では「どのような目的で入国の必要があるか」、また「移住の意思がないこと」をうまく英語で説明できる必要があります。それらのストーリーを証明できる書類は持っていきましょう。

おまけ: Bビザ申請を士業の方に依頼するべきか

ちなみに、先ほど「最大で10年の有効期限が付与されるにもかかわらず、私たちに許された有効期限は、10年ではなく1年だった」と書いたのですが…。実は大使館にて面接官より、「現状実態として支社の存在がないので、長い期間を与えることは難しい。ビザは降りるけど、期間は1年になります」とその場で期限について伝えられました。

 またBビザは性質としてテンポラリーな扱いを受けるビザなので、10年間頻繁に出入りをしているとどのみち入国拒否のリスクがあるのですが、後から調べると、この1年という短い期限設定はあまり頻繁に起こるものでもないそう。今思うと、弁護士さんや行政書士さんと相談し、対策的なことをしていれば、この有効期限を短く設定されるという事象も起こらなかったのかも?と思います。申請プロセスがシンプルだったので検討もしなかったのですが、コストが気にならなければ、一度士業の方に相談をするのも良いかもしれないです。結果としては、私たちはBビザで6ヶ月滞在した後、スムーズにOビザの承認が降りたので、この1年という期限設定が障害になることはなかったですが、もし長期滞在のための就労ビザの取得が難しいと感じられている方や過去にESTA付与に問題があった方などは、できるだけBビザの期間を長めに持っておくに越したことはないと思います。

後半パート「雇用・Oビザ編」に続く

今日はここまでです!私たち自身は渡米タイミングがコロナ禍ということで手続き関連は停滞感を味わったほか、バイデン政権になった直後でポリシーに変化もあったので、少しビザ関連は慎重になっていた部分もありました。結論、会社のセットアップに時間をかけたかった、またアメリカ市場をまずは模索してみたかった私たちにとって、Bビザというスタートは最適だったと思っています。特に仕事柄アメリカ以外の国で撮影がある可能性なども大きかったので、何度も出入りができるステータスが必要不可欠でした。

 一方で多くの方にとってビザ関連で知りたい情報といえば、Bビザの期限が切れた後の就労可能ビザ・長期滞在ビザだと思うので、そちらの体験談は別記事「#7 ニューヨークで会社をつくる(2) 【雇用・O-1ビザ編】」にてご紹介したいと思います。

 それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 良い一週間をお過ごしください!


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