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想像する楽しさ モノクロ手焼きプリント #15

フィルムで写真を撮る上での楽しみの中に、「仕上がりを想像する」というものがあると思う。
現在の主流であるミラーレスカメラでは、ファインダーには露出や色味など全て適応された状態で表示される。要は仕上がった絵を見ながら撮影が出来るということだ。もしくは、プレビューを押せばすぐに撮った写真を確認することも出来る。撮り直しをするかどうかの判断もすぐに出来るし、結果が良ければテンションが上がる。

しかし、フィルムで写真を撮る場合はそうはいかず、撮っている時もどう写るかはわからないし、撮った後すぐに確認することも出来ない。それに加えて、私の使うライカに関しては一眼レフと違って構図も厳密にはわからない。本当に現像してからのお楽しみ、というカメラだ。

最初の頃はこのわからない事へのドキドキが楽しいのだが、撮影・現像・プリントに慣れてくると、撮影する時に仕上がりの想像が出来るようになってくる。
そしてこの「こう撮ればきっとこう写る」と想像するのが楽しいのだ。

今回の写真は、昨年の梅雨の時期に紫陽花を撮ったもの。
紫陽花に綺麗に木漏れ日が当たっていたのでカメラを向けた。背景は少し離れた距離に木漏れ日に反射する植物たち。レンズの絞りを開けて撮ればきっと綺麗な背景になるだろうと想像する。露出計を確認し、絞りを開ける為にNDフィルターを使って調整をする。レンジファインダーは近距離だとパララックスが発生する為に少しだけ位置をずらす。そして二重像でピントを合わせ、シャッターを切る。

撮っている時に見える景色はカラーだし、背景もただの草花でボケずにしっかりと見えている。そのままの景色にブライトフレームと二重像窓があるだけだ。だが、それを見ながら想像をする楽しみがある。

そして家に帰って現像した時に、想像通りになっているか、想像よりもつまらないか、もしくは想像以上に良くなっているか、それが初めてわかる。
今回の写真はNOKTON 50mm F1.1で撮ったのだが、大口径レンズによるボケの美しさは想像以上だった。アウトフォーカス部分の葉のボケ方なんかは美しいと思うし、背景の玉ボケが(形は綺麗とは言えないかもしれないが)こんなに出ているとは思わなかったので想像以上の仕上がりだった。

撮影する時にファインダーにこの景色が写っていたらそれはそれで感動するだろう。私はミラーレスで撮影もするので、その感動もわかっている。
だがフィルムならではの、すぐにはわからない、仕上がりを想像する楽しさには全く違う良さがある。
ミラーレスのようにすぐに結果がわかるというのは現代らしいとも思うが、想像を働かせながら何かをするというのはいつもよりもテンポをゆっくりに変えられる。こういった時間があるのが人生にとっていいのだなと気がつく最近。


camera : LEICA M2
lens : Voigtlander NOKTON 50mm F1.1
film : MARIX400
paper : Ilford MGRC

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貴田倫大
フィルム写真の文化の一助になるよう活動を続けたいと思います。フィルムや印画紙、薬品の購入などに使わせて頂きたいと思うので、応援の程よろしくお願い致します!