地域と消費者を繋ぐ流れ:持続可能な地方創生のアプローチ
2022年、ファッション業界から地方創生へとシフトした私は、セレクトショップの軒先から青山ファーマーズマーケットでの出店を果たすことになります。
「地方と都市を繋ぐ、新たな挑戦の始まり」
2022年が始まる頃、H BEAUTY&YOUTHでのマルシェが終了しマンゴー農園の代表だった岡田さんにお礼の連絡をしました。ところが、なんと岡田さん、マンゴー農園を退社するっていう報告が…。岡田さんは、任された立場で農園を運営してたんですが、会長との方向性の違いから辞めることにしたそうです。もともと大阪出身で、沖縄に単身赴任してたんですけど、これを機に大阪に戻ることになったんです。一旦は…。
でも、その電話の中で、岡田さんが「国頭村を盛り上げたい」という熱い思いを話してくれたのを覚えていて、なんとか再び一緒に何かできないかと、電話を切った後もずっと考えていました。
そんな中、沖縄の果物が収穫期を迎える直前の2022年5月か6月頃に、あるご縁をきっかけに青山ファーマーズマーケットへの出店が決まりました。すぐに岡田さんに連絡して報告したところ、勢いそのままに現地の農家さんに交渉してくれて、2件の農家さんが参加してくれることに。
参加してくれる農家さんがやり甲斐を感じてもらえるよう、「JAより高く仕入れる」という、私たちの方針は、ここで生まれ、これが地方創生の基礎となるルールが生まれた瞬間でした。
青山ファーマーズマーケットは、東京・国連大学前で毎週末に開かれる、都市型マルシェの先駆け的存在で、認知度もブランド力も高い。都市と農家を繋ぐこの場所で、私たちもいよいよ沖縄の果樹を並べることに。出品したのは、沖縄を代表するマンゴーと、パイナップルの王様と呼ばれる「ゴールドバレル」の2品目です。記念すべき初出店は7月に実現しました。
実は、岡田さんはこの時、無職(笑)だったのですが、それにも関わらず毎週大阪から青山に来て、私と一緒に販売してくれたんです。毎週ですよ、ほんとに。
右も左も分からない僕たちに、何年も出店しているベテランの方々が接客のコツを教えてくれて、東京のど真ん中で感じたのは、普通の生活では味わえない温かい人間関係がここにあるってことでした。
初出店は、在庫が残るのが怖くて少量で挑戦したんですが、予想をはるかに超えて瞬く間に完売!「これはいける!」と確信した僕たちは、その後少しずつ発注数を増やしていきました。
「ファーマーズマーケットで得た縁が導く新たな挑戦と成長」
7月の後半、東京は異常な暑さに見舞われ、私たちも果物もぐったり。熱中症アラートが出るたびにお客さんの数がどんどん減っていって、ついには商品が残り、在庫を抱える事態に…。岡田さんがマンゴー農園で社長をしていた頃のワーホリメンバーや、私の仲間が集まって販売を手伝ってくれたけど、お客さんがいないとどうにもならない…。
そんな時、ふと「かき氷とかできないかなぁ?」と話していたら、岡田さんの縁でかき氷協会会長の小池さんと会うことに!青山ファーマーズマーケットでお会いして、その勢いで「私たちの果物を使って、かき氷を作ってほしい!」とお願いしちゃいました(笑)。
次の日、岡田さんと一緒に小池さんのお店に突撃し、しつこく交渉。すると、快く了承してくれて、ファーマーズの運営にも相談して、無事にコラボが実現しました!猛暑の中、私たちのマンゴーやパイナップルを使ったかき氷が大好評。おかげで在庫も調整できて、一石二鳥どころか三鳥くらいの成果でした。
今では、小池さんとはさらに親しくなり、いろんなプロジェクトでコラボをしています。現在、小池さんは八重洲ミッドタウンの「かき氷コレクション・バトン」の運営も手掛けていて、常に行列ができる人気店になっています。
それでも、果物が残ってしまう日はありました。その日に売り切らないと鮮度が落ちるので焦ります。そんな時、岡田さんが**「ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ」**の土屋さんに電話をかけたんです。そしたら、土屋さんが「ファーマーズマーケットが終わったら、うちのお店の軒先で売ればいいよ。それでも残ったら僕が買い取るから」と、なんともありがたい提案をしてくれました。
こうして、収穫期が終わる8月中旬までは、ファーマーズマーケットが終わった後、テオブロマのお店で果物を完売させるのが定番になりました。2022年の夏は、汗だくになりながら、販売メンバーと締めのビールがご褒美でした。
こうして約1.5ヶ月の間、沖縄の果樹の出荷期間、毎週販売を続けました。無職状態だった岡田さんも(笑)。
いつまでもこのままではいられないと考え、販売が終わるたびに今後のことを話し合いました。そして、沖縄県国頭村で地域プロジェクトマネージャーを募集しているという情報を村民の方から聞き、岡田さんはすぐに申請。見事に採用され、地域プロジェクトマネージャーとして新たなキャリアをスタートさせました。
私は引き続き、着実に顧客さんも増えた青山ファーマーズマーケットでの販売を続け、都市と地方を繋ぐ役割を担っています。こうして、私たちは地方創生の本格的なフィールドに踏み出し、沖縄県のやんばる地域にある「国頭村」のそれぞれの役割をしっかり果たしていくことになります。
「短期イベントの限界と、地域産品の価値を広げる長期的視点の必要性」
行政の仕事って、どうしても「打ち上げ花火」のような1回限りのイベントを好む傾向がありますよ。もちろん、そうじゃない自治体もあると思いますが。たとえば、百貨店での1週間のイベントなんかが典型例です。イベント期間中にどれだけ人を動員して、どれだけ売上があったか――こういったKPIが綺麗に報告できるからこそ、評価されやすいんです。さらに、有名な商業施設や企業が絡めば、その効果は倍増します。
もちろん、こういったイベントが全く無駄だと言うつもりはありません。短期間で大きな注目を集められる「打ち上げ花火」的なイベントは、強力なブースト効果がありますから。
でも、一度冷静に考えてみてください。生鮮食品や果樹、水産物を扱う一次産業従事者にとって、収穫期は数ヶ月にわたる長期間です。そんな中で、私たちが本当に大事だと思っているのは、定期的かつ継続的な販売です。つまり、ただ一時的に売上を上げるだけではなく、その地域の産品の価値をじっくり伝えながら、消費者との長い関係を築いていくことが重要なんです。
こうした取り組みは、地域の産品が地域そのものを伝える手段になり、認知が広がり、やがてファンが生まれる――そんなポジティブなサイクルを生み出します。実際、このような活動の中で出会った方々が、将来、強力なパートナーになってくれることも少なくありません。私たちは、その地道なプロセスこそが、本当に大切な要素です。
10月12日(土)、13日(日)も青山ファーマーズマーケットに出店します。
お時間がありましたらぜひ、お立ち寄りください。
国頭村の産品が並んでいます。