紙加工業界のDXってどんなことだ
DX、デジタルトランスフォーメーションが巷で目にするようになり早数年。たいていこういったシステム用語は用語だけが先行し、中身が理解されていないケースが多いのですが最近になってようやく少しずつ中身を伴ったDXが実現されてきているのではないでしょうか。
私自身この業界に入る前はIT業界に身を置いていました。大学卒業後、都内の中小IT企業に入り営業をやっていた経験があります。もともと親がデジタルを積極的に取り入れるタイプの人間だったので、コンピュータ自体には小学校高学年くらいから触ってきていました。私の中学・高校・大学時代はまさにモバイル化・IT化が急速に進む時代で、その進化を肌で体感してきた世代でもあります。
IT革命、スマートフォン革命、クラウド化などに続くDXというワード。今回の記事ではDXについてのおさらい、印刷加工業界におけるDXとは何かという点をテーマにして備忘録的意味も込めて綴ってみたいと思います。
DX(Digital Transformation)の定義
DXについて、経済産業省のガイドラインがあり、そこでは以下のようにDXを定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
ここでのポイントは「業務そのもの」だけでなく、「組織、プロセス、企業文化、風土」が含まれている点です。
DXって結局IT化じゃないの?という理解を持っている方も多いと思いますが、IT化はアナログでやっていた業務のデジタル化、つまり手法をデジタル化して効率化やデータ蓄積・活用していきましょうという意味合いの強いもので、DXの一部としてIT化もあるようなイメージです。
DXでは業務ではなく、ビジネスモデルやサービスそのものをデジタル技術で変化させていきましょうということなので、単なるIT化よりも高度で複雑なデジタル化のことを意味します。
個人的には今まで「IT化」と呼んできた各種のデジタル改革を、より細分化して定義した言葉のようにも感じますね。ただ自社内だけでなく、顧客サービスまでをも巻き込んで改善していくという点が少し新鮮です。
DX推進の背景
DX推進が叫ばれる背景には「2025年の崖」と呼ばれるレガシーシステムの老朽化リスクがあります。
ほとんどの企業はすでに何かしらのシステムを導入し、それに沿った形で業務を遂行していますが、その基幹システムの老朽化が進んできているため、サイバー攻撃リスクの高まりやIT人材の枯渇によるシステムリプレイスの遅延等々様々な弊害が2025年ごろ一挙に現れるのではないかと言われているのです。
DXをうまく進めることで、これらの諸問題を取り除くことはもちろん、ビジネスに更なる革新が生まれ、企業の競争力の向上やマクロ的にはGDPを押し上げることが期待されています。
DX事例「日立製作所」
さて、ここまでDXについて記載してきましたが、その本質を理解するには事例を見るのが一番早いでしょう。経産省と東京証券取引所が選定するDX銘柄の中で、DXグランプリ2021に選ばれたのが日立製作所です。
詳しくはこちらのリンク先を見てもらえればと思いますが、ベストプラクティスをLumadaソリューションとして展開したり、工場をIoT技術等の駆使によって全体最適化したり、故障予兆検知等を通じて顧客へのアフターサービス高度化を実現したりと、様々な取り組みをしています。
単純にサーバに載せたシステムやクラウドサービスで作業効率を高めたといったことではなく、経営・ビジネス改革として様々なデジタル技術を活用し、顧客サービスの向上に直結させているところがDX事例として評価されているということです。
印刷加工業におけるDXとは
では、印刷関連業におけるDXの余地はあるのでしょうか。私は大いにあると考えています。印刷関連業界は古くからある業界で、業界構造自体が老朽化しています。斜陽産業とも称される長い右肩下がりの景況により、設備更新を含めDXどころかIT化もままならない企業が多いのが実情です。
一方で印刷業界はデータを扱う関係上、デジタルとの親和性が意外に高いと言えます。顧客とのやり取りの中でデータをやり取りすることが多いので、そういったやり取りの利便性をクラウドサービスやRPAを用いて高めたり、日立のように加工設備にIoT技術を取り入れて未然に故障等を防いだり、デザインの打合せをリモートで出来るようにしたりといったことが考えられますね。
印刷業におけるDXで思い浮かぶのは、最近多い自分でオリジナルアルバムを作れるサ-ビスや年賀状作成サービスなどではないでしょうか。あれもWeb上で顧客のみで完結できるようにしたことで新しい需要を産み出した好例だと思います。印刷業界において数少ない、伸びている事業の1つでもあります。
東京紙器のDX方針
弊社のビジネスは各種webサイトから受けた問い合わせをメール中心にやり取りするケースが多いですが、よりお客様の利便性を上げられる余地があると考えています。コミュニケーションの利便性向上、デザイン工程からの請負、納期や請求情報確認の簡便化、etc。
印刷加工業はある種サービス産業となっていくと仮定し、その変革の中でビジネスプロセスを含めた弊社独自のDXを推進・展開していきたいと思っています。
「みんなの工場」として一気通貫型のサービスへ
印刷業界は中間業者が非常に多いため、一気通貫型のビジネス展開をしている業者が意外に少なく、お客様も問い合わせ先に苦労していることが多いのが実情です。弊社は上流から下流工程までを一気通貫で済ませられるように、各取引先との連携やDXを始めとした社内体制の整備を進めてまいります。
紙の加工については何でも問い合わせられる「みんなの工場」を目指し、チャレンジを続けてまいります。
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