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In Rostock. 表現する理由.
まず初めに
ドイツの北端、バルト海沿いにある街、ロストック。
僕がどのような思いで今回の制作滞在に臨んだか、
自分の頭を整理する意味も含めて、
いつもサポートしてくれてる皆さんにもシェアできたらと思います。
旅立つ前、今回のドイツへの旅が自分にとってどんな意味を持つのだろうかと考えていました。
ずっと行きたかった場所。
勝手に向こうから呼ばれていると感じていた場所。
ドイツくん一体僕に何を見せようとしているんだい。
と問いかけていました。
そんな時にふわっと頭の中に聞こえてきたのが『自分の影との和解』だよ。でした。
ええ、ええ、わかります。なんのこっちゃでしょう。
自分の影との和解。
その聞こえた声に自分なりの解釈を与える時間が必要でした。
あれこれ咀嚼していく中で、
これは陰陽で言う陰の部分だな。
誰にも見せたことがない部分だな。
見せるのは恥ずかしいとすら思い込んでいる部分だな。
だけど自分を一番解放できる状態のことだな。
そう思いました。
僕が人間として、
人前に立つ自分と、一人きりでいる自分。
その精神的なバランスを保つために行なっていること。
ここでの影の部分とは一人きりでいる自分のこと。
そしてそれは何かというと、
一人で部屋に籠って、まっ裸になり、
意識が促すままに体を動かして、一見すると変態的な動きを続ける。
僕にとっての踊りです。
社会を生きる人間的な思考を捨て去って
本能のままに体を解き放ち動物になれる状態です。
そんな誰にも見せていない自分にとっての影の部分を
絵を描いて発表するという外に向けられた陽の部分と融合したいんだ。
そう思いました。
表に立つとどうしても外向きの仮面を被った自分が強く作用してしまう。
なんか好かれようとしちゃう。
それも偽りではないのだけれど、
それだけではない自分がいることもわかっているからしんどくなる。
シンプルに人といることがしんどくなるんです。
絵を描くこともしんどくなる。
そんな自分を変えたかった。
人が好きなのに
人といるとしんどくなるって
嫌やん。
絵を描くことが楽しくて始めたのに
それが億劫になるって
嫌やん。
だからこれは、背負っている荷物を下ろして、
また一つ軽くなるため、
人ととしての器を広げるための訓練。でした。
より自由に軽やかに優しく思いやりを持って
人と交わっていける自分になるための試練。
そんな感じでした。
僕のアート、表現にはいつも
自己治癒、セルフヒーリング。自己セラピーの要素が含まれているんです。
ある種とてつもなく自己満足の世界ですが
”自己を満足させられない”ことと
”大切な人たちを安心させる”ことは共存できないというのも
僕の利己的な考えに含まれてしまっているのです。
またヒーリングやセラピーというと
まるでとてつもなく病んでいる人間のように聞こえるかもしれないけど、
そういうわけでもなく。
でもそういうわけでもある。
人はそれぞれ、その人にしかわからない人生の旅があって
その中で自分自身で気づいて癒していくしかない自分自身がいると
僕はなんとなくそう思って生きているので
これは多かれ少なかれ、大なり小なり、
誰しが持っている物なんじゃないかなというのも持論です。
ましてやこんなにも混沌とした現代社会を生きているんですもの
そんな病んでいる側面があるのも当然なような気もします。
また一つ自分自身の心が軽くなるため。
それはまるで玉ねぎの皮を一枚一枚向いていくため。
もしくは生きていく中で張り付いたメッキをポロポロと剥がしていくため。
その挑戦の場として、ドイツから来いよ来いよと言われていたんです。
僕の記憶を辿るとおそらく8年ぐらい。
8年ぐらいはずっとドイツドイツドイツって頭の片隅にドイツが潜んでいました。
そして時は満ちた。
って感じです。
結論から言いましょう。
真剣(マジ)に、大成功。
よくやった自分。と褒めてあげたい。
というか、帰国後お風呂で体撫で回しながら褒めました。
現地での実感
実際に見知らぬその土地に足を踏み入れてみて、
なぜいまドイツだったのかその答えが
自分の中に納得として浸透していくのを感じました。
全てのことに意味はあるのだなと。
まず今回の制作場所であるロストックに入る前に
8日間前のりをしてベルリンに滞在しました。
ちなみにベルリンからロストックは電車に乗って約2時間半、
距離にして約230kmといった具合です。
ベルリンに滞在した理由は、
それこそずっと行きたかったからと、
いざロストックに入るとすぐに14日間制作に向き合う期間が訪れるので
その前に未開の地でのエネルギーを感じ、吸収したかったからです。
ベルリン-Berlin
まず、11月のベルリンはとても暗かった。
朝から晩までずっと曇ってる。
日の出も遅く朝8時頃で、日の入りは早く15時にはもう暗い。
8日間で太陽を拝めたのは一瞬だけ陽が差した15分ほど。
(僕はその瞬間ストリートで立ち止まって、電柱に寄りかかり、貴重な太陽の光を今しかねぇとばかりに浴びました。)
冬場はこんな感じの天気が半年ぐらいずっと続くそうで
皆んなビタミン剤のサプリは欠かせないと言ってました。
そして当たり前ですが夜が長い。
それは言い換えると、
月と過ごす時間が長い街。
Moonyな街。なんです。
ね、影と向き合うと決めた自分にとって
こんなにも最高な環境はないでしょう?
この時期にこの考えを抱いた自分がこのタイミングで
ベルリンに来たことに深い意味を感じざるを得なかった。
たった8日間の滞在の中で
こんなにも不思議なことが起こるのかというほどに
素敵な縁と、自分を試し磨く機会に恵まれました。
これまた詳しく書き記すにはとてつもなく長く
また赤裸々になりそうなので
ここは少し割愛させてください。
また別の記事で気が向いたら書きます。
それかポッドキャストかなんか始めたらそこで話します。
なんせ、そこで出会った人々、
見た景色、行ったクラブ、訪れたカフェ、食事、
コミュニティ、ギャラリー、美術館、深夜の川沿い、コンサート、
今のところ全てがドンピシャでした。
もちろん住んでみないとわからないこともたくさんあるので
今度は夏に長期滞在しに行こうと思います。
(夏は逆に夜22時ぐらいまで明るいみたいなので全く別の顔を見せてくれそうで楽しみです)
ロストック-Rostock
ベルリンからロストックに向かう電車の中で
それまでのずっと曇っていた空が嘘かのように
北に進むたびに広がっていく青空にワクワクを感じました。
やっぱ太陽好き。
そう、海沿いの街ロストックは太陽が迎えてくれたんです。
完全に僕のロストックへの印象は青になりました。
久しぶりの青空に無茶苦茶幸せ感じました。
幸先いいわ〜。
気合いが入りすぎていたのか
宿泊先のチェックイン時刻より6時間も早く到着してしまいました。
その間近くの公園で立ち止まりこれまた太陽を浴びながら体を動かしていました。
とてつもなく良い時間でした。
元々墓地であったという大きな公園はきれいな背の高い木々が立ち並び
その間から指す木漏れ日がなんとも心地よく、
つい踊らずにはいられませんでした。
僕が大好きな踊りながら瞑想。それをするのにうってつけの場所。
これをやってるとあっという間に1時間ぐらい過ぎるので時間を潰すのにおすすめです。
とは言っても集合時間までまだ5時間ぐらいあるので
どこかのカフェで時間を潰そうと街の方へ移動しました。
気を使わずに長時間居座れそうなカフェが見つけられなかったので
冬のこの時期には店内がガラガラでここは長居しても大丈夫そうだ。と、
発見したのがフローズンヨーグルトのお店。
自分でトッピングを選べるタイプで、
トッピングの種類も30種類以上はある。
ファミリー向けの店内は広くてカラフルで可愛い。
ペット連れのお客さんもいてほっこり。
無茶苦茶寒かったので気は進まなかったけれど
頼んだフローズンヨーグルト。
トッピングはザクロとスライスアーモンドにしました。
これが目ん玉飛び出るほど美味しくてマジで寒さ忘れて幸せ感じました。
我ながらトッピングのチョイスが絶妙でなんせ最高でした。
ちなみにこれにハマって滞在中3回行きました。笑
4回目行こうと思ったらクリスマスシーズン突入でお店閉まってて、
結構ショック受けました。次行ったらまた行きたい。冬でも行きたい。
そんなこんなしていたら僕が早く着きすぎた情報を聞きつけた現地スタッフのAnnがお店まで迎えに来てくれました。
ここでAnnと初対面。滞在中本当に本当にお世話になったAnn。
彼女自身素晴らしいアーティストで彼女の持つ工房にも何度かお邪魔しました。
ジュエリー作家で、気が遠くなるほど繊細で精巧な作品を作る。
僕には到底真似できない職人技と目を持った人。
それでいていつでも親身で優しくて信頼がおける人。
出会えてよかったと心から思います。ありがとうAnn。
そんなAnnの計らいでチェックイン時間よりも先に滞在先に入ることができたのでひとまず安心。ありがとうAnn。
さてここから14日間のロストック滞在、制作がいよいよ始まります。
アトリエ空間ー結果ではなくプロセス
出発前、限られた制作期間で作品を完成させるために
日本から何か下書きをして持っていこうかとも考えたのですが
やはりそれだとせっかくドイツに行く意味が見出せない。
何も準備せずにいくのは怖さもあるんだけど、
現地で感じたことをなんの脚色もなくそのまま放出したい。
そう思いました。
そして自分の影の部分にスポットを当てて、
そちらの側面を制作過程に融合したい。
なんて考えながら初めてドイツチームが用意してくれた
制作場所であるアトリエに足を踏み入れた時、
これまた心が躍りました。
この場所大好き。完璧。まじ最高。まじありがとう。
それが最初に感じたアトリエへの印象でした。
高い天井には大きな天窓が付いていて
昼間は自然光がたっぷりと降り注ぐ。
何枚も敷き占められたペルシャ風絨毯に
夜は暖かいオレンジの光を与えてくれる、
一つとして同じ形ではない数々のランプに間接照明。
元々代々続くブッチャー(肉の解体屋)ショップを改装して作られた
決して近代的でないレトロな空間。
この場所を新たなアートコミュニティとして活性化していこうと
現地の若者アート集団が作り上げたその空間は、
完全に僕の心を撃ち抜きました。溢れるらぶ。
そんな素晴らしい場所の最初のビックプロジェクトとして
今回僕たちが使わせていただけることになり
感謝と感激でもうこの時点で既にロストックラブが止まりませんでした。
その開放的な空間で過ごす自分を想像した時に、
よしキャンバスの上で毎日絵の具にまみれて踊ろう。
体を解放して全身を筆と化して、
ただ右脳全開で感覚に従い、
動きたいがままに動いた先に広がる絵の具の感覚を楽しもう。
何ができるか、何を作りたいかを一旦横に置いて
出来上がったものが正解。それでいこう。そう決めました。
実際の制作過程
作っていく中で少しづつ確立して行った僕のスタイル。
まず朝いちばんで一人アトリエに行き
朝の光を浴びながらキャンバスに絵の具を垂らし、ストレッチ感覚で踊る。
昼間は街へ出てとにかく歩きまくる。
気になるお店に入ったり、
バルト海沿いまでバスに乗って出向き、
ローカルの自然を堪能したり、
美術館やギャラリーに行ったり、
気さくでスイートな古着屋の店員さんとずーっと喋ったり。
その街の雰囲気を肌で感じる。
現地の人と触れ合う。
とにかくエネルギーを吸収する。
そして夜またアトリエに戻って今度はその日一日歩き回りながら
聞いていた音楽をスピーカーから流して
蓄えたエネルギーを放出するようにまたキャンバスの上で踊る。
展示の準備や発表の日を除いて実質10日間、
毎日朝と夜、筆と化した自分の体が踊り狂う。
ただそれを繰り返しました。色のレイヤーは幾重にもなりました。
今までこんな作り方、表現をしたことがなかったけれど、
こんなにも気持ちいのかと驚くほどに、今の自分にピタリとフィットしました。とにかく気持ちよかった。
ロストック滞在中一番感じたのは
自分という存在への居心地の良さでした。
言葉ではうまく言い表せない、
言葉にはならない微笑みが勝手に漏れ続ける。
自分が好きとか愛してるとかそういうの越えて、
ただ居心地がいい。
奥の方で何かがじゅわっと溶けて
ぐるぐるっと融合して、ふわっと溢れてくる感じ。
わけわからんよね。笑
今まで感じたことのない感覚。
きっとこれは自分にしか理解できないかもしれないけれど
(むしろ自分でも理解はできていないのかもしれないけれど)
今はそれでもいい。それでいいんだぁ〜。って思いました。
オープニングパフォーマンス
そんな僕の制作過程を見たドイツスタッフから
展示のオープニングパーティーでパフォーマンスをしないかと提案をいただきました。
うわぁついに人前でやってしまうのか。ちょっと不安もあるな。
でも訪れた機会は受け入れて進もう。
きっとこの場所だから、初めて試すのにパーフェクトな機会なんだ。
そう思いました。
上半身裸で
マスクをかぶって視界を無くして
下半身はスーツパンツを履いて
一見とても変態的だし。
自分の意図は何も伝えずに観客の前で行うには
正直勇気が必要でした。
でも、アートと人の距離が密接なドイツで出会った人たちの
寛容で真剣な眼差しの前では
そんなことを気にも留めずにやれるだろうな。
自分が表現したいことを
奥の方まで勝手に掬い上げて感じ取ってくれる。そんな気がしました。
そして当日。
予想を遥かに超える人が会場に集まっていました。
滞在中に仲良くなった現地の友人もわざわざ足を運んでくれました。
緊張してる?楽しみにしてるよ
って笑顔で声かけてくれて
緊張よりもむしろ大丈夫だなって安心しました。
ただただこの10日間毎日やっていたことを
たくさんの人の前でやるだけ。
見られているからといって変にカッコつけたり魅せようとせずに
自分の感覚に従って体を解放するだけ。
俺の部屋の中を大勢の人がただ覗きにきただけ。
そんなことを自分に言ってた気がします。
実際のパフォーマンス中はマスクをかぶるので
何も見えないから、より体の感覚に忠実になれる。
最後に使う色は、最初にロストックに来た時に感じた色。青。
青をキャンバスに落として
あとはその上に立って楽しむ。
不思議だったのは全く目の前が見えないのに
やはりあれだけの人に囲まれると
そのエネルギーは肌感としてひしひしと伝わること。
一人きりで踊るのとは全然違う。
踊っている最中のことは何も覚えていないけれど(完全にトランス状態)
その時の肌で感じた振動だけはすごく覚えてる。
終わってマスク取った瞬間、
ここどこ?状態。
でもこれまた気持ちよかった。
しばらく放心状態だったけどとにかく気持ちよかった。
そのあといただいたたくさんのフィードバックに
勇気がもらえた。
やってよかった。心からそう思った。
最後に
自分にとって初めての挑戦で埋め尽くされたドイツ滞在。
この場所だから、
自分のことを何も知らない人たちの前だから、
そして如何なる表現もジャッジせずに真剣に受け止めてくれる人たちの前だから、
どんな自分も出せたと思います。
このような機会を与えてくれたドイツチームの皆さんにはもちろんのこと、
京都チームのJARFOスタッフの皆さんにも心から感謝します。
約20年という時間をドイツと日本のアート交流に尽力し、
現地チームと信頼関係を築き上げてきたからこそ、
アーティストが安心して表現できる環境が整っているのだと実感しました。
人の温かみ、アート交流の意義を存分に感じることのできた滞在でした。
本当にありがとうございました。
自分の影との和解。
大成功。