人生初の稲荷寿司は太かった
グルメな夫は寿司が好きである。稲荷寿司も大好きである。しかし、自分でつくるのは初めてだ。以前、ご飯に酢を入れる、というのがメンタルブロックだと言っていたが、さもありなん。インドネシアの酢は椰子砂糖を発酵させてつくる強烈に酸っぱい酢で、米から作る酢ではない。そもそも酢という調味料のイメージが悪い。インドネシアで酢を使った料理はほとんどなく、野菜の酢漬けが薬味として添えられるくらいである。それを考えると、夫が酢飯をつくるのは画期的なことだ。来日29年目にしてやっと酢飯をつくる・・・酢という調味料を受け入れるのにかくも長い月日が必要だったわけである。
稲荷寿司をつくるときにご飯をめいっぱい詰めたのは笑える。夫の頭の中では、おいしい食べ物のイメージはgemuk(太っている)であってkurus(瘦せ細っている)ではない。夫が好む麺は太いうどんであって極細そうめんではない。だからお寿司もgemukでなくてはならなかったのだろう。
バナナもグムッなのがおいしい。ピサン・ラジャ(pisang raja王のバナナ)という種類のバナナはいちばんグムッでおいしい。日本でいちばん普通に食べられているバナナはピサン・アンボン(pisang ambonアンボンのバナナ)と呼ばれ、ほっそりしていてピサン・ラジャより安価である。私が生食用バナナで好きなのは、ピサン・スス(pisang susuミルクのようなバナナ)という種類だ。小さくて皮をむくと身が白い。これも小さいながらグムッで、ほっそりはしていない。皮が薄くて、丸々とした身がはちきれんばかりだ。
どうやら、わたしのおいしいバナナのイメージもグムッである。
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