ことば
はなしたことばを、楽譜みたいに並べてみられるとしたら、たぶん、わたしのそれには休符が多い。
ほかのひとの楽譜とくらべたときに、そのリズムが似てるひとがいたり、音程が似ていたり、伸ばし方が似ていたりするひとがいるみたいに、最近ときどき、休符の数とか場所が似ているひとに会ったりする。
そっか、ことばにしないでいることが、似てるんだな。話さないことが似てるって、心地いいな。
話すことばの量と、受け取り切れることばの量は、同じくらいなのかも。
わたしは相手が受け取りきれないことばを、話しすぎていないだろうか。わたしは受け取りきれないことばを、むりやり受け取ってないだろうか。
処理しきれないそれが、こころの隅にかたまって、ずんずん重さを増していく。
ずっとゆっくり話せていたらいいのにな。
ずっとゆっくり話を聞けたらいいのにな。
だけどときどき興奮して八分音符が並んだり、ぼーっとした気持ちでメロディのまんなかにフェルマータが付いてたり、うまくはなせなくてスタッカートが続いたりする。休符がずっとずっと続いたりする。ときどき息が続かない。
話してヘマするより、話さない方が楽だ。阿保だと思われてた方が、いざというとき詮索されなくて楽だ。ほんとうを話して、ほんとうで嫌われたら、どうしたらいいのかな。
ことばを選ぶとき、綱渡りをしている気持ちになる。すこしでも選びまちがえて、相手を不愉快にさせてはいけないと思うから。フル装備で山に登る気持ちになる。なのに今日まちがえたかもしれない。崖から落ちた。かもしれない。
楽譜は似てるけどキーがちがうな。
と思ったひととはうまく話せなくなってしまいました。
ハモるように、お話がしたいです。
でもハモろうとしたのにつられちゃって、くすくす笑い合ったりも、したいです。
記憶、こころの一句。
「闇の夜に 探った君のぬくもりに 少し冷たいことばの端に」