しわす
すきなことと、やりたいことがある。
それをして誰かより優れることが目的ではなくて、それをして自分がすこしたのしかったり落ちついたりうれしかったりするために、それをしたい。
そういう気持ちでずっといたい。
あわよくば、それに触れたほかの誰かも同じ気持ちになってくれたら、そんなに嬉しいことはない。
なのにどうもうまくできなくて、理由もうまく言葉にもできずにいた。躓いたのは小石だったかもしれないし、岩レベルの、ていうか岩だったかもしれないけど、とにかく転んだままでいる。
転んだまま、日々をコロコロ進んで、転がりながらいまのじぶんにできることだけをして過ごす。
自分にはどうにもできないことが、どうにもできないのに、たしかにわたしの前に壁として立ちはだかった。
壁はヒトのカタチをしていて、怒ったり泣いたり、やさしく笑ったりするので、わたしもその壁の前で笑ったり、泣いたり、ときどき無視したりした。
わたしにどうにもできないと言うことは、そもそもわたしの課題じゃないのだから、本当の本当は壁なんかですらないはずなのに、あくまで壁として向き合うわたし自身にやっと疑問を抱く。
そんな壁との間を近づいたり離れたり、コロコロコロコロ転がって、なんとか誤魔化しながら冬になった。
猫がわたしで暖をとる。
わたしも猫で暖をとる。
自分のためにミルクティーを淹れる。
猫のためにマフラーを編む。
湯たんぽを抱える。
冬の歌を歌う。
忘れてしまわないように
今日はおでんが美味しかったこと
忘れてしまわないように
猫が鼻をペロってしてくれたこと
忘れてしまわないように
コーヒーを上手に淹れられたこと
忘れてしまわないように
他愛もない話で盛り上がったこと
忘れてしまわないように
たのしく絵を描けていること
忘れてしまわないように
いまはいまでパーフェクトなこと
あとチェンソーマンめっちゃおもしろいこと
記憶、こころの一句
「コウモリときっとイルカのそれくらい
何言ってるか分からなかった」
師走一日