『大魔神怒る』(1966年8月13日・大映京都・三隅研次、特撮監督・黒田義之)デジタル4K修復版 妖怪・特撮映画祭で上映
五反田イマジカ第1試写室で、妖怪・特撮映画で上映される『大魔神怒る』(1966年8月13日・大映京都・三隅研次、特撮監督・黒田義之)デジタル4K修復版、初号試写を拝見。
第1作公開直後の5月にクランクイン。わずか3か月で、このクオリティ。驚嘆するばかり!撮影は三部作全てを手がけた名手・森田富士郎さん。今回は、お盆公開ということもあり、湖の中から現れる「水の神様」として大魔神が描かれている。
水源豊富な八雲の国は、領主も領民も平和に暮らしていたが、隣国の御子柴弾正(神田隆)が攻め入り、領主・名越兵衛(内田朝雄)は殺され、息子・名越勝茂(上野山功一)は囚われの身に。その妹・早百合(藤村志保)は湖の神の島に逃れ、武神像に祈りを捧げるが、弾正は武神像を火薬で爆破、小百合も囚われてしまう。
今回のヒーロー役は、小百合の許嫁者で友好関係にある隣地の侍・千草十郎時貞(本郷功次郎)。そのサポートをするのが田部隼人(平泉征)。それぞれの見せ場がちゃんと用意されている。小百合、勝茂たちとともに、磷付けとなり、いよいよ処刑の時が迫る。
三隅研次監督の演出はダイナミックで、緩急が見事。武神像も破壊され、善良な人々が窮地に陥日、絶対絶命のときに、大魔神が現れる。
今回は水のなかから、武神がゆっくりと現れ、そのヴィジュアルに惚れ惚れする。憤怒の形相となった大魔神。セシル・B・デミルの『十戒』(1958年・パラマウント)よろしく、湖は二つに裂け、その中にすっくと立つ大魔神の神々しさ。何度も観てきた、この合成カット、4Kデジタル修復版の高画質で、改めて、その大胆な画作りに驚かされる。京都鴨川の堤で撮影した素材に、ブルーバック合成、渡辺善夫さんの作画を合成。作り手のイマジネーションの素晴らしさを、ダイレクトに味わうことが出来る。
神の島の巨大セットも、撮影所の時代の底力を感じる。大映京都の映画技術のクオリティの高さに、ただただ驚嘆、声を上げたくなるほど素晴らしい!
大魔神が石垣を崩し、視界が開けるカット。パノラミックなヴィジュアルが拡がる。逃げ惑う弾正たち。瓦一枚一枚が剥がれ、宙に吹き飛ぶ。お馴染みの屋台崩しにも磨きがかかり、実物大の大魔神、橋本力さんの入った着ぐるみ、恐れ慄く神田隆さん。ツボを得たカット繋ぎで、これでもか!のクライマックスは、これぞ映画!これぞスペクタクル!の楽しさに溢れている。
藤村志保さんは、美しく、凛としていて、神さまを動かすだけの説得力がある。荒々しい武神と、美しい小百合。このコントラストに焦点を合わせての、三隅研次監督の時代劇演出が冴える。大映テレビ部制作「図々しい奴」で人気の丸井太郎さんが、小百合に仕える度々平を好演。また、神の島の鐘撞き・和助をベテランの寺島雄作さんが演じていて、物言わぬ和助は圧倒的な存在感がある。
全てが終わって、大魔神が水に帰っていくシーンの美しさ。大映京都撮影所が生み出したまさに芸術的作品! 4Kデジタル修復版による映像は単にクリアということではなく、フィルムが捉えていた全ての情報を、きちんと見せてくれる。テレビ放映や、退色したプリント、ビデオやDVDなどで繰り返し観てきても、初めて観る作品のような驚きの連続!
「大魔神三部作」は、この4ヶ月後、12月公開の『大魔神逆襲』(12月10日・森一生)へと続いてゆく。
この夏、妖怪・特撮映画祭で上映!
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