太陽にほえろ! 1973・第52話「13日金曜日マカロニ死す」
この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。
第52話「13日金曜日マカロニ死す」(1973.7.13 脚本・小川英 監督・竹林進)
内田宗吉(ハナ肇)
都倉俊二(影山龍之)
警察病院の医師(弘松三郎)
徳岡(上田忠好)
岩田勉(上野山功一)
マカロニを刺す男(車邦秀・NC)
バーのマダム(松風はる美・出演場面はカット)
マチ子(三枝美枝子)
情報屋(大川義幸)
パチンコ店のチンピラ(岡本隆)
森本三郎
「自分で書いた話で思い出深いのは、やっぱりマカロニ殉職の回(第52話)。第1稿を渡して、岡田(晋吉)君からひと言も文句がでなかったのは、あれだけじゃないかな。いつも何かしら文句を言ってくるからね」と、シリーズの生みの親であり、本作の脚本を執筆した小川英さんの回想である。
第51話「危険を盗んだ女」の最後、予告編で「次週、7月13日金曜日 マカロニ死す」とテロップが出て、マカロニ刑事が刺殺されるシーンが流れたのは、ショックだった。「13日金曜日 早見淳(24)死す」とさらに追い討ちをかけるテロップ。小学4年生のクラスメイトたちも「太陽にほえろ!」に夢中で、翌日の土曜日は「来週、マカロニが・・・」と話題で持ちきりだった。一年間、親しんできた主人公が死んでしまうことは、本当にショックだった。
「太陽にほえろ!」2年目の制作が決まった頃、マカロニこと早見淳刑事を演じていた萩原健一さんが、番組の降板を申し出た。「マカロニ刑事のイメージが強すぎる」「このまま続けたら、俳優としての制約を受けてしまう」「新しい挑戦ができなくなる」との理由だった。スタッフ、キャストも番組に留まるように説得したが、結局、ちょうど開始一年となる52話での降板が決定した。
萩原健一さんは、番組プロデューサーの日本テレビ・岡田晋吉さんに「最後は殉職で終わりたい」「できるだけみっともない死に方をしたい」と懇願した。それを受けて、脚本の小川英さんは、本筋の事件が解決した後での通り魔に殺されるラストの骨子を用意。芝居やセリフは、現場で萩原健一自身が考えて演じることになった。
マカロニの後釜は、文学座の若手で、すでに第35話「愛するものの叫び」にテスト出演していた松田優作さんに決定。ジーパン刑事篇の準備が勧められていた。こうして「太陽にほえろ!」では、新人刑事の活躍と、一定期間後の「殉職」というパターンが確立される。そのことで、若手俳優の登竜門となっていく。
夜の歌舞伎町。ゴリさんとマカロニが覆面パトカーを降りて「寿司処・紫光」を張り込む。拳銃を取り出し「弾を込めるかな」とゴリさん。マカロニは「どうなってるの?ゴリさん。ハジキに弾を込めるなんてトウシロだって、いつも吹いているクセに」とからかう。マカロニはスーツにネクタイでビシッと決めている。「そうだったな、しかし、気をつけろよ。あのタレコミが本当だったら、相手も拳銃を持っている」。マカロニは笑って「ゴリさん情報にはいつも騙されているから、俺は」「馬鹿野郎」。緊張の糸が溶ける二人の相棒。
ゴリさんは拳銃に弾を込めないことを信条としている。しかし、今回はそれが仇となり、そのことを辛かったマカロニにとっての屈託となる。
「寿司処・紫光」に入るゴリさんとマカロニ。カウンターの岩田勉(上野山功一)と都倉俊二(影山龍之)に「署まで御同行願いますか? ちょっと聞きたいことがあるんでね」と警察手帳を出すゴリさん。「冗談じゃねぇ」と都倉。「タレコミがあったんだよ。半月前に、あんたたちが拳銃を探していたってね」とマカロニ。無理矢理二人の身体検査をするマカロニとゴリさん。ちょうどトイレから出てきたサングラスの女に、目配せする岩田。女は頷いて、そっと岩田に近づいて拳銃を渡す。勘定のふりをして、ゴリさんたちを油断させておいて、拳銃を構える岩田。「おい動くな」緊張の一瞬。ゴリさん拳銃を構えて「拳銃を捨てるんだ」。しかし岩田が発砲。ゴリさんは凶弾に倒れる。
上野山功一さんは、日本画壇の鬼才・洋画家の上野山清貢さんの息子で、昭和33(1958)年に日活入社。裕次郎さんの2年後輩である。鈴木清順監督から「君は悪役に向いている」と言われ、『昼下がりの暴力』(1959年)で本格デビュー。ちなみに、この『昼下がりの暴力』で、初めて「殺し屋」という概念が生まれたとされる。今回の上野山さんは、見るからにワルを楽しげに演じている。裕次郎映画では『何か面白いことないか』(1963年)でジャーナリスト役で出演。この年、昭和48(1963)年「仮面ライダー」第92話「凶悪!にせ仮面ライダー!!」から第94話「ゲルショッカー首領の正体!!」では、アンチ・ショッカー同盟の木暮精一郎役で出演している。
相方の都倉を演じている影山龍之さんは、第45話「怒れ!マカロニ」で梶田組組員を演じていた。影山丈二の芸名で「大都会 ー闘いの日々ー」第2話「直子」に、辰馬伸の芸名で「大都会PARTⅢ」第34話「ストリート・ガール」などに出演。平成ゴジラシリーズでは『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)と『ゴジラVSモスラ』(1992年)では、海上幕僚長・平田大輔役でも出演している。
「救急車!」と叫んで半狂乱のマカロニは、岩田たちを取り逃す。「ゴリさん、しっかりしてください」。意識朦朧のゴリさん「拳銃を捨てろ、捨てるんだ」と叫びながら、空砲の銃を構えたままである。
警察病院の廊下、ボス、シンコが駆けつけ、マカロニ、ゴリさんの手術が終わるのを待っている。そこへ警察病院の医師(弘松三郎)が出てきて「弾は摘出したんですが、意識が回復しないんです。何分にも出血が酷かったんでね」と状況を伝える。日活バイプレイヤーの弘松三郎さんの先生、山さんの奥さん・高子の主治医と同じ人なのか?
医師は「いや、絶望というわけじゃないんだ。輸血、腹内手術、医者として出来る限りのことはしました。あとは、患者の生命力いかんですな」。ボスは「近親者を呼んだ方がいいってことですか?」と険しい表情。「そういうことです」。マカロニ、責任を感じて出て行こうとする。ボス「どこへ行く?」「決まってるじゃないですか、ホシ探しに行くんです」「そのホシはどこにいる? お前にぶち殺してもらうために、どこかで大人しく待っているというのか?」。
山さんが鑑識の結果を伝えにやってくる。犯人の銃のライフルマークは、二日前に二人組の銀行強盗が警備員を射殺した時のものと一致したのだ。マカロニ「・・・」。ボスはマカロニの肩に手をかけ「いいか、マカロニ、俺たちの中で犯人の顔を知っているのはお前だけだ。前後の事情を知っているのもお前だけ。いわば今度の事件の鍵は、お前が握っているんだぞ、忘れるな」「はい」。次のボスのセリフがいい。「山さん、こいつと組んでくれ。このガキはほっとくとどこへ飛んでいくかわからんからな」。
山さんとマカロニのコンビ。空砲で鳴らしたゴリさんねな「弾を込めるかな」の一言が気になる山さん。マカロニは「きっと何か予感があったんでしょう」「予感?」「それを俺は笑ったんですよ。どうかしてるって・・・」。当日の状況を整理する山さん。
タレコミがあったのは5時ちょっと過ぎ、ゴリさんが情報屋(大川義幸)から電話を受けたという。「なんでぇ、あんたかい?景気はどうだ・・・拳銃?」そのあと、ゴリさんは「なんて言ったんだ?」「名前です。確か相手の名前を・・・」しばらく考えて「そうだ、徳さん」と思い出すマカロニ。徳さんはゴリさん専用の情報屋だった。
捜査第一係での捜査会議。マカロニは克明に前科者のカードを当たったが、寿司屋の三人には前科がなく、見当たらなかった。となると目撃者全員の証言が重要になる。長さんとシンコは残りの客に当たり、殿下はマカロニの証言に基づいて状況再調査、山さんは「徳さん」を探し出すこととなる。山さんはマカロニに「寝たほうがいいよ」ボスも「山さんのいう通りだ。お前、昨夜、一睡もしてないよ」「俺と一緒だと迷惑ですか?山さん」「徹夜明けで頭にきているやつに、捜査活動など出来やせん」。
と言いながらも、山さんはマカロニを連れて「徳さん探しに」向かう。パチンコ店でチンピラ(岡本隆)に当たったり、あちこち探し回るが、なかなか徳さんは見つからない。一方、長さんはサングラスの女の目撃者を見つける。女は5丁目の「バー佐代」でマチ子(三枝美枝子)と名乗っていた。殿下は長さんのサポートへ。シンコは病院へ向かう。
時すでに遅し。「バー佐代」のホステス・マチ子が死んでいる姿で発見される。死因は青酸カリ。誰かに殺されたようだ。これで事件の鍵を握るのは、情報屋の「徳さん」だけ。丸の内線・新宿駅のホームで、いつものタバコに忍ばせた千円札で、情報屋から「徳さん」のことを聞き出す山さん。情報屋は「徳岡って男がいる。2年ほど前、喧嘩でバラされそうになったそいつを助けたのがゴリさんだ」。情報屋から「3丁目、ブルータヒチのサンドイッチマン」であることを知らされたマカロニと山さんは、キャバレー・ブルータヒチの呼び込みをしている「徳さん」こと徳岡(上田忠好)に声をかける。
徳さんを演じた上田忠好さんは、俳優座7期生で、露口茂さん、田中邦衛さん、藤岡重慶さんたちと同期。山さんと徳さんは、長年の俳優仲間でもあったのだ。第6話「手錠と味噌汁」でも情報屋として出演。第58話「夜明けの青春」で再び、情報屋・徳岡を演じている。その不気味な容貌で特撮ものでもお馴染み。「悪魔くん」の第24話「カマキリ仙人」ではタイトルロールを演じていた。
「頼む、ゴリさん重症なんだ」と頭を下げる山さん。しかしマカロニは「奴ら何者なんだ?」とキツイ口調で責める。そんマカロニに、山さんのパンチが飛ぶ。「悪かったな。もしも何かを思い出したら、飯屋の宗吉へ連絡してくれ」と優しい山さん。「マカロニ、まだわからんのか!貴様、何もかもぶち壊しにしたんだ!あの男はもう金輪際喋らんぞ!」「喋らせるよ!俺が!」と口を尖らすマカロニ。「なんだと?お前ってやつはどこまで?」「ああ、その通りですよ。頭きてますよ。でもね山さん。仲間撃たれて、燃えない男がどこにいますか?。そんな奴がデカじゃないっていうんなら、俺はいつだって辞めてやらぁ!」とその場を立ち去るマカロニ。
マカロニ、再び「ブルータヒチ」へ徳さんを探しに。それを影から見ていて「やっぱりタレ込んだのはあの男か」と呟く男。都倉俊二(影山龍之)である。
捜査第一係、ボスに謝る山さん。「マカロニを抑えきれず。徳さんまで見失うとは・・・」「山さん、それ言うなよ。あいつを山さんに押し付けたのは俺だ」。手がかりが断ち切られ、誰もが意気消沈している。長さん、殿下、山さんに「宿直室で横になれ、休めるのは今のうちだ」とボス。これぞ、頼もしきリーダー。
自分の椅子でそっと目を閉じるボスのモノローグ。「ゴリに比べりゃ極楽だ。あいつはもう一昼夜以上、必死になって死神を戦っているんだ」。病室のゴリさん、懸命に戦っている。
宗吉(ハナ肇)は「大丈夫だよ。今まで持ちゃ助かるよ。何せ、ゴリ押しのゴリさんだ。死神だって降参しないわけないって」とカウンターの山さんを笑顔で励ます。そこへ憔悴し切ったマカロニがやってくる。シンコ「心配していたのよ」。マカロニ、山さんから離れた椅子に座る。バツが悪いのだ。「メシと味噌汁くれ」とマカロニ。
そこで、口を開く山さん。「見つかったか?徳さん」「いいえ、電話ありましたか?」「あるはずがないよ」「気休めにああ言っただけだ」「俺のせいだって言いたいんでしょ? ああ、いいですよ。刑事失格でもなんでも言ってください」投げやりなマカロニ。悲しい目のシンコ。「だけどね、山さん。やったことの責任は持ちますよ。ホシは必ず俺が捕まえます。俺のやり方でね」。宗吉を出て行く山さん「一つだけ言っておくがな、命だけは無駄にするなよ。はた迷惑だからな」「はた迷惑?・・・」。山さんはマカロニのことを心配して言ってるんだと宗吉がフォローする。「違う。捜査、捜査、捜査。何よりも捜査、あの人はそういう人なんだ」とマカロニ。
「俺はよ、仇取りたいんだよ。どんなことしてでも、ゴリさんの仇取りたいんだよ」切実なマカロニ。疲れ果てたマカロニ「眠くなっちゃったよ。泊めてくれないか」と宗吉に頼む。シンコ「床とったげる」マカロニ「余計なことすんなよ」。シンコ、ふくれる。
早朝、宗吉に電話。マカロニが出る。「マカロニって刑事に連絡したいんですが、電話番号を・・・」「マカロニってのは俺だけど・・・」なんと「徳さん」からの電話だった。「石塚さんの代わりに、あんたにだけ犯人を教えますから」と歌舞伎町の喫茶店「白馬車」に、誰にも話さずマカロニ一人だけ来てくれと呼び出す。「徳さんに、俺をご指名だ。犯人を教えるとよ」。シンコ「待って、勝手に動き回ると、またドヤされるわ。場所だけでも教えてって」「こいつは俺の仕事だ」「マカロニくん!」「シンコ、ばかに今日は綺麗だな」「え?」「俺の気のせいかな?綺麗だよホント」マカロニの笑顔。「バカね。何をいきなり」満更でもないシンコ。マカロニは出て行く。
「綺麗だなは良かった。ハハハ、奴さん、お前に気があるんじゃないのか?」と宗吉。「お父さん、そんなこと言ってる場合?」
ボスへ宗吉から電話。「徳岡が犯人を教えるとさ、しかもマカロニをご指名で」とボス。「引っかかりますね」と山さん。「私がもし犯人だとしたら、やはりマカロニひとりを呼び出したいところですね。犯人の顔を見た刑事は、ゴリさんを除けばマカロニひとりですからね」。うなずくボス。
新宿歌舞伎町・コマ劇場の前。マカロニがやってくる。徳岡指定の喫茶店「白馬車」へ。その様子を向かいの喫茶店の2階から見ている岩田勉(上野山功一)、その隣で落ち着かない様子の徳岡。岩田「どうやら、約束通り、一人で来たようだな。言った通りやるんだ。命が惜しかったらな」と徳岡を脅す岩田。
「白馬車」。マカロニの前に現れる徳岡。「行きましょう。ご案内します。そいつらの住んでいるところへ」とマカロニを誘い出す。
ゴリさんは危機を脱し、意識を取り戻したと病院から電話。みんな病院へ向かうが、山さんはマカロニから連絡があるかもしれないと一係で待機することに。ボスは「マカロニは刑事だ。俺はそう信じている」とキッパリ。
徳岡に連れ回されたマカロニ。バスに乗る前に「悪いな、ちょっとお腹壊したみたいなんだ」と近くの公衆便所へ。一係へ無線連絡するマカロニ。「罠かもしれません。もう話はできませんから、無線をオンにしておいてください」。山さん「車の無線で後を追います」。殿下も一緒についていく。シンコは無線機の前に待機。「マカロニくん、それ以上無茶はしないで」。
京王バスの車内、マカロニが徳岡に「上野台行きか?」と訊く。山さんの覆面者が追う。「どこで降りんだよ。次は北橋か?」。懸命にマカロニの行く先に向かう覆面車。
警察病院。ゴリさんは長さんに「徳さんは、そいつらはどこの誰かは知らない。ただ、顔見知りのヤクザと飲んでいたとき、そいつらが拳銃を売ってくれと、言ってきたんだそうです」「そうか、それじゃ徳さん、何にも知っちゃいないんだな。だのに、犯人を教えるとマカロニに言った・・・」「なんですって?それはおかしいですよ、長さん。行かしちゃいかん。マカロニに行くな、と言ってください・・・」「わかった」「マカロニ!マカロニを止めろ!」とゴリさん、絶叫する。
郊外の資材置き場へ、マカロニを連れ出す徳岡。「なんでこんなところに連れてきたんだ? やっぱり俺を嵌める気なんだろ? やっぱりそうか、そのツラじゃな、図星だろ?」。慌てて逃げ出す徳岡、岩田に拳銃で殴られ気絶する。マカロニ、岩田、それぞれ拳銃を構える。西部劇のような緊張感。山さん、無線でマカロニの声を聞いている。急行する覆面車。「焦るなマカロニ、もう少しだ」とボスの心の声。ボスの覆面車も走る、走る、走る。
「くそ、撃たなきゃこっちから行くぞ」とマカロニ。都倉、岩田、マカロニを仕留めようとする。走り出すマカロニ。本当にマカロニウエスタンのクライマックスみたい! 山さんの覆面車、現場に近づく。マカロニの弾が切れる。しかし銃弾はもうない。都倉「いい加減に諦めろよ、マカロニ刑事さん。もう弾ねえだろ。こっちは二人で、弾はいくらでもある」。追い詰められたマカロニ、弾をかわしながら走るが、追い詰められて、絶体絶命。
CM明けて、岩田と戸倉の銃口がマカロニに向けられる。山さんの車、フェンスを突破して現場へ到着。ハリウッド映画のカースタントのようでもある。その隙にマカロニ、岩田を殴る、殴る、殴る。都倉を追い詰めた殿下。マカロニは岩田を殴り続ける。「マカロニ。もういいだろ」「ボス」。一件落着!
捜査第一係ではビールで乾杯。殿下「これ全て、マカロニの蛮勇の賜物」。みんなで大笑い。「あ、いけない、褒めちゃいけないですねボス」と殿下。嬉しそうなボス「ま、いいだろ、今日のところは。な、マカロニ」ボスの最高の笑顔。マカロニも最高の笑顔。山さんに何か言いたいけど、照れて何も言えないマカロニ。黙ってタバコを差し出す山さん。マカロニがマッチで火を付ける。チャールズ・ブロンソンとアラン・ドロンのようだ。黙ってマカロニの肩を叩く山さん。
やがて、ゴリさんの病室を訪ねるマカロニ。眠っているゴリさんを起こさないように座るマカロニ。じっとゴリさんを見つめる。「良かったね、ゴリさん。ほんとに良かったね。俺は、今度ばかりはやられちゃったと思ったよ。でも、助かっちゃった」とマカロニの心の声。その場でゆっくりと眠るマカロニ。安堵のひととき。目が覚めたマカロニ、しおれたタバコに火を付ける。「命を無駄にするやつはデカじゃない、って言った山さんが、命がけで俺を助けてくれたんだ。俺、感激したぜ、ゴリさん。でもやっぱり、人間、生きてなきゃダメだね」とマカロニのモノローグ。「俺、やっぱり刑事になって良かったよ」。また眠るマカロニ。ゴリさん、ふと目をあけ「良かったな、マカロニ」と心の声。眠るゴリさん。
深夜、目が覚めるマカロニ。「行けねぇ、寝ちゃったよ」時計を見る。「またね、ゴリさん」。病室を出て行くマカロニ。もう一度、病室のドアを開ける。マカロニが出て行ったところで、ゴリさん、目を開けて、ニッコリと満足げに笑う。
夜の道。マカロニが口ずさんでいるのは「太陽にほえろ!」のテーマ。あたりを見回して「ちょっと、この辺でやっていこうかな」。野村ビルの建設現場に入り込んで立小便する。ほっと一息、用を足し終えたところで、男がぶつかってくる。二度三度、刃物で刺す、鈍い音がする。男のシャツの背中に掴みかかり、ビリビリと破くマカロニ。「ああ!」と声にならない声。男はマカロニの上着から財布を盗む。必死に掴みかかるマカロニ。しかしマカロニは血だらけで倒れる。しばらくして起き上がり、その場に座り込むマカロニ。テーマが流れる。お腹を抑えて、あたりを見渡すが、少しずつ意識が遠のいていく。「母ちゃん、あついなぁ」。倒れ込むマカロニ。目を瞬かせているが、やがて息を引き取る。
ちなみに、マカロニを刺した男を演じたのは、若駒冒険グループでスタントマンをしていた車邦秀さん(ノークレジット)。この年、NHKの「天下堂々」で斬られ役を演じ、その斬られっぷりが評価されて、岡田晋吉さんプロデュースの日本テレビ「おこれ男だ!」(1973年)の殺陣師を担当していた。特撮では「アイアンキング」「スーパーロボット レッドバロン」のロボットや怪獣のスーツアクターを務めている。
早朝の新宿駅西口。工事現場で、マカロニの遺体が発見される。現場に立つボス。長さん「ボス、こんなばかなことが」。山さん、シンコ、殿下が駆けつける。マカロニの安らかな顔。ボス「強盗だ。財布を盗まれた」。殿下「マカロニ」。シンコ「・・・ボス、本当にマカロニくんが?」「ああ・・・」項垂れるシンコ。ボス「シンコ、お前は刑事だ。泣かずに死体が見られるか?」「はい」。そっとマカロニに近づくシンコ。手帳を取り出し、状況を書く。音楽、最高に盛り上がって・・・マカロニの遺体から空撮で・・・
13日金曜日 早見淳(24)死す。
当時の新聞取材で、殉職シーンの演技プランについて聞かれた萩原健一さんは「監督は好きにしていいってさ。俺、きれいに死ぬなんてまっぴら。犯人もチンケなやつで、死に場所も小汚いところがいい。立小便して開放感に浸った瞬間、ブスっとナイフで腹を刺されるんだ」と答えている。
ロケーションが行われたのは、新宿高層ビル群の一角を担うことになる「新宿野村ビルディング」の建設予定現場。着工は1975年8月、竣工は三円後の1978年6月。マカロニ殉職の5年後のことだった。