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『ガンヒルの決斗』(1959年・パラマウント・ジョン・スタージェス)

久々に『ガンヒルの決斗』(1959年・パラマウント)を娯楽映画研究所シアターで投影。ジョン・スタージェス監督による「決斗三部作」最終作にしてカーク・ダグラスとアンソニー・クイン、かつての親友たちが死闘を繰り広げる男性活劇の傑作!

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 連邦保安官・マット・モーガン(カーク・ダグラス・中谷一郎)が、妻をならず者に凌辱され殺されてしまう。しかも現場に居合せてたのが6歳の息子。悲しみにくれるモーガンは、現場に残されていた犯人の馬の鞍が、かつての親友・クレイグ・ベルデン (アンソニー・クイン・高品格)のものであることに気づいて、ベルデンが牧場を営むガンヒルの街へ、汽車で向かう。

 マットの妻を死に至らしめたのは、ベルデンの息子・リック・ベルデン(アール・ホリマン・神谷明)で、共犯はベルデンの子分・リー・スミサーズ(ブライアン・ハットン)だった。しかし、強権的な父を畏れてリックは、真実を話すことはなかった。

 さて、マットが汽車で出会ったリンダ(キャロリン・ジョーンズ・翠準子)は、ベルデンの愛人だったが、DVを受け、その傷を治療して10日間の入院から戻るところだった。もちろんそのことは、後半に明らかになるのだが、ガンヒルの街は、ベルデンが牛耳っていて、誰もが、彼に怯え、忖度して日々を過ごしている。

 マットが、ベルデンの鞍を肩に、ガンヒルの駅に降り立つと、街に緊張が走る。マットは妻殺しの犯人二人を逮捕して、夜9時に出発する汽車に乗る心算である。

 完全にアウェイのガンヒルで、街を牛耳るボスが溺愛する息子を、逮捕しにやってきたマットの覚悟の表情。誰もに反対されながら、威風堂々のカーク・ダグラスは、本当にカッコいい! 僕が最初に観たのは、小学5年生、1974年4月24日放映「水曜ロードショー」(NTV)だった。だから『OK牧場の決斗』よりも、こちらの方が早かった。

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 アンソニー・クインのベルデンとカーク・ダグラスのマットは、かつて共に仕事をし、二人でピンチを切り抜けてきた親友である。しかも、マットはベルデンに命を助けてもらった借りがある。マットが、ベルデンの牧場に現れ、二人が再会、酒を酌み交わすひととき。ほんの一瞬だが、二人のこれまでの信頼関係が伺える良いシーンである。

 しかしマットが、リックとリーを逮捕して裁判かける決意を告げた瞬間、二人の友情が瓦解する。リックを溺愛するベルデンは、マットと敵対することになる。どう考えても、リックが悪いのだが、配下の手前、妥協することが出来ない。沽券に関わるからだ。

 まるで日活アクションや日活任侠映画のような構成。かつての親友や兄貴と訣別し、対峙しなければならなくなる。石原裕次郎さんや渡哲也さんの映画でもこういう展開がある。

 ベルデンはリックを叱責するが、絶対お前は守ると息子に告げる。マットは保安官事務所に行くが、長いものには巻かれろと、法の執行人はベルデンを擁護。酒場の経営者も、ホテルの支配人も、マットに「街から出ろ」と警告する。

 まさに満身創痍。やがてマットは、酒場でリックを逮捕、夜9時の汽車の出発まで、ホテルの部屋に立て篭もることに…

 ホテルの周りには、ベルデン一家。窓をあちこちの建物の上から狙っている。絶体絶命のマットの唯一の味方は、ベルデンの愛人・リンダだけ… キャロリン・ジョーンズは、「アダムスのお化け一家」の母親で妻でモーティシア・アダムスを演じる女優さん。

 クライマックスの緊迫感は、さすがジョン・スタージェス! 何度観てもドキドキする。ディミトリ・ティオムキンの音楽も、いつもながらに決まっていて、この時代の娯楽映画のアベレージの高さに、改めて感心した!


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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
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