娯楽映画研究所ダイアリー 2022年8月29日(月)〜9月4日(日)
8月29日(月)『七人の秘書 THE MOVIE』(2022年・東宝・田村直巳)・『怒りの街』(1950年・東宝=田中プロ・成瀬巳喜男)・『続スーパージャイアンツ 宇宙艇と人工衛星の激突』(1958年1月3日・新東宝・石井輝男)
『七人の秘書 THE MOVIE』(2022年・東宝・田村直巳)予備知識なくフラットに観たら「ザ・ハングマン」な「プレイガール」だったのね!東映製作のドラマっぽくて、久々のガールズ・アクションで、結構、楽しかった!しかも若林豪さんが出ているのが嬉しかった! 10月7日(金)公開。
久しぶりの成瀬巳喜男研究。今宵は、1950.05.14『怒りの街』(東宝=田中プロ)VHSからスクリーン投影。戦後5年、かつて学徒動員で駆り出され、死地を彷徨って帰ってきてようやく復学したものの、財閥解体、新体制のなか、親の遺産も奪われ、苦学生となった主人公。知性派の宇野重吉と、生まれながらの二枚目・原保美さんは、ダンスホールや街角でナンパしたお嬢さん、久我美子さん、木匠くみこ(のちのマユリ)さんたちを言葉巧みに騙して、金を引き出すというピカレスク野郎。
『続スーパージャイアンツ 宇宙艇と人工衛星の激突』(1958年1月3日・新東宝・石井輝男)。ここのところ連夜「スーパージャイアンツ」を観ている。渡辺宙明先生研究なのだけど、つい面白くて、真鍋理一郎さんが音楽を手がけた、第6作『続スーパージャイアンツ 宇宙艇と人工衛星の激突』(1958年1月3日・新東宝・石井輝男)をスクリーン投影。
前作で、宇宙に飛び出した悪の秘密結社「黒い衛星」に拉致された三ツ矢歌子さんたち。「黒い衛星」は、人工衛星(宇宙ステーション)から原子ミサイルを発射して、ヒマラヤ、ニューヨーク、ロンドン、東京の国会議事堂を威嚇攻撃。って、もはや『世界大戦争』(1961年)に先駆けたディザスター映像にクラクラ。
それでも三ツ矢歌子さん、敵のコスチュームを着て、サボタージュを開始。でっかい原子銃を持って、敵に攻撃する姿は、なかなかカッコいい。で、ピンチもピンチ、映画の終盤にようやくスーパージャイアンツ(宇津井健)が飛来、「黒い衛星」一味をバッタバッタとやっつける。
しかし、敵の銃を奪って、二丁拳銃をぶっ放す姿は、スーパーヒーローではあるが、片岡千恵蔵さんの「多羅尾伴内」の流れを組んでいる。この頃のカッコよさ、強さの基準だろう!
東宝で『地球防衛軍』が作られたのほぼ同時に、新東宝でも「人工衛星ブーム」に乗ったSF活劇が作られていた!
ラスト、全てが解決して、宇宙空間を飛んでゆくスーパージャイアンツの姿は、MCUのキャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)的でもある(笑)
やー、楽しい、楽しい!明日も観よう!
8月30日(火)『NOPE ノープ』(2022年・ユニバーサル・ジョーダン・ピール)・『白い野獣』(1950年6月3日・田中プロ=東宝・成瀬巳喜男)・『スーパージャイアンツ 宇宙怪人出現』(1958年4月28日・三輪彰)
TOHOシネマズ新宿、IMAXで『NOPE ノープ』(2022年・ユニバーサル・ジョーダン・ピール)を堪能。アメリカの田舎町に飛来した謎の飛行物体。第一種接近遭遇から始まり、事態は予想をはるかに越えていく。ジョーダン・ピールが拡げた大風呂敷と、大山鳴動のプロセスを味わう。「未知との遭遇」世代にとってはたまらない数々「謎」の提示。
『ゲット・アウト』のダニエル・カルーヤが兄OJ、『ハスラーズ』のキキ・パーマーが妹エメラルド。この兄妹とブランドン・ペレア演じる電器屋の兄ちゃんエンジェル・トレスたちの後半の闘い。西部劇の伝統に則って、助っ人・マイケル・ウィンスコットも現れる。
提示される「謎」の一つ、かつての人気テレビ番組「ゴーディ、家に帰る」事件のエピソードが、じわじわと観客の不安として拡がってゆく。ああ、面白い。映画はこうでなくっちゃの大風呂敷。ラストのカタルシスも含めて、楽しかった!
成瀬巳喜男監督研究。今宵は、1950年6月3日公開『白い野獣』(田中プロ=東宝)。これも成瀬巳喜男らしくないとされているが、昭和25年、GHQの意向もあっての「夜の女」「街娼」救済のための更生施設を舞台にした女性群像ドラマ。映画の作りとしては、戦前の『愛の世界 山猫とみの話』(1943年・東宝・青柳信雄)のような立派な施設の頑張りを描く社会派でもある。
連夜のスーパージャイアンツ大会。今宵は第7作『スーパージャイアンツ 宇宙怪人出現』(1958年4月28日・三輪彰)をスクリーン投影。もうタイトルバックの陰画の宇宙怪人の怖いこと怖いこと。造形はわが「仮面ライダー」の蝙蝠男を最初に観た時の恐怖が蘇るというか、子供向けでこれは怖すぎだろう、というルック。
音楽の石松晃さんは『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』(1960年・東映)を手がけることになる。
トップシーン、銀行ギャングを追い詰める刑事たち。しかし追われていたのはギャングではなく、黒川博士の助手・川田実(浅見比呂志)で、ジュラルミンケースの中には、宇宙怪人の細胞が入っていた!やがて、細胞は分裂を重ねて、いよいよ宇宙怪人出現。船舶やトラックを襲い、日本を恐怖のどん底へ。
ってことは、宇宙人ネタ?と思いきや、あくまでも宇宙生物を培養して、それで世界征服をもくろむ秘密結社「宇宙暗黒党」の陰謀だった。
というわけでSFというより、怪奇探偵映画のムードがムンムンで、前作のようなスペースオペラ感覚はなりをひそめ、とにかく「宇宙怪人」が怖いのなんの!
クライマックス。宇宙怪人とジャイアンツが死闘を繰り広げる晴海埠頭の向こうには、豊洲の工場地帯。すっくと立つ煙突は、この映画から6年後、『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964年・東宝)で宇宙生物が石炭を巻き上げるあの工場の煙突! ということは、この映画から7年後、『国際秘密警察 火薬の樽』(1965年・東宝)で三橋達也さんとニック・アダムスさんが爆弾を投げる東京湾の向こうにあった煙突!
勝鬨橋の空を飛ぶジャイアンツ!ああ、カッコいい! というわけで、アクション、アクション、またアクションで宇宙怪人とジャイアンツの死闘が展開されるヴィジュアルは「仮面ライダー」の初期を思わせる。
8月31日(水)『舞姫』(1951年8月17日・東宝・成瀬巳喜男)・「スーパージャイアンツ 悪魔の化身」(1959年・新東宝・赤坂長義)
成瀬巳喜男監督研究。8月31日は川端康成原作『舞姫』(1951年8月17日・東宝)をスクリーン投影。製作は児井英生プロデューサー。川端康成が朝日新聞に連載した新聞小説を新藤兼人が脚色。のちの水木洋子や田中澄江の脚色とは違い、いかにも新藤兼人らしい構成、セリフの応酬は、昭和20年代の邦画の典型であるが、ぼくらがイメージする成瀬映画とはテイストが少し違う。
ゴルバチョフ氏といえば、先週観た「ロッキーVSドラゴ ロッキーⅣ」にソックリさんが書記長役で出演。久々に想い出したばかり。ゴルビー人形とかTシャツとか、ペレストロイカブームが日本でも。ロジャー・ムーアのボンド映画のゴゴール将軍(ウォルター・ゴテル)みたいだなぁと、当時、思いました。
9月1日(木)『竜二』(1983年・東映セントラル・川島透)・『竜二Forever』(2002年・日活ほか・細野辰興)・『続スーパー・ジャイアンツ 毒蛾王国』(1959年・新東宝・赤坂長義)
本日より受付開始! 娯楽映画の風景を楽しむ、時層探検講座、この秋、NHK文化センターで開講します!ぼくとしては、阿佐ヶ谷ネオ書房「娯楽映画の昭和」シリーズからのスピンオフ企画でもあります。映画はタイムマシン。下町、山の手、そして銀座。時代とともに変わりゆく風景、そして変わらない風景を「時層」探検します!
9月6日(火)文化放送「くにまる食堂」(11時〜13時)に佐藤利明がゲスト出演します。「夏の終わりのGS&加山雄三特集(仮)」9月9日東京国際フォーラムで、いよいよラストショーをのステージに立つ加山さんがもたらしたエレキブーム、GS黎明期の名曲、ランチャーズ、ワイルドワンズ… 加山さんの音楽人生と共に語り、曲をかけまくります! 是非是非、聞いてください!
川島透監督「竜二」(1983年)の金子正次さん、細野辰興監督「竜二Forever」(2002年)の高橋克典さん。「金子正次→竜二←高橋克典」の生きた証をスクリーンで体感。細野辰興監督との白熱トークも楽しかったです。メタフィクションの世界を堪能!ありがとうございました
1983年、2002年の竜二の世界を2022年の新宿で体感出来ることの贅沢さ! 明日から、細野辰興監督、作・演出「レプリカントは芝居ができない?」新宿スターフィールド劇場で上演です。明日は売り切れですが、3日(土)、4日(日)は若干お席があるようです!
帰宅後『続スーパー・ジャイアンツ 毒蛾王国』(1959年・新東宝・赤坂長義)をスクリーン投影。シリーズ最終作。今回も怪奇事件→マッドサイエンティスト→悪の秘密結社というパターン。冒頭、銀座4丁目のショットから時計・宝石店「日本堂」へ。外景ショットに時代の晴れがましさを感じる。店内で、店員が毒針で殺され、宝飾品が奪われる。それを目撃した子供たち。同様の事件が都内で頻発し、東京はパニックに陥る。やがて子供たちに毒蛾王国の魔の手が迫る。スーパージャイアンツ(宇津井健)はどこからともなく現れて、子供たちを護り、秘密結社の陰謀を粉砕する。この他愛のなさ!眺めているだけでワクワクしてくる!
9月2日(金)「ロード・オブ・ザ・リング 王の指輪」第1話(アマゾンプライム)
クエストルームの石原卓社長からのミッションを受けて、この夏、取り組んできました。
取材、データ作成、執筆、監修を、佐藤利明とアーカイヴァーの鈴木啓之さんの二人で敢行しました。還暦目前の二人が、27年前の「若大将グラフィティ」(角川書店)の時と同じエネルギーで、連日、連夜、取り組んだ「濃いめ」のパンフレットです。
良い意味で、コンサートパンフのイメージから遊離した大型の音楽ムックです。加山プロモーション秘蔵写真や、加山さんが手がけたKナンバーリストなど、後世に残る「65年に渡る加山雄三さんの音楽史」でもあります。
これまでの、ぼくたちの加山さん仕事の集大成でもあります。9月9日(金)東京国際フォーラムA、そして全国TOHOシネマズでのライブビューイング会場で限定販売です。
9月3日(土)「レプリカントは芝居が出来ない?」(新宿スターフィールド劇場・細野辰興演出)
高田馬場で打合せを終えて、新宿スターフィールド劇場へ。細野辰興監督演出、逢澤みちるさん、梅宮万紗子さん、優美早紀さんの三人芝居「レプリカントは芝居が出来ない?」ソワレを拝見します。
新宿スターフィールド劇場。細野辰興監督演出「レプリカントは芝居が出来ない?」。役者が演技をする、映画監督が芝居を演出する、ひとが他人になりきる。フツーのことのようだけど、実はフツーではないことを、レプリカントの視点で描くメタフィクション。逢澤みちるさん、梅宮万紗子さん、優美早紀さん、それぞれ良かった!
9月4日(日)「デアデビル」(Netflix=マーベル)
「本日、午前10時からNHKラジオ第2「カルチャーラジオ 日曜カルチャー クレイジーキャッツの音楽史」(4)最終回「コミックソングと高度成長」のリピート放送です。聴き逃しも本日終了なので、お聴き逃しなく!
講座内容をまとめたテキストです。放送のお伴に!
この夏は7月31日の「ラジオアーカイブス ハナ肇が語るクレイジーキャッツ結成秘話」から8月の「クレイジーキャッツの音楽史」全4回とNHKラジオで空前絶後のクレイジーキャッツ三昧でした。日本の夏、無責任の夏、いよいよ本日10時からの「コミックソングと高度成長」でおフィナーレです!
レインボータウンFM「ラジオ ミナテラス」で募集した9月16日(金)の「映画と音楽、そして対話」(すみだトリフォニー小ホール)コンサートチケットプレゼント告知です。contact@monten.jp 宛に「映画と音楽、そして対話」チケットプレゼントと、件名に明記の上、メールで9月9日(金)23時59分までにご応募ください。発表は発送を持って代えさせて頂きます。
ディズニー+でマーベルドラマ「デアデビル」を改めて見直している。このドラマでのウイルソン・フィスク=キングピン、かなりイイ。やっぱり、面白いなぁ!
よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。