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太陽にほえろ! 1973・第51話「危険を盗んだ女」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。

第51話「危険を盗んだ女」(1973.7.6 脚本・田波靖男、四十物光男 監督・竹林進)

原田京子(大原麗子)
奥村(土方弘)
中華料理屋女将(岸井あや子)
秋山(武藤英司)
松尾俊夫(灰地順)

北川陽一郎
亀井三郎
宮田弘子
奥山正勝
金子富士雄
久本昇
久保田鉄男

 大原麗子さんの女スリがファッショナブルでキュートな、殿下こと島公之(小野寺昭)主演回。田波靖男&四十物光男脚本は、娯楽映画タッチあふれる肩の凝らない展開で、これぞ東宝!と言う感じの華やかな回でもある。

 満員の京王バス「渋谷経由・中野行き」で、女スリ・原田京子(大原麗子)が、殿下の足を踏む。「御免なさい」。その後、堂々と仕事をする。サラリーマン風の男(灰地順)の財布がスラれ、被害者共々、近くの交番へ。しかし、京子のバッグからは男の財布は出てこない。男は財布を「今日、うちに忘れてきた」。京子は「この財布は父の形見なの」。交番で京子は殿下に「人違いをしました、どうもすみません、と謝ってよ」。憮然とする殿下。京子はならば署長に謝ってもらうだの、新聞に投書するだの、言いたい放題。大原麗子さん、かわいいね。仕方なしに殿下「どうもすいませんでした」と謝る。

 京子が交番を出たところで、さっきの男が「俺の財布を返してもらおうか?」と言いよる。知らんぷりをする京子。「返さねえってのか?」「何すんのよ」揉み合う二人。そこへ殿下。逃げる男を追ううちに、京子はドロンしてしまう。殿下は、小田急線の踏切。東北沢あたり、ロマンスカーに阻まれ、男を見失う。

 翌朝、都内を流れる矢野川で、両手を縛られリンチされた男の遺体が、発見される。マカロニ、ゴリさん、長さん、山さんが現場検証しているところへ、駆けつけた殿下が「この男だよ。昨日、財布をスラれたのは」。殿下は、女スリに財布をスラれたことが、殺された原因ではないかと推理。奪われた財布の中に、何か大事なものがあったのではないかと。

 被害者は、松尾俊夫(灰地順)。前科五犯、公文書偽造で先月の末に出所したばかり。贋札作りでは3本の指に入る男。遺体からは印刷に使われるシアンが検出された。その原板が盗まれたのかもしれない。ボスは「とにかく、その女スリを捕まえるのが先決だ」と殿下に指示をする。

 他の連中は、全員、ドブさらいをすることに。シアンは贋札作りの物証になる。「いずれにせよ、矢野川の上流の下水を徹底的に洗ってくれ」とボス。マカロニは「美人とドブさらいじゃ、エライ違いだよ」と大いにクサる。そのタイミングで、捜査第一係に、管内のマンションで空き巣事件が発生したと電話がかかる。ドブさらいを嫌がっていたマカロニが、喜び勇んで捜査に。

 一方、矢野川では、山さん、長さん、ゴリさんが川に入って下水の水質調査。刑事はつらいね。「マカロニの野郎、チキショウ。もう嫌だ!」とゴリさん。

 マカロニは空き巣被害のマンションへ。部屋は荒らされている。なんと京子が被害者!マカロニ「外から帰ってきたら、こういう風になっていたんですか?」「ええ、でも私、警察に届ける気なんかなかったんです」と京子。被害は?「散らかっているものを片付けてみないとわかりません。何かなくなっているものがあれば、後でお知らせします」。京子は、自分の仕事をデザイナーとマカロニに話す。

 マカロニから捜査第一係へ電話。殿下が探している女スリと、空き巣被害者が似ているのでは?と。マンションに駆けつける殿下。そこで京子とご対面する。殿下「やっぱり君だったのか?」。強固に財布をスラれた男は、殺されて矢野川で死体となって発見されたと殿下。「私は関係ない!」と言い張る京子。殿下は精一杯優しく「あの財布には何が入っていた?」「お財布ってお金に入れるためにあるんじゃないの?」。京子は全額使ってしまったと開き直り、すごい剣幕でまくしたてる。

 追い出された殿下とマカロニ。殿下は「ただの空き巣かな?もしかしたらすられた偽札を、偽造団が取り返そうとしたんじゃないのかな?」。偽札が見つからなれば、今度は京子が狙われてしまう。偽札は番号が同じ。偽造団は、自分たちが使う前に、足がついたら困るので、必死に探しているに違いない。

 マンションの部屋。京子はラップに包まれた、松尾の財布を取り出し、一万円札を確認。「同じ番号・・・」。

 矢野川では、長さん、山さん、ゴリさんが下水を最終。ゴリさん泥まみれで「ああ、臭い!」。

 マンション前で張り込むマカロニと殿下は、デニムのエンジェルハットに、デニムジャケットにパンツ。首にはスカーフを巻いて、おめかしして出かける京子の跡をつける。さらに、その後を怪しげな男(土方弘)がつける。高級レストランでステーキを豪勢に食べる京子。マカロニと殿下に気づいて、挨拶に来る。余裕しゃくしゃく。しかも京子は伝票を二人に押し付けて出ていく「一万二千円です」。マカロニ、給料日前でオケラ(笑)

 レストランの外で、先ほどの男(土方弘)たちに拉致されそうになる京子。殿下が駆けつけるが、逆にボコボコにされ、京子とともに殿下も誘拐されてしまう。

 やがて京子のマンションから、拳銃密輸で指名手配中の奥村(土方弘)の指紋が発見される。奥村はボスもよく知っていた。「拳銃密輸の大手商人として知られた秋山の弟分だ」。裕次郎さんが初めて殺し屋を演じた『赤い波止場』(1958年)で土方弘さんは、名うての殺し屋を演じていたから昔馴染みでもある。「だんだんわかってきたぞ。とにかく殿下と女スリの行方を探すんだ」。

 偽札工場。秋山(武藤英司)が京子に「あんたが仲間からスリとった財布、どこへやったか、正直に教えてくれないか?」「もともと持ってないものが、あるわけないじゃない」「そんなごまかしは通用しないね」。秋山役の武藤英司さんは「月光仮面」の赤星博士ことサタンの爪を演じていた人。

 監禁される刑事と女スリ。「すまなかったな君。僕がついていながら、こんなことになってしまって」とフェミニストぶりを発揮。秋山と奥村は京子と殿下の会話を盗聴している。殿下「ところであの金はどうしたんだ?」京子「持って出るには出たわ」「じゃ、どこに隠したんだ?」「あなたのポケット」。『エノケンのちゃっきり金太』みたいな女の子だな! 全て聞いていた秋山たちが財布を取りに地下室へ向かう。その間に、殿下は「この偽札を敵の財布にこっそり入れることはできないかな?」と京子に聞く。

 「敵が知らずに偽札を使えば、監禁されていることを知らせることができる」。殿下、ナイスアイデア。クレージー映画みたいな展開になってきた。そこへ奥村たち「おとなしく財布を出しな。おめえたちの話はすっかり聞いたんだよ」と殿下に迫る。殿下の財布を奪おうとする奥村たち。「やめて!やめてったら」その間に京子は、偽札を秋山の財布へ。「刑事さん、全部おしまいよ。財布を渡して」。

 秋山は殿下の財布を確認して「一枚足りないじゃないか?」と慌てる。しかし結局は「一枚ぐらいバレたからって、どうってことはない」と開き直る。「俺たちが作ったこの偽札は、もともと日本で使う気はなかったんだ」。国外へ持ち出して拳銃を密輸しようと言う算段である。そこで、殿下「何か食わしてくれないか。腹が減って仕方がない」。秋山「いい度胸だ」と財布から、京子が忍ばせた偽札を部下に渡して、中華料理店から出前を取らせる。エビチリなど豪勢なメニュー。作戦成功! 果たして殿下が偽札に書いたメッセージは捜査第一係に届くのか?

 一夜明けて、朝の9時。「これであたしたちもおしまいね」「いや、あの音が聞こえている限りは大丈夫だよ」。偽札工場では印刷機がフル回転。せっせと偽札作りの真っ最中。しかし、印刷機が止まる。殿下と京子。緊張する。しかも床にはネズミの死骸が、あの出前を食べていたら・・・ 

 死んだふりをする殿下と京子。「どうします?こいつら」「松尾と同じように下水へ投げ込め!」奥村は京子を運び出そうとした瞬間、京子は拳銃を見事に奪う。「拳銃はこっちよ」と京子。形勢逆転。逃げ出す京子と殿下。しかし秋山たちが様子を伺いに来て、銃撃戦が始まる。
 
 二手に別れて逃げ出す京子と殿下。階段を使ったアクション。京子は風呂場の湯船に隠れる。ほとんどクレージー映画かドリフ映画だね。大野克夫さんの音楽じゃなければ、アクション・コメディのノリでもある。なんとか京子が逃げ出そうとドアを開けた瞬間。「キャー!」と絶叫。それを聞きつけ殿下が戻ってくる。偽札団と再び乱闘。

 一方、中華料理屋では女将(岸井あや子)が売り上げを計算して、伝票と現金が合わないと嘆いている。例の偽札の「ケイサツに連絡乞う 島」の書き込みをチラリと見てスルー。出前持ち「本物かも知れませんよ」女将「本物じゃなきゃ困るわよ」「僕が言うのは本物の偽札っていう意味ですよ」。そこで女将、偽札に気づく。これも喜劇映画のノリ。

 一係にようやく殿下からのメッセージが届く。偽札工場では殿下VS偽造団の銃撃戦。ようやくボスたちが現場に駆けつける。秋山と奥村は、悪あがきして、殿下と京子を殺して逃亡しようとしている。しかしゴリさん、山さん、長さん、マカロニが密かに偽札工場に忍び込んで・・・ 

 殿下は撃ちすぎて弾切れ。奥村と秋山「お前たちを人質にして逃げるんだ。出てこい!」と呑気だね。そこへボス「その必要はない」。一件落着。かくして偽札団は一網打尽。

 京子「ありがとう殿下」「礼はいらないよ。その代わり、今度はきっと君を、スリの現行犯で捕まえてやるからな」「さあ?あなたに捕まえられるかしら?」。

 再び「渋谷駅経由中野行き」京王バス。満員の車内、殿下の警察手帳をまんまとスル京子。しかし殿下は気づかない。

 給料日の捜査第一係。ボスが殿下に「警察手帳、どこへやった」「あれ?」「全くしょうがない奴だ」。ドアを開けて入ってきたのは京子。「これ、あなたのでしょ?」怒った殿下「君はもう!」。そこで京子「ごめんなさい」と両手を差し出す。でた!大原麗子さんの「萌え」攻撃!「お前のおかげで彼女は足を洗う気になって自首してきた。逮捕してやれ」とボス。みんなの前で、京子に手錠をかける殿下 、デレデレの巻(笑)


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