『ウィンチェスター銃'73』(1950年・ユニバーサル・アンソニー・マン)
6月11日(土)娯楽映画研究所シアターは、アンソニー・マン監督&ジェームズ・スチュワートコンビの佳作西部劇『ウィンチェスター銃'73』(1950年・ユニバーサル)をアマプラからスクリーン投影。
「西部を征服した銃」と名高いウィンチェスターライフル”M 1873”を手にした人々が数奇な運命を辿っていくという「舞踏会の手帖」式のユニークな構成。だがオムニバスではなく、ジェームズ・スチュワートの主人公と敵対するさまざまなキャラクターが、次々とこの銃を手にしていくことから・・・といった展開。ロバート・L・リチャーズとボーデン・チェイスによる脚本が見事で、しかもアンソニー・マンのキリリと引き締まった演出で91分に収まっているのもイイ。
しかもワイアット・アープ(ウィル・ギア)が保安官のドッジシティに始まり、カスター将軍が壮絶な戦死を遂げたリトル・ビッグホーンの闘い直後という設定。西部劇好きのイマジネーションを刺激してくれる「マルチバース感」が味わえる。
1876年7月4日。ドッジシティにやってきたリン・マカダム(ジェームズ・スチュワート)と相棒の”ハイ・スペード”ジョニー・ウィルスン(ミラード・ミッチェル)。リンは父の仇であるヘンリー・ブラウン(スティーブン・マクナリー)を追っていた。ドッジシティでは建国記念祭が行われ、保安官ワイアット・アープから誘われてリンは射撃コンテストに参加。なんと仇敵ヘンリーも参加していて、凄腕の二人は最後まで残る。やがてリンは優勝、賞品として1000挺に一つの出来と呼ばれる「ウィンチェスターM 1873」を得るも、ヘンリーに銃を奪われてしまう。
この銃がやがて、武器商人・ラモントの手にわたり、それが先住民スー族の酋長・ヤング・ブルに奪われる。その度に多くの血が流れる。さらにヤング・ブルはスー族を率いて騎兵隊を襲撃。リンとハイ・スペードは、ドッジシティのダンサー・ローラ(シェリー・ウィンタース)とその恋人・スティーヴ・ミラー(チャールズ・ドレイク)とともに騎兵隊キャンプで応戦する。
騎兵隊の兵士として登場するのが若き日のロック・ハドソン。出番は少なく、すぐに戦死してしまうのだけど、のちのスターの大器を感じさせてくれる存在感!
カスター将軍を戦死させたスー族との闘いの緊迫感。満身創痍の騎兵隊とともに戦うジェームズ・スチュワートがカッコいい。やがてヤング・ブルは死亡。現場に残されたウインチェスター銃は、スティーブの手に渡る。
このウィンチェスター銃が次々とサイド・キャラクターの手にわたり、それを手にしたものは必ず壮絶な死を遂げるという展開は、まさに歌舞伎や映画でお馴染みの「妖刀村正」と同じパターン。手にしたものは呪われるアイテムである。
で、ローラの恋人・スティーブが、ならず者ワコ・ジョニー・ディーン(ダン・デュリエ)の配下で、銃を巻き上げられた上にスティーブは殺されてしまう。しかもワコはヘンリーの強盗団の一味だった。
というわけで、この生々流転がハイテンポの展開で描かれて、クライマックスはリンとヘンリーの一騎打ちとなる。ジェームズ・スチュワートのタフガイぶりと、復讐に取り憑かれた男の壮絶、そして「何が正しいか」の西部劇の「正義」が貫かれている。
最後の最後、ウィンチェスター銃'73を手にするのは誰か? カタルシスと運命の不思議。見事な見事な西部劇の佳作!
そういえば小林旭「ウインチェスター73」(作詞:良池まもる 作曲:米山正夫)という傑作ウエスタンソングを、のちに「赤いトラクター」を手がける米山正夫が作っているが、本作とは関係ない。映画のタイトルイメージをいただいたインスパイアソングだけど、マイトガイの手にわたると無敵の無限連発銃になってしまいそう(笑)
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