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太陽にほえろ! 1973・第43話「きれいな花にはトゲがある」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。

「太陽にほえろ!」第43話「きれいな花にはトゲがある」(1973.5.11 脚本・小川英、鴨井達比古 監督・斎藤光正)

 今回もゴリさん回。シリーズ初の派手なカーアクションが楽しめる。第38話「オシンコ刑事誕生」以来、捜査一係の全員が顔を揃えた。監督はこれが初の「太陽〜」となる斎藤光正。昭和33(1958)年に日活に入社した斎藤監督は、吉永小百合さんの『斜陽のおもかげ』(1967年)でデビュー。70年代からテレビで活躍、その後『戦国自衛隊』(1979年)など角川映画でヒット作を次々と手がけることになる。

 三日おきに、捜査一係に「ゴリさん宛」の美しい花が届く。みんなに冷やかされるゴリさんだが、心当たりはない。そんなゴリさんは裁判の打ち合わせで検事局へ向かう。すれ違いで七曲署を訪れた女性が「誠さん。石塚誠さん」と、ゴリさんを訪ねてくる。彼女の名前は西田とも子(二本柳敏恵)。挨拶するボス。「誠さんからいつもお話は伺ってます」

 「本当は誠さんに来ちゃいけないと言われてるんですけど」ととも子。ボスのタバコに自然と火をつけるとも子。そのマッチのクラブ「derei」に出かけるボスとゴリさん。ゴリさんには似つかわしくない高級クラブである。ボスにはピッタリだけど(笑)何のことやら、さっぱりわからないゴリさん。「いらっしゃいませ」とも子が席に。「どうしたの?あれほどお店に来ないでって言ったのに、誠さん」

 ホステスたちはとも子とゴリさんが婚約していると思っている。「冗談が過ぎる!」と声を荒げるゴリさん。「あなた一体どうしたの?」と世話女房のように馴れ馴れしいとも子。「あなた、今になって私と結婚する気がないというの?」ゴリさんがとも子にプロポーズしていたようである。とも子が怒り出す。何かがおかしい。

 署長室に呼ばれるボス。なんととも子の弁護士・沢村(高野真二)が、結婚詐欺、暴行傷害でゴリさんを訴えるという。「君はその現場にいたのかね?」相変わらず事なかれ主義の七曲署署長(南原宏治)。沢村弁護士によれば、ゴリさんが結婚の約束をして、5万円を騙し取ったという。

 仕方なくゴリさんの取調べを始めるボス、山さん、マカロニ。ゴリさんの出生地は長崎県長崎市大浜町。現住所は新宿区藍住町まどか荘。アパート住まいなんだね。「いい加減にしてください」とゴリさん。「続けろ」とボス。長さんはとも子に事情聴取。ゴリさんは2月13日に、経堂の「ジュリー」というスナックでプロポーズ。その後に5万円を貸したととも子。

 ヒッチコック映画みたい。巻き込まれ型サスペンスだね。とも子は、ゴリさんとベッドの予約をしたとまで言い出す始末。「狂ってるか、何か狙いがあってやっているか、それが問題だな」と山さん。ボスはとも子のことを徹底的に洗えと指示する。いてもたってもいられないゴリさんに「待ってろよ。俺たちの腕の良さは知ってるだろう」と山さん。頼もしいね。

 東名信用金庫では、その日、西田とも子の印鑑と通帳を持って5万円をおろしに来た男がいると、行員の浜口が証言する。その上司は東宝バイプレイヤーの加藤茂雄さんが演じている。シンコが差し出す写真のなかからゴリさんを選ぶ浜口行員。殿下がベッドの予約もしていると店員から聞き込む。長さんはスナック「ジュリー」のマスター(鹿島信哉)からゴリさんがプロポーズしていたと証言する。

 ボス「現在のところお前の容疑は決定的というわけだ」。腹が立って飯を食いにくというゴリさんに付き合うボス。スパゲッティを食べながら「まさか俺を疑っているんじゃないでしょうね」「俺は事実だけを尊重する」。その二人を隠し撮りされて「七曲署 悪徳刑事をひた隠し 女を欺した上暴行た障害」との新聞記事が掲載される。

 ボスは会議で署長から大目玉。「捜査に私情を挟むのは禁物だ」「私情を挟んでいるつもりはありません」。署長から乱暴者のゴリさんを「甘やかしていた君の責任は大きい」と罵られ、いきりたつボス。「あなたに石塚刑事の何を知っているというのですか?」ゴリさんはそんな男ではないと弁護するボス。「直ちに謹慎させろ。今後、この件は2係に移す」と署長。

 ゴリさん、辞職願をボスに出す。「自分のことは自分で始末します」と出て行こうとするが、ボスに「石塚誠。逃亡及び、証拠隠滅の恐れがあるので、お前を逮捕する」。山さんに豚箱に入れられるゴリさん。「これは何でもひどいよ!」

 マカロニ「あんた平気なんですか?」と山さんに食ってかかる。ボス「ゴリがシロだと信じるか? よし、行け。責任は俺が取る!」カッコいいね。シンコ、殿下、長さんは再び関係者に話を聞きに行く。一方、ボスは検察庁へ。検事(奥野匡)によれば、ゴリさんは政財界の怪物・桐野大吾を追っていた。その有罪の決め手が「石塚刑事の証言にかかっている」という。

 他の二人の証言者は、前言を翻してしまったという。殺人事件の被害者が絶命する前に「桐野大吾」の名前を言っていたことを、医者と看護婦、そしてゴリさんが聞いていた。なのに二人は証言を翻してしまった。今回の件でも証言者たちは「私はその男が石塚刑事だと思う」の一点張りで、同じロジックを使っていた。

 証言者たちは買収と脅しにかけられていることは間違いない。ならば崩せるとボス。ゴリさんの留置期限が切れる明日の午後3時までに、山さんは医者と看護婦、マカロニは沢村弁護士(高野真二)を崩しに行くことに。桐野大吾の初公判は明後日。しかし医師(野村明司)も看護婦も前言を翻したまま。山さんは「人の一生どころか、ご自分の一生をめちゃめちゃにしないように。ようく考えるんですな」。

 シンコは信用金庫の浜口行員、殿下は家具屋の店員、長さんはスナック「ジュリー」のマスターに、それぞれ粘る。勾留中のゴリさん。臭い飯をぱくつく。食欲だけは旺盛である。スナック「ジュリー」の近くで、粘る長さんを見つめる男。「しつこい奴らだぜ全く」。タイムリミットは迫る。新宿の雑踏。街ゆく人々。あと15分で勾留期限が切れる。

 一係に帰ってくる長さん。シンコ「悔しいわ、みんな嘘をついているってわかっているのに」。山さんから「ダメだった」と電話。意気消沈する刑事たち。ボスは留置室へ。「時間切れで釈放だ。ただし、一つだけ頼みがある。聞いてくれるな」とボス。

 沢村弁護士事務所に赴く、ボスとゴリさん。「藤堂さん、私は示談には応じられませんよ」「ごもっともです。本人も心を入れ替えて、約束通り、西田とも子さんと結婚すると言ってるんです」。呆然とする沢村弁護士。「本人が折れているのに訴えられますか?」

 ボスは翌日の裁判のことを弁護士に告げる。顔色が変わる沢村弁護士。事務所から車で出たボス「俺は沢村を張る。お前は西田とも子に直行しろ。いいか、恋人抱きしめて放すんじゃねぇぞ」。とも子のマンション。花屋が花束を届ける。「誰かしら」カードには「石塚誠」(笑)そこへ沢村弁護士から電話。「早晩、君も逮捕される。すぐにそこをでなさい」と指示。

 部屋を出るとも子に、殿下が声をかける。「彼に会ってやって欲しいんです」「私会いたくありません」「そう言わずに会ってください。彼は本当に後悔しています」そこへ男が割り入ってエレベーターが動き出す。一階にはシンコと長さんが「石塚さんに会ってください」。そこへ男たちが邪魔に入る。逃げ出すとも子がフォード・フェアレーンに乗り込む。

 その車を追うゴリさんのクラウン覆面車。シリーズ初のカーチェイスが始まる。車のなかでとも子「あんたたち、私を殺す気なの?」髭の男に殴られるとも子。ゴリさんの車が追いつく。「おい、奥の手を出せ」壮絶なカーチェイス!粘るゴリさん。ジグザグ走行する敵のフォード。「ブリッド」というわけにはいかないけど、当時、テレビ映画でここまでのカーアクションはなかったので、子供の頃、大興奮した。

 トラックを避けきれず、石油缶の山に突っ込む敵のフォード。爆発!ゴリさんがとも子を助け出した直後、車は大爆発!一方、中華料理店で食事をする桐野大吾(山本武)と弁護士を訪ねるボス。「お久しぶりですね。桐野さん」「なんのようだね」「刑務所に入った時の心得でもお教えしようと思いまして。西田とも子は逮捕されました。お付きのものと一緒に。おとなしくしていれば執行猶予の可能性もあったのに。私の部下を罠にかけようとしたのが、あなたの間違いでしたよ。じゃ、いずれ裁判所でお会いしますか?」

 七曲署へ花束を持った女の子が近づく。ゴリさんは拳銃と手帳を返してもらい刑事復帰。花を買ってきたのはシンコだった。








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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
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