見出し画像

『怪談蚊喰鳥』(1961年・大映・森一生) 妖怪・特撮映画祭で上映

本日開幕「妖怪・特撮映画祭」!スクリーンでは初見となる、森一生監督『怪談蚊喰鳥』(1961年・大映京都)を観た。角川シネマ有楽町のロビーには、大魔神の荒々しい姿が観客を迎えてくれる。ロビーには、ロビーカードが貼られていて、貴重な台本やプレスシートも展示されている。

画像3


画像1


宇野信夫原作を、橋本忍構成・監修、国弘威雄脚本による「文芸怪談映画」(当時のコピー)。

 江戸の寺町、墓場の側にある長屋に住む、常磐津の師匠・秋次(中田康子)は、色香漂う年増女。肩凝りがひどく、流しの按摩・辰の市(船越英二)を贔屓にしている。ある夜、放蕩者の情人・幸次郎がやってきて、いつもの金の無心。情に絆され、一両を渡すて、按摩を探してくると出て行ってしまう。すると玄関に、辰の市が立っている。その不気味な様子に、驚く菊次。肩を掴まる手も冷たく、まるで死人のようだった…

 トップシーンで、いきなり幽霊が登場する。宇野信夫さんの原作は「死んだものより、生きている者の方が怖い」がテーマ。人間の欲と業が剥き出しとなるドラマが、ここから始まる。

 菊次がうとうとしていると、玄関にまた辰の市が立っている。しかし顔には痣がない。聞けば、辰の市の弟・徳の市(船越英二)で、兄は二日前に、菊次に恋焦がれるあまりに、亡くなったという。

 この徳の市、人あたりが良いが、図々しい男で、菊次に惚れ込んで、とうとう居座り、亭主になってしまう。菊次の狙いは、高利貸しをしている徳の市の五十両。それだけあれば、幸次郎と朝寝朝酒で暮らせると、徳の市をたらしこんでしまったのだ。

 幸次郎は、菊次よりも金目当て。徳の市は身体目当て。三人とも、欲にかられている。ほとんどのシーンが、中田康子さん、船越英二さん、小林勝彦さんの三人芝居で展開される。

 船越英二さんの居直りっぷりがいい。小林勝彦さんに、殴られてひどい目にあって、追い出されてもすぐに戻ってきて、下手に出る。なんせ五十両の大金(亡くなった兄貴のもの)があるので、それが小林勝彦さんと中田康子さんの弱みなのを知っているからだ。

 で、怪談映画の定石通り、徳の市を毒入りの鯰鍋で毒殺しようとするのだが・・・ さすが構成・橋本忍先生だけあって、三人三様の欲望が、どんどん恐ろしいことになっていく。で、クライマックスは、それぞれの思惑が錯綜して、怪談映画としても、かなり怖い展開となっていく。

 他に登場人物は、寺の住職・寺島雄作さん、寺の小僧・善竜に丸凡太さん、菊次の世話をしているおろく・村田扶実子さんに、役人・丹羽又三郎さんぐらい。主演の三人と幽霊(船越さん二役)の芝居をたっぷり味わう楽しさ!

 倉嶋暢さんの音楽も現代音楽的でノイズミュージックみたいで、それが不気味で、効果的である。

この夏「妖怪・特撮映画祭」で上映!

画像5

画像4

画像2





よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。