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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年3月28日(月)〜4月3日(日)

【佐藤利明の娯楽映画研究所】生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展 」について語っております!

3月28日(月)『泣いて笑った花嫁』(1962年・松竹・番匠義彰)・『ウナ・セラ・ディ東京』(1965年・松竹・番匠義彰)・『モーガン先生のロマンス”Vivacious Lady”』(1938年・RKO・ジョージ・スティーヴンス)

今日はアカデミー賞受賞式だけど、支度をして阿佐ヶ谷へ。今日は番匠デー。番匠義彰『泣いて笑った花嫁』(1962年)、『ウナ・セラ・ディ東京』(1965年)を観ます。

『泣いて笑った花嫁』は、花嫁シリーズ最終作にして、集大成。観客的には「笑って笑って小金治」でもあります。藤山寛美さん、芦屋雁之助さん、南都雄二さんの関西勢VS桂小金治さん、八波むと志さん!ああタノシミ! いやぁ桂小金治師匠に大笑い! 最高でした! 番匠義彰監督と鰐淵晴子さんにとって松竹でのラストフィルム『ウナ・セラ・ディ東京』を再見。シンプルな構成のメロドラマだけど何回観てもグッとくる。エピソードてんこ盛りの番匠喜劇と真逆の味わい深い僅か2週間の切ない恋。鰐淵晴子さんの美しさ!川又昂さんの撮影がこれまた見事!

ハリウッド・コメディ研究が止まらない(笑)昨夜は、本邦未公開、ジンジャー・ロジャースとジェームズ・スチュワートのロマンチック・コメディ!『モーガン先生のロマンス』(1938年・RKO・ジョージ・スティーヴンス)を堪能!

3月29日(火)『ナイトメア・アリー』(2021年・FOX・ギレルモ・デル・トロ)・『フィラデルフィア物語』(1940年・MGM・ジョージ・キューカー)・「大阪野郎」(1961年・松竹京都・大曽根辰保)

ギレルモ・デル・トロ監督『ナイトメア・アリー』(2021年・FOX)。いやぁ、ここまでオリジナル『悪魔の往く町』に倣っているのね。好きなんだろうね。オレも好きだけど。ブラッドリー・クーパーがタイロン・パワーに見えて仕方がなかった。インスパイアではなく完全リメイク。前半の見世物小屋の悪趣味、ブラッドリー・クーパーがイキイキとしていく中盤、1940年代のFOXのフィルムノワールのムードを再現した後半。女優陣が素晴らしい! リリス・リッター博士 (ケイト・ブランシェット)、“モリー”(ルーニー・マーラ)、ジーナ(トニ・コレット)。いずれも1940年代のハリウッド映画から抜け出してきた様! オリジナルを観てると興味倍増であります。ああ、ここを膨らましたのか! あ、そのまんまなのね!とか。とにもかくにも、心霊詐欺に御用心、御用心!物足りないと思う方も、過剰だと思う方も、おられると思いますが、デル・トロは、モラルも感覚も、キャラクターも1940年代のFOX映画の世界を再現したかったんだろうなぁと。ピーター・ジャクソンの『キングコング』(2005年)のように、好きな映画をパワフル・リメイクしたという点では成功していると思う。

『ナイトメア・アリー』の150分は『ザ・バットマン』同様、眺めていて丁度いい体感時間だった。オリジナル『悪魔の往く町』は112分だったから、どうしても膨らます必要がある部分を足せばそれくらいになる。その膨らました部分が「デル・トロ」なんだよなぁと思いながら。ケイト・ブランシェットのファム・ファタールぶりは、オリジナルのヘレン・ウォーカーと双璧。つまり方向性が同じなのがいい。1940年代フィルムノワール的悪女に、たっぷりと騙される快感というか(笑)『悪魔の往く町』はタイロン・パワーの主演作なのでハッピーエンドだったけど『ナイトメア・アリー』はあのラストのブラッドリー・クーパーのセリフで終わる。改変したのではなくその「手前」で終わらせた。そりゃそうだろうなぁと。だから脳内では絶対にありえないハッピーエンドを観てしまった(笑) それほどオリジナルと「ほぼ同じ」というのが面白かった。ただ観客を選ぶ映画かもしれないけど。僕は好きだなぁ。

『フィラデルフィア物語』(1940年・MGM・ジョージ・キューカー)
これぞハリウッド・コメディのクラシックス!キャサリン・ヘップバーン、ジェームズ・スチュワート、ケイリー・グラント夢の饗宴!

フランク永井さん主題歌、大木実さん主演『大阪野郎』(1961年・松竹京都・大曽根辰保)。豪華キャストによる、ディープ大阪の暗部を鋭く抉る社会派アクションの筈が、登場人物の行動、性格の脈絡のなさで、行き当たりばったりの展開が、観るものを混乱させる。一番ブレる大木実さんのヒーロー。後半の展開に唖然とした。なんかスゴい映画を観てしまった^_^

『大阪野郎』(1961年・松竹京都・大曽根辰保)は、夫・名和宏さんに娼婦として売り飛ばされた妹・山田幸子さんの行方を探す兄・大木実さんが、ディープ大阪の売春組織に挑むアクションかな? と思って観ていると、浪花千栄子さん(イヤミみたいな入れ歯!)、伴淳三郎さん、藤山寛美さん、曾我廼家五郎八さん、曾我廼家明蝶さんらが続々登場して、それぞれのキャラの脱線があり、さらには大ボス・遠藤辰郎さんが名和宏さんを排除して、高野真二さんを盛り立てる組織の話になったり。

大木実さんに惚れたオートバイ娘・環三千世さんの父・明蝶さんかボスに騙されて破産したり。清純な島かおりさんと環さんと大木実さんの三角関係もあり。

でもって、やっと見つかった妹が花柳病で兄の顔もわからなくなって、名和宏さんのことしか分からないので、二人を一緒にさせてやろうと、大木実さんが苦渋の決断。しかし名和宏さんは妹を殺して逃走。

観ているこちらが大混乱。ならば、オレが妹の仇を討つ!と大木実さんの復讐劇となるか?と観ていたら、名和さんに有金奪われて恨みを抱く伴淳さんに先を越されてしまう。伴淳さんが名和宏さんを殺してしまうのだ。

結局、90分かけて何も解決しない、誰も得をしない。藤山寛美さんが労務者だと思っていたら医療過誤で逃亡中の医者であることが唐突に判明したり。視点がバラバラなので、観客が混乱してしまう。この行き当たりばったり感、かなりの破綻ぶりで、大珍品に!

翌年.中平康監督が撮る『当たり屋大将』(1962年・日活)のような作品になり得る要素だけど、大曽根辰保監督の演出は、風俗喜劇のスタンスで、何が問題なのか何を訴えたいのか、観客には一向に伝わらない。ただただワイルドな大木実さんを楽しむことが出来るのはイイ。水島道太郎さんの医者の性格もわからないし。

3月30日(水)『ベルファスト』(2021年・アイルランド・イギリス・ケネス・ブラナー)・『百万人の音楽』(1944年・MGM・ヘンリー・コスター)

ケネス・ブラナー脚本・監督『ベルファスト』(2021年・アイルランド・イギリス)。本当に素晴らしかった!”

いよいよフィナーレが迫ってきました。明日、ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰:娯楽映画のマエストロ」『見上げてごらん夜の星を』『明日の夢があふれてる』を観る予定。今特集、23作品コンプリート。1963年の坂本九さん、1964年の柏木由紀子さん。お2人が出会う前に、それぞれ番匠映画に出ていたのです。ぼくにとっては幸福な2本立て

今日からディズニー+でマーベルのドラマ「ムーンナイト」がスタート。なので、今日できることは明日に伸ばして、これからスクリーンを張って、プロジェクターを起動させますよ。明後日は『モービウス』初日だし… 

『百万人の音楽』(1944年・MGM・ヘンリー・コスター)
久々のMGMミュージカル研究。なんとアマプラでジューン・アリスン&マーガレット・オブライエンの作品が観れるのです!

3月31日(木)『見上げてごらん夜の星を』(1963年・松竹・番匠義彰)・「明日の夢があふれてる」(1964年・松竹・番匠義彰)・『姉妹と水兵』(1944年・MGM・リチャード・ソープ)

週に2回の番匠デーも今日がフィナーレ。これからラピュタ阿佐ヶ谷で番匠義彰監督『見上げてごらん夜の星を』『明日の夢があふれてる』を観ます。本当に幸福な1ヶ月半でありました!

2月20日にスタートしたラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰:娯楽映画のマエストロ」全23作品上映、いずれも沢山の方々にご覧頂き、番匠映画の面白さが定着したのが本当に嬉しくて、嬉しくて。ぼくも初スクリーン作も多々あり、発見の喜びの日々でした。やっぱり、映画はみんなで一緒に笑って観るのが一番!

続きましては、番匠義彰監督『明日の夢があふれてる』(1964年・松竹)。ラピュタのスタッフが「天勝」の箸袋を作成!見事です!多幸感あふれる番匠映画特集のファイナルに相応しいニュープリント上映!

ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰:松竹娯楽映画のマエストロ」。全23作完走!ラストは番匠喜劇の集大成『明日の夢があふれてる』。佐野周二さん、桂小金治さん、大泉滉さん。初期からのレギュラーも勢揃い。「花嫁シリーズ」のフォーマットで安定の面白さ!鰐淵晴子さんの強情な性格の若女将が最高に可愛い‼️

『姉妹と水兵』(1944年・MGM・リチャード・ソープ)
大好きなミュージカル映画! ジューン・アリスンとグロリア・デ・ヘイブンの可愛さ! これぞ「ザッツ・エンターティンメント!」の原点!

4月1日(金)『モービウス』(2022年・ソニー・ダニエル・エスピノーサ)・『三人娘乾杯!』(1962年・松竹・番匠義彰)・『泣いて笑った花嫁』(1962年・松竹・番匠義彰)

ダニエル・エスピノーサ監督『モービウス』。シンプルな構成で面白い。『アイアンマン』第一作みたいに久々に因果関係なしのヒーロー誕生を味わう。ジャレッド・レトがエキセントリックなモービウスの苦悩を好演。エンディングでマルチバースだったのねと気付く。まさか奴が出てくるとは!

明日の鰐淵晴子さんトークに備えて、『三人娘乾杯!』(1962年・松竹・番匠義彰)・『泣いて笑った花嫁』(1962年・松竹・番匠義彰)を娯楽映画研究所シアターのスクリーンで二本立て鑑賞。やっぱり面白い。「あれよあれよ」のハイテンション・コメディ。

4月2日(土)ラピュタ阿佐ヶ谷「鰐淵晴子さんトークショー」・『ワーズ・アンド・ミュージック』(1948年未・MGM・ノーマン・タウログ)

阿佐ヶ谷に到着。花粉が多く人の波がすごい。コーヒーでひと息。番匠義彰特集も今日が千秋楽。予想を遥かに超えて、大盛況、大評判で本当に良かった。本当に良かった。

ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰:松竹娯楽映画のマエストロ」2月20日(日)から42日間、23作品、良好プリント(2作品ニュープリント)上映。本日の『明日の夢があふれてる』『ウナ・セラ・ディ東京』『見上げてごらん夜の星を』の上映を持って大団円。14時30分からは番匠映画6作品のヒロイン、鰐淵晴子さんをお迎えしてのトークショー。番匠映画とともに、この1ヶ月半、阿佐ヶ谷に通ったファンの皆様と共に、楽しい一時を過ごしました。

ラピュタでの鰐淵晴子さんトークショーは、これで三度目なので、二人ともリラックスムードで、番匠映画の現場。番匠監督の演出、作品の面白さを、よもやま話的にお話いただいた。7歳での『母子鶴』(1952年・大映)、10歳での『ノンちゃん雲にのる』(1955年・新東宝)での映画出演のお話。

「リボンちゃん」広告の晴子ちゃんを見て「ノンちゃん〜」に抜擢した熊谷久虎監督、番匠義彰監督共に「原節子さんの義兄」であることの奇縁。映画界のお母さん・原節子さんのお話。そして松竹入社の頃の初恋物語…。14歳から20歳にかけての松竹時代のエピソードもたっぷり伺いました。

たくさんのお客様の幸福そうな笑顔。番匠映画の大団円のように「多幸感に満ちた」フィナーレとなりました。本当にありがとうございます!

5月からは衛星劇場で「生誕100年 番匠義彰特集」がスタートです。ますます「番匠旋風」吹き荒れますよ!

『ワーズ・アンド・ミュージック』(1948年未・MGM・ノーマン・タウログ)
眺めているだけで幸せ! ロジャース&ハートの伝記ミュージカル。これぞ MGMミュージカル! ジュディ・ガーランド、ジーン・ケリー、ペリー・コモ、メル・トーメ! 次々と歌って踊るソングブック映画。

4月3日(日)『美人劇場』(1941年・MGM・ロバート・Z・レナード)

note「佐藤利明の娯楽映画研究所」記事、なんと899本目の『美人劇場』です! ジーグフェルド・ガールの三者三様。MGMミュージカル・メロドラマ大作。ジュディ・ガーランドに陶然…


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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
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