バリ島からの『寅次郎音楽旅』
2008年11月26日発売となった、CD『男はつらいよ/寅次郎音楽旅~寅さんの”夢””旅””恋””粋”~』(ユニバーサル ミュージック)。
「男はつらいよ」ファンの方々からの熱い感想を、あちこちから伝えていただいております。そうした数ある感想のなかでも、バリ島在住の画家で、生粋の寅さんファンとしてつとに知られている吉川孝昭さんのサイト「男はつらいよ 覚え書きノート」の「寅次郎な日々」で、このCDについての素晴らしい感想と分析がなされています。よろしければご一読ください。
11月26日付の「透明な悲しみを紡ぐ人 山本直純さんよ再び」と題するアーティクルです。
吉川さんとは以前よりメールを通じておつきあいさせていただいてきましたが、今回のCDの制作の裏側についてはブログに書いた以上の話はしておりません。にも関わらず、僕がどういう気持ちで、この仕事に向かったか、これまでのvapのミュージックファイルシリーズと、どういう風に違う位置づけで、このCDを制作したかをCDを聴いて、ご賢察されています。
既発売の「男はつらいよ」ミュージックファイルと、今回の「寅次郎音楽旅」は一部をのぞいて、曲が重複しないように構成されています。すでに七枚、ファンにとって宝物となっているCDを大前提に、しかもビギナーの方にも楽しんでいただきたい、そういう想いで、制作に携わらせていただきました。
この吉川さんの文章を読んでいて、佐藤利明の仕事を、ここまで理解してくださっている方がいたんだと、不思議な感慨に包まれております。同時に、見抜かれてしまったとも(笑)!
僕は、今回のCDをフラットに聴いていただきたい、構えずに山本直純さんと山田洋次監督、そして渥美清さんが創出した『世界』を音で楽しんでいただきたいと思って、こういう構成にしました。それは危険な賭けでもありました。 実は、それからが大変でした。8月~9月は、ほとんどを音源を聴く作業に費やしました。その原動力となったのが、僕が子供の頃より親しんできた 「寅さん」映画の記憶と、思い入れだったと、吉川さんの文章を読みながら、改めて思いました。
『男はつらいよ』の素晴らしさは、山本直純さんの音楽の叙情の素晴らしさでもあり、山田洋次監督の音楽へのまなざしの素晴らしさでもあります。「寅次郎音楽旅」に収録された100トラックは、その世界の入り口でもあり、観客であるわれわれの「男はつらいよ」へのイメージをより膨らませてくれる、そんなCDとして長く親しんでいただければ、プロデューサーとしてこれに勝る喜びはありません。