太陽にほえろ! 1974・第83話 「午前10時爆破予定」
この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。
第83話 「午前10時爆破予定」(1974.2.15 脚本・小川英、柏倉敏之 監督・高瀬昌弘)
永井久美(青木英美)
城東大学病院院長(加藤武)
郡司教授(波多野憲)
安西成夫(武岡淳一)
吉岡勝(田利之)
城東大学病院の看護婦(東静子)
郡司教授の妻(川口節子)
大沢自動車修理工場長(鈴木治夫)
岩瀬ゆう子
渡辺市松
内山朋子
市川ひろし
予告篇の小林恭治さんのナレーション。「小包爆弾、時限爆弾による爆破事件が連続して起こった。そして大胆にも、第三の爆破が予告された。時刻はその日の午前10時、猶予は1時間半、仕掛けられた場所はどこか? 警察は全機動力を持って犯人を捜査したが・・・次回「午前10時爆破予定」にご期待ください。」
前回に続いて「青春学園シリーズ」や東宝版「鬼平犯科帳」を手がけてきた東宝テレビ作品のメイン監督である”オッサン”こと高瀬昌弘監督作品。「飛び出せ!青春」の優等生・中尾役の武岡淳一さんの起用や、マキこと青木英美さんの出番を増やすなど「飛び出せ!青春」ファンには嬉しい。今回は連続爆破犯による劇場型犯罪をテーマに、熱血教師役としてお茶の間に颯爽と登場した竜雷太さんの「熱血ぶり」がストレートに描かれる。この年の8月から1975年5月にかけて、連続企業爆破事件が日本中を騒然とさせることになるが、このエピソードはそれに先立つ半年前に放送された。
七曲署。巡査部長の昇進試験のための勉強を懸命にしているゴリさん。ジーパンがぶつかっても気づかない。「そんなに難しいもんですかね?」とジーパンの疑問に、長さんは5回も受験したと体験を話す。「4回も落第したわけ?」のジーパンの言葉にボスも吹き出す。和やかな朝の光景。殿下も「嫌ですね試験は、聞いただけでも寒気がしますよ」。ゴリさんがなぜ試験を受ける気になったのか? ボスは一言「縁談だよ」。ゴリさんは乗り気だけど、相手の親父が「ヒラ刑事には娘はやれない」と昇進が結婚の条件になっているとボス。よく知っているね。
焼き鳥屋。ゴリさんを囲んで、殿下とジーパン、飲んでいる。二人はゴリさんの試験合格を祈念しての飲み会である。「いつまでも平巡査じゃみっともないもんな」「俺たちは合格したら奢ってもらおうと思ってるんですからね」と殿下。ゴリさん、勉強の成果を披露して、みんなで大騒ぎの怪気炎。
朝、郵便配達が瀟洒な住宅に小包を届ける。妻(川口節子)が、囲碁をしている夫・郡司教授(波多野憲)に「小包です」と渡す。差出人不明の小包に「誰からだろう?」と訝しがる郡司教授。包みを開けると「世界文学全集〈第18〉ドストエーフスキイ 罪と罰」箱入り上製本である。本をケースから取り出した途端、爆発!
この「罪と罰」は1959年1月に河出書房新社が発行したベストセラーで、僕のうちにもこの全集があった。「ドストエーフスキイ」という表記に、時代を感じる。
パトカーが郡司教授宅に急行する。ゴリさんと山さんが現場検証にやってくる。教授の部屋では長さん、殿下が先に検証している。被害者の城東大学教育学部・郡司武彦教授は病院に運ばれた。病院のジーパンからの報告では、上半身にかなりの火傷を負っているが、生命に別条はない。現在のところ、犯人も動機も不明。箱から本を取り出すと爆発する仕組みになっていたと長さんが、山さんたちに説明する。鑑識の判断では、おそらくダイナマイトだろう。山さんは病院に向かうことに。
郡司教授の病室。山さんとジーパンが事情聴取にやってくる。「犯人は誰なんです!」と郡司教授。「何か心当たりはありませんか?」と山さん。「私、人に恨まれる覚えはありませんよ!」と激しく反論する。「私は、学生たちともうまく行ってたんだ」と怒りは収まらない。そこへゴリさんがやってきて、廊下に出た山さんに、郡司夫人の証言を伝える。最近、しきりに脅迫電話がかかっていた。相手は吉岡勝という予備校生だった。教授がアルバイトで教えていた予備校の生徒で、金持ちの御曹司で、教授に金を渡して裏口入学を持ちかけていた。夫人によればお金を無理矢理置いて行った吉岡は大学受験に失敗。それで教授を逆恨みしていた。しかも吉岡のマンションは七曲管内。「クサイですね」とジーパンはゴリさんと一緒に吉岡を洗うことに。
マンションの前。覆面車で張り込む、ジーパンとゴリさん。そこへ長さんが応援にやってくる。しかし、吉岡はまだ自室に戻っていない。管理人によると受験勉強のために借りているとのこと。長さんはゴリさんの試験が近いので、気を使って交代に来たのだ。長さんは自分の試験のことを思い出す。一日、聞き込みでクタクタになってから勉強をしていた。「吉岡みたいな甘ったれた受験とはわけが違いますからね」とジーパン。そこへ吉岡(田利之)がクルマで戻ってくる。ゴリさんが「吉岡勝だな」と声をかけた途端、逃げ出す吉岡。ジーパン、長さん、ゴリさん、吉岡を追いかける。
児童公園まで追い詰められた吉岡。ジーパンとゴリさんの挟み撃ちに合う。ゴリさんは強烈なパンチをお見舞いする。それ、やりすぎと思ったところで長さんが止めに入る。「郡司教授に爆弾を送った貴様だな?」とゴリさん。「僕じゃないよ」と否定する吉岡。「お前は教授を恨んでいた!」ジーパンも激しく詰問するが、吉岡は長さんの胸に泣き崩れ「ホントだってば・・・僕じゃないよ」と泣き叫ぶ。「刑事さん、お願い、電話のことは親父には内緒にしておいて!」。どうやら吉岡はシロのようである。
一係。また一から洗い直さねばならない。教授に教わった受験生で、不合格者全てに犯行の可能性がある。ダイナマイトのルートも不明だし、改めて出直し捜査を始めることに。そこへ電話。ボスが出る。
「どうだい?爆破事件の犯人の目星はついたかい?」
「誰だ?君は?」
「その犯人さ」
山さんの指示でジーパンが逆探知の手配に行く。
「楽しかったぜ、昨日は。だからもう一度花火を上げることにしたぜ」。
犯人は新たなる爆破予告をする。犯人は「ラスコーリニコフ」と名乗る。ボスは「罪と罰」の主人公なら主義主張があるだろう?と問いかけるが、相手は笑って答えない。ボス、インテリなんだね。というか、この頃は嗜みとしてこういう文学の話題、みんな出来たような気がする。
「目的はなんだ?」「今まで俺に関心を持ってくれるものは一人もいなかった。爆弾のおかげでみんなが気にしてくれるもんな。名前は?目的は?まるでスターになったような気分だ・・・」。ボスが話を繋いでいる間に、犯人が荻窪の公衆電話からかけてきてることが判明。ジーパン、ゴリさん、長さん、山さんが動く。
「そんなことで世間を騒がして、何が面白い? もう一度考え直せ」ボスは続ける。「あんたとはもっと話したいけど、もう時間がない。俺はこれからすることがあるからな」「どうしても爆破させる気か?」「ああ、爆弾だってちゃんと用意してきたしな」「今度の狙いはどこだ?」「今にわかるさ」ここで電話が切れる。
電話ボックスに急行する覆面パトカー。すでに犯人の姿はないが、まだ付近にいるはず。徹底的に探しはじめるジーパン、長さん、ゴリさん、山さん。ゴリさんがすれ違ったバスの車内。「次は高町一丁目でございます」のアナウンス。多くの乗客が降りると、最後部の座席には青い包み紙の荷物が置かれたままになっている。バスの運転手バックミラー越しに不審な荷物を見つける。しかし爆弾は大爆発!
バスの現場検証をする鑑識課員たち。長さん、殿下、ゴリさん、山さんが車内へ。今回も本に爆弾が仕掛けられていた。間違いなく同一犯の仕業である。ジーパン、病院からやってくる。死亡者はいないが、重症が2名に軽症が4名。犯人を見たものはいなかった。誰もが気がついた時には紙包みが置いてあったと証言している。
一係。捜査会議が続けられている。バス爆破の状況を検証する長さん。犯人が乗車したのは「5丁目か、仲町ってことか?」とボス。山さんは「乗客の誰かが犯人を見ているはずだ」と聞き込みに出かける。ボスはゴリさんを呼び止めて「お前のこれ、電話番だ」。ボスの気遣いである。「あとは俺たちに任して」とジーパン。ジーパン、殿下、ゴリさん「例のやつ」と手を重ねて、焼き鳥屋に続いて「セッセっセ」をやる。
渋谷駅前バスターミナル。長さんが乗客たちに聞き込み。殿下もしらみ潰しに聞いて回ったが目撃情報はない。東急バスの車体のカラーリングが懐かしい。
一係、珍しく俯瞰から撮影。ボスは書類を見ているが、ゴリさん落ち着きなく、ウロウロして、久美に「少し落ち着いたら」と嗜められるが「落ち着いてんの俺苦手なんだよ」と歩き回っている。ボスが「試験まであと二日だぞ、この暇に勉強したらどうだ?」「試験なら大丈夫ですよ」と余裕たっぷりのゴリさん。「そうか。じゃ、俺がテストしてやろう」とボスが問題を出す。次々と正解となり、余裕綽々のゴリさん。ボスは三問目「爆発物犯罪告知罪とな何か?」を出す。「つまり、爆発物による犯罪が行われるということ。その犯人を知りながら、被害を受けるものが、警察に届けなかった場合の罪でありまして、5年以下の懲役、または禁錮であります」。流石のボスも感心する。そこで「第4問だ。公害事案に適用される主な法令名をあげよ」「まず、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、海洋汚染防止法、騒音規制法・・・」もう一つが答えられない。「忘れました」。久美は一つぐらい、いいじゃない、とゴリさんのもう勉強の成果を褒めるが、ボスは、試験は一つでも間違えたらダメだ「これは明日までの宿題だ。よく調べておけよ」と。和やかで楽しいシーン。
七曲図書館。ゴリさんが早朝から並んで、法令関係の書棚でお勉強している。その向かいの書架には、爆弾事件の被害者・郡司教授の著作が並んでいる。思わず手に取るゴリさん。その中の一冊に不審な書き込みを見つけ、司書に「この本を借りた人を知りたいんですが」と依頼する。
一係。ゴリさん、郡司の本の図書カードをボスに見せる。「安西成夫 東京都大田区馬込 勤務先・大沢自動車修理工場 学校・東学予備校」とある。ゴリさんが調べてみると、郡司の予備校の生徒で、城東大学の医学部を三度滑っていることが判明。本の書き込みの筆跡と、郡司宛ての郵便物の筆跡が同一のものだった。「図書館というところは、勉強するところじゃなくて、犯人の手がかりを掴むところなのかね?ゴリさん」と山さん。ゴリさんのお手柄である。早速、安西の勤め先の自動車工場へ向かう、山さんとジーパン、ゴリさんもついて行こうとすると、またしてもボスに呼び止められる。
「ところで宿題、どうした?」
「え?宿題?」
「事件と試験は別だぞ!」
「忘れました!」
大沢自動車修理工場。山さんとジーパンがやってくる。修理工場長(鈴木治夫)に警察手帳を見せるジーパン。「安西成夫はここですね?」と山さん。安西は四日前、事件の前日から行方不明だった。工場長によれば、安西は何を考えているかわからない「陰気な男」だったので、どこへ行ったか皆目見当がつかない。山さんは、安西の部屋を見せてもらうことに。
朝8時30分、捜査一係。安西の手がかりは掴めず、焦燥している一係の刑事たち。「部屋も整理されていたとなると、これは計画的な失踪だな」と長さん。予備校にも姿を見せず、試験に落ちて、自棄になっているものと思われ、何をするかわからない。それだけに次の凶行は食い止めたい。そこへゴリさんが出勤してくる。今日は大事な試験の日なのに・・・事件のことが気になるのだ。「でも10時からですから試験」と落ち着きがない。みんなに頑張れと励まされるゴリさん。そこへ電話がかかってくる、受話器を上げるボス。
「どうだい?爆破事件の捜査は進んでいるかい?」
「安西成夫だな?」逆探知開始!
「どうして俺の名前がわかったんだ?」
「隠し切れると思ったら大間違いだぞ!今、どこにいる?」
「それより、もっといいことを教えてやる。今度の爆破は城東大学病院だ」
「何?」
「時刻は今日の午前10時だ。今までとは違う。今日のは建物全体が吹っ飛ぶような威力のあるヤツだ」
自分を三度も不合格にさせた大学だから吹っ飛ばしてやる、究極の逆恨みによる爆破計画。爆弾の場所をボスに聞かれて「自分で探すんだな」と不敵な笑い声とともに電話は切られる。逆探知は間に合わなかった。「まず爆破を食い止めることだ」とボスの陣頭指揮で、捜査一係全員出動! しかしボスは「あ、ゴリ、お前、試験に行け! 事件のことは心配するな、その代わり、頑張れよ!」と部屋を出ていく。
東都大学病院・院長室。院長(加藤武)に午前10時の爆弾予告について話すボス。「なんですって!」。加藤武さんと裕次郎さんは、のちの「大都会-闘いの日々-」の原点とも取れる日活映画『男と男の生きる街』(1962年・舛田利雄)、『黒部の太陽』(1968年・熊井啓)でも共演している。「どこに?どうやって爆薬なんて仕掛けたんですか?」「心当たりはありませんか?」。ボスは全力をあげて捜査すると約束するが「万一のことを考えると、入院患者を退避させて欲しい」と依頼する。院長はしばらく躊躇していたが「わかりました。すぐに近くの病院へ退避させましょう」。
音楽とともに、患者の移送作戦が展開される。「慌てなくても大丈夫です」「落ち着いてください」ジーパン、長さん、山さん、殿下が、患者と職員を促す。
一係。ゴリさんが、学生服の安西の写真を見ている。たまりかねた久美「ゴリさん、もう9時よ。試験10時からでしょ。遅刻するわよ」と声をかける。しかしゴリさんは「もう少し待ってみよう。みんなから連絡が入るかもしれない」。
東都大学病院。院長は「これで患者の方は安心です。手術が一つあるんですが、これもまもなく終わるでしょう」。ボス「あとは我々に任してください」。そこへ看護婦(東静子)が「子供の手術が・・・思ったより重症で、だいぶ時間がかかりそうです」と告げる。東静子さんは東宝の大部屋俳優で『ゴジラ』(1954年・本多猪四郎)で、「また疎開、いやあね」と同僚と電車で話す会社員女性を演じていた。その後、納涼船でゴジラに襲われる女優さんである。
ここでタイムトライアルのサスペンスに「子供の手術が難航している」というさらなるハードルが用意される。お茶の間の視聴者はさらにドキドキする。手術室では、緊迫感の漂うなか、主治医による執刀が続けられている。廊下で待つ母親とボス。院長は、子供が心臓弁膜症の手術を受けていること、人工心臓を使用しているので目が離せないこと、移動は不可能であることをボスに伝える。現在の時刻は9時15分。院長は最善を尽くすと約束するが、執刀医たちが動揺しなければいいがと不安を漏らす。それを聞いていた母親「爆薬が仕掛けられたと言う噂は本当ですか!」と詰め寄る。ボスにしても苦しいところである。
「大丈夫です。心配はいりません。爆破は警察の手で必ず食い止めて見せます。お子さんの手術の成功だけを、祈ってあげてください」とボス。
一係、落ち着かないゴリさん。久美はゴリさんのコートを取って「もう時間がないわ、試験場に行かなくっちゃ」。コートを着せてもらうゴリさん。部屋を出ていく。「いってらっしゃい」と久美がボスの椅子に座ったとことで、ゴリさん戻ってくる。「みんなが必死になって爆発物を探してるんだ。ギリギリまで待ってみよう」とコートを脱ぐ。「でないと、俺の気持ちが済まないんだ」。もう一つのタイムトライアルである。いずれもリミットは午前10時。サスペンスがさらに高まる。
東都大学病院。病室で必死に爆弾を探す警察官たち。「徹底的に探すんだ」と陣頭指揮を取る山さん。渡り廊下を走るジーパン。あたりを探し回る殿下。長さんは靴のコインロッカーを点検する警察官に「どうだ?見つかったか?」と声をかける。ベランダから病室に入る殿下。病室のベッドに下まで隈なく探す。
一係。時刻は9時20分を過ぎた。部屋を行ったり来たりしているゴリさん。久美は「試験場まで30分はかかるんでしょう?早く行かなくっちゃ。せっかくみんなが心配してくれているんだから」と促す。決意したゴリさん「何かあったら知らせてくれよ」と出て行こうとすると電話が鳴る。
「俺だよ」
「安西、どこだ、どこに爆弾を仕掛けた?」
「大分慌ててるじゃないか病院も、爆破まであと39分、楽しみにしてるぜ、じゃあな」
なんとか食い下がろうとするゴリさんに「俺は勉強で忙しいんだから。最も落ち着いてできるか、わかないけどな」そこで電話が切れる。久美が録音したテープを再生する。「大分慌ててるじゃないか病院も」。この言葉からゴリさんと久美は、安西が病院の見えるところにいると推測。さらに「俺は勉強で忙しいんだから」の言葉に、久美は「病院の近くに、何かあるのよ、友達に家とか喫茶店とか」。ゴリさん「勉強」「勉強」と少し考えて「そうだ図書館だ」と思い至る。「あの図書館から確かに病院が見えた!」。久美の制止も効かずゴリさんは「人の生命がかかっているんだ」と図書館へ向かう。
東都大学病院。子供の心臓手術が続いている。時間は9時30分を回った。
七曲図書館。ゴリさんが到着。階段を駆け上がり、館内を探し回る。どこにも安西はいない。そこで屋上に上がると・・・安西成夫(武岡淳一)は双眼鏡で病院の様子を探っていた。「安西成夫だな」ゴリさんは螺旋階段にいる安西に近づく。しかし安西の手には、ダイナマイトが握られている。演じる武岡淳一さんは、「飛び出せ!青春」の優等生・中尾洋一役で、高瀬昌弘監督とは一緒に仕事をしていた。今回、久美の芝居場多いのも「飛び出せ!青春」のマキ役として高瀬監督に可愛がられていたこともある。「近づくな、ダイナマイトに火を付けるぞ」「馬鹿な真似はやめろ」。爆薬を仕掛けた場所を聞くゴリさん。しかし安西は「教えてなんかやるもんか! もうすぐだからな、花火が上がるのは、俺は見たいんだ」と笑いながら、ライターを弄んでいる。
東都大学病院。廊下では機動隊員が爆薬を捜索している。集音マイクでタイマーの音を探っているのだ。「聞こえます!」ついに見つけたか!ナースステーションのドアを開けると・・・目覚まし時計が9時45分を指していた。「もう一度はじめから調べ直すんだ」と山さん。ジーパン、殿下、長さんたちが手分けして探す。
手術室。時計は9時48分を過ぎたところ。手術は続いている。
図書館屋上。安西はゴリさんの話を聞いて驚いている。
「じゃ、みんな逃げたんじゃないのか?」
「子供が一人手術中だ。危険で移動もできない。その子供と医師たちの生命をお前は奪おうとしてるんだ」
「俺はちゃんと予告したんだ。どうなろうと俺の責任じゃない!」
「そんな言い逃れがきくか!死者が出たら言い逃れはできないんだぞ」
ゴリさんはゆっくりと安西に近づいていく。「もう一度考え直せ」「うるさい!」安西はダイナマイトに火をつけてゴリさんに投げつける。慌てて導火線の火を消すゴリさん。安西、螺旋階段をさらに上へ、追い詰めるゴリさん。安西の胸ぐらを掴んで「爆薬はどこだ!」「お前なんかにわかるもんか、俺の気持ちなんか!」「甘ったれるのはいい加減にしろ!」ここでも青春学園もの熱血教師の血が騒ぐ、ゴリさん!
「試験に落ちたのは、お前だけだと思っているのか?俺も今日は試験だった。俺にとっちゃ、本当に大事な試験だったんだよ!俺は怒っちゃいない。いいか、人間ってのはな、生きる勇気があれば、何度だってやり直しができるんだ!それが若いやつの特権だろ!お前は試験に落ちたのを、人のせいのように思っている。そいつは卑怯だ。若いくせに卑怯だ!」完全に大岩雷太先生である。これには流石の犯人もタジタジ。「言ってくれ、お前のために言え!お前自身が出直すために言え!」
東都大学病院、ジーパンが階段を駆け上がる。「時間がありません」。山さん「喋ってる間に探せ!」。
手術室。9時54分。手術は予断を許さない状況である。
院長室。ボスは時計を見つめている。院長、入ってきて「まだ爆薬は見つかりませんか?」「で手術の方は?」「10時まではとても」。最悪の事態が目前に迫っている。ボスは「爆発の心配はありません。安心して手術を続けるように、先生方に伝えてください。我々も時間まで最善を尽くします」。ボスに勝算があるわけではない。じっと時計を見つめるボス。そこへ山さんが入ってきて「ボス、ゴリさんからの連絡で、爆弾の場所がわかりました。」
ジーパン、殿下、長さん、機動隊員が走る。あと1分。ジーパン、枕を置いてある棚で、時限装置の入った枕を発見。ギリギリ間に合った!
捜査一係、祝杯をあげている刑事たち。安西はクリーニング屋のバイトとしてリネン室に出入りしていたのだ。「ゴリさんのおかげですね、こうして酒が飲めるのも」と殿下。「しかし、残念でしたね、試験受けられなくて」とジーパン。「お前、俺に合格させて奢らせるのがパーになったからか。」とゴリさん。みんなゴリさんの縁談を心配していたのだ。「いいんだよ、どうせ俺はフラれるのに慣れてるんだよ」と嘆くゴリさん。ボス「ゴリ、ちょっと付き合え」。
東都大学病院。ボスがゴリさんを伴ってやってくる。心臓手術を受けた子供の見舞いである。パンダのぬいぐるみを手にしたゴリさん。「坊や、早くよくなれよ。来年は、俺もきっと試験にパスするからな」。