太陽にほえろ! 1973・第75話「仕掛けられた銃声」
この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。
第75話「仕掛けられた銃声」(1973.12.21 脚本・永原秀一、峯尾基三 監督・石田勝心)
永井久美(青木英美)
佐山卓(土屋嘉男)
片桐奈美江(木内みどり)
片桐哲夫(根岸一正)
梶田組・安井(天坊準)
早坂ひとみ
夏木順平
予告編の小林恭治さんのナレーション
「2500万円の強盗犯・片桐哲夫が老朽ビルの地下室で自殺をした。しかし、現場から発見されたテープレコーダーからは、銃声が吹き込まれていた。一体、このテープは、何を意味するのか?そして、捜査の行手に現れた容疑者は、意外や元七曲所刑事・佐山卓であった。次回「仕掛けられた銃声」にご期待ください。」
ゴリさん主演回。七曲署の先輩刑事に東宝の名優・土屋嘉男さんを迎えて、この時点で最高のノワールに仕上がった。フランス映画のようなテイストで、ハードボイルドの魅力と「太陽にほえろ!」らしいウエットさ。トリックの面白さもあり、永原秀一さんと峯尾基三さんコンビのシナリオのうまさが視聴者を惹きつける。竜雷太さん、土屋嘉男さん、石原裕次郎さんの三人によるラストの芝居場は最高のモーメント! 金庫強奪犯に根岸一正さん。日活の青春映画ではお馴染みの不良少年役だった。裕次郎さんの『青春とはなんだ』(1965年・舛田利雄)では、退学になった不良の役を好演している。その姉に、若き日の木内みどりさん。TBS「ポーラテレビ小説・安ベエの海」(1969〜1970年)のヒロインでお茶の間で親しまれていた。
繁華街を足早に歩く片桐奈美江(木内みどり)、弟の片桐哲夫(根岸一正)と路地で会う。これでもう姉さんとは会えないかもしれない。「どうして?」「外国に逃げる逃げるんだ」。強盗犯の哲夫は海外逃亡を企てていた。心配する姉・奈美江。ある男が密航の手筈を整えてくれた。「本当に大丈夫なの?」。そこへゴリさんとジーパンが追ってくる。逃亡する哲夫、ゴリさんの行手を阻む奈美江。哲夫は路地から路地へ走る。ゴリさん、ジーパンも追うが、行方を見失ってしまう。
「ホシは必ずこの一角にいる。一軒一軒当たって、しらみ潰しに探すんだ」とボスが現場で指揮を取る。繁華街で哲夫を探す、ゴリさん、長さん、殿下、ジーパン、そしてボス。しかし手がかりはない。とある焼き鳥屋で、ゴリさんはトイレから出てきた、元七曲署の先輩刑事・佐山卓(土屋嘉男)と再会を果たす。警察を辞めて3〜4年、ゴリさんは懐かしい再会に喜ぶが、すぐに行かねばならない。佐山は「俺を探したけりゃな、この辺りのやす酒場のどっかしらにいるよ」。その時、銃声が!
ゴリさん、ジーパンと合流して、老朽ビルの地下室で、拳銃を手に自殺したと思われる哲夫の遺体を発見する。このビルはジーパンが一度調べているが、その時は誰もいなかった。哲夫の銃にはサイレンサーを捩じ込む穴があることを長さんが見つける。
捜査会議。スライドで「中光商事」の金庫から2500万円強奪事件のあらまし。9日前の12月12日に事件は発生した。抵抗して負傷した守衛の証言、現場の慰留品から、実行犯はナイフを持った二人組の男・後藤シンヤと片桐哲夫(根岸一正)と判明する。指名手配となった夜、後藤は遺体で発見された。凶器のナイフから哲夫の指紋が検出された。強盗傷害・殺人容疑で哲夫は全国指名手配となった。分前を巡るいざこざからの犯行と思われる。と、長さんが説明する。その片桐も昨夜、死体となって発見された。現場は、近く解体予定の老朽ビルの地下・スナックバーの跡。拳銃にはサイレンサーを取り付ける溝が切ってあった。しかしサイレンサーは発見されていない。状況証拠から哲夫は自殺したものと思われるが・・・
「果たしてそう断定していいかどうか?」疑問を呈する長さん。
ボスも山さんも引っかかっている。哲夫が後藤を殺した凶器はナイフ、今度は拳銃。「なぜ前のヤマでは拳銃は使わなかったのか?」。ごく最近に拳銃が手に入ったから、で簡単に説明がついてしまうだけに、腑に落ちないと山さん。「金は手に入ったし、邪魔者は消した。なぜ拳銃を手に入れなければならなかったのか? そしてもう一つ、たとえ追い詰められたとはいえ、自殺なんかするかね?」。ゴリさんも自分が片桐だったら「銃口は自分にではなく、追ってきたデカに向けますね」。片桐の姉・奈美江の証言にあった「密航を助けようとした男。その第三の男」が気になると長さん。しかも、奪われた2500万円はどこに?と殿下。ボスは「他殺の線で捜査を進めよう」と方針を決めた。
片桐家の墓所。ゴリさん、奈美江に挨拶して線香を手向ける。あの時、逃すよりも警察の手に委ねるほうが、長い目でみて、哲夫の幸せになったのに、と後悔する奈美江。「生きてさえいれば、やり直すことだって出来たのに・・・」。ゴリさんは奈美江に「捜査の手掛かりになる」からと哲夫のことを聞き出そうとする。それに驚く奈美江。「捜査?哲夫の自殺であの事件は終わったんじゃないですか?」「哲夫くんは誰かに殺されたという可能性もあるんです」。哲夫は事件の二週間前に、務めていた印刷所を急に退社した。一年前も、会社を辞めて一週間後、泥棒に入って逮捕されたことがある。
蕎麦屋に入る二人。哲夫は印刷所を辞めてから、後藤と会って、強盗の計画をたてたのでしょうとゴリさん。哲夫の素行が心配だった奈美江は探偵社に調査を依頼した。奈美江がバッグから出した名刺には「共立探偵社 佐山卓」。ゴリさんは驚く。「佐山さん!」
哲夫が死んでいた現場のスナックバー。山さんが調べていると、佐山がやってくる。「佐山!」「久しぶりだね、山さん」。フィルムノワールのような雰囲気。今は探偵をしている佐山は、哲夫の姉・奈美江から遡行調査を頼まれていたことを山さんに話す。金を貰った以上、現場だけは見ておこうと思ったと。「あんたが、片桐哲夫の素行調査をね」。捜査協力を申し出る佐山。「ありがとう」と山さん。「その代わり、お返しはしてもらうぜ」。
捜査第一係。「佐山は変わってしまった」とボスに報告する山さん。佐山が犯行前から哲夫を張っていたとなると「奴が第三の男である可能性もある」とボス。佐山を慕っていたゴリさんは複雑な表情。追い詰められた哲夫の逃亡補助をすると言って近づくこともできる。ゴリさんは佐山のアリバイを証明する。現場から30メートル離れた酒場で、銃声が聞こえた時は「俺と一緒にいましたからね」。鉄壁のアリバイである。「考え過ぎかもしれんが」と前置きをした上で、山さん。他殺を自殺と思わせ、自分のアリバイを完璧にしていたとしたら「これは見事な完全犯罪だ」。いきり立つゴリさん。山さん「そう思いたくはないが、疑われてもしょうがないだけの理由があるんじゃないかな?」。
「佐山なら、俺たちの捜査のウラをかける」とボス。
佐山と特に仲の良かったゴリさんは信じることができない。それを理解している長さん。「佐山の方が2年先輩になるかな」。
「佐山さんは、この七曲署の敏腕刑事で、誰からも一目置かれていました。しかも、佐山さんがなぜ辞めていったのか? その理由は、皆さんもよく知っている筈じゃないですか!」とゴリさん。四年前、チンピラの殺人事件で、犯人の目星はついたが証拠のドスが見つからなかった。佐山はホシを泳がせて、ゴリさんと一緒に尾行をしていた。佐山さんの制止を聞かず飛び出したゴリさんのせいで、チンピラに傷つけられ若い女性が片目を失った。その娘の家は貧しく、チンピラに補償能力もない。やくざの幹部も若いもののしたことだからと知らぬ存ぜぬ。業をにやした佐山は、組長の家に単身乗り込み、娘の家に500万円を届けさせた。それを嗅ぎつけたトップ屋が「カツアゲ刑事」と週刊誌の記事を書いた。マスコミのバッシングを受けた佐山は、矢面に立たされた。
「ある一つのことが、見方によっては正義であり、別の見方からは犯罪と受け取られることがある。佐山の場合はそうだ。法的にいえば、明らかに恐喝だ。佐山はクビになった」とボス。
しかし、自分が佐山でも同じことをしたとゴリさん。だから佐山が哲夫を殺して2500万円を奪ったとは信じられない。ゴリさんは一人で佐山の「協立探偵事務所」へ。夜、新宿の酒場で、安酒をあおる佐山とゴリさん。「酒は人を裏切らんからな」と四年前から深酒をするようになった佐山。この4年間、佐山は「いろんなところで、いろんなことを」していた。「刑事をクビになった男に何ができる?」。人にはいえない苦労をしてきたことが窺える。酒場に流れるジングルベルのメロディ。佐山は、心を開いているゴリさんに、「あのヤマは殺しなのかい?」と探りを入れる。「我々は殺しと見てます」とゴリさん。「山さんから聞いているだろ?俺は片桐哲夫の素行調査を頼まれていたんだ。知ってることなら、なんでも教えてやるぜ」。酔ってご機嫌に「船頭小唄」を歌いながら酔い潰れる佐山を介抱するゴリさんの心の声「俺が手錠をはめる相手はあんたじゃないよな?」。
翌日、山さんは再び、殺害現場へ。「サイレンサーか・・・」。山さん、スナックバーの厨房で何かを見つける。二日酔いでフラフラのゴリさん、1が係へ出勤する。佐山と飲んでいる時に「片桐のこと、なんか言わなかったか? 例えば、我々が他殺の線で捜査を進めていると?」とボス。正直に認めるゴリさん。殿下からの連絡によれば、佐山は今朝、パスポートとスペインまでのチケットを旅行社に依頼したという。「これでも奴をまだシロだと信じるのか?」「どうしてクロと断定できるのですか?」佐山には完璧なアリバイがあると反論するゴリさん。
「果たして完璧かな?」山さんが帰ってくる。もう一度現場を調べたら、通風口からハンドスピーカーとテープレコーダーから出てきた。「聞けばわかるよ」。再生すると銃声が録音されている。「通風口は一階の表に通じている。銃声は誰の耳にも届く」。山さんの推理はこうだ。哲夫と殺害犯はあらかじめ、地下室で会う約束をしていた。現れた哲夫をサイレンサーをつけた拳銃で射殺。サイレンサーを外して、拳銃を死んだ哲夫に握らせて自殺を偽装した。そしてテープをセットして地下室を出た。1〜2分後に銃声が一帯に響渡った。死亡時間の1〜2分のズレは鑑識でもわからないとボス。もし佐山がホシだとすると、現場から30メートル離れた店で、ゴリさんとばったり会ったことを考えると辻褄が合う、と山さん。
「佐山は、こいつをこっそり現場に取りにきて、私と会ってしまったんでしょうな」。
スピーカーやテレコからは指紋は出ない筈。パスポートが下りるまでの一週間が勝負となる。屋上に出たゴリさんは、まだ信じたくない。新宿の高層ビルが次々と建ってきている。ゴリさんのモノローグ「よし、佐山さんが犯人かどうか、俺が先頭に立って、調べてみよう」。ゴリさん、動き出す。
「危険な賭けだな」とボス
「危険です」とゴリさん
「・・・」
「ボス」
「いいだろう、やってみよう」
「はい」
「ゴリ、これからお前が追い詰めようとしているのは、仲の良かった先輩ではなくて、殺人犯だ。そのことを忘れるな」
「ボス、まだ犯人と決まったわけじゃありません」。
覆面パトカー、協立探偵事務所の前に停まっている。ゴリさん、奈美江に盗聴器のペンダントをかけて「普通に喋ってください」と指示。奈美江は佐山の事務所へ。向かいのビルの屋上からは殿下が事務所での、奈美江と佐山のやりとりを8ミリで撮影。ゴリさんとジーパンの覆面パトカーでは音声を録音をしている。
奈美江は佐山に、哲夫の素行調査を依頼したにも関わらず、金庫破りをしたこともわからず、行方も見失ってしまった、と自分に報告しましたね、と確認する。「あなたに報告したことは嘘じゃありませんよ」。自分の調査には限界がある。哲夫は深夜、それも明け方に近い時刻に犯行を行った。真夜中まではとても付き合いきれないとシニカルに笑う佐山。『ガス人間第一号」(1960年)の土屋嘉男さんのようでもある。
「あなたは嘘を仰っています」
「ほう、私が嘘を?」
「あなたは知っていた筈です。哲夫が後藤さんと金庫破りを計画していたこと。計画を実行したこと。仲間割れから哲夫が後藤さんを殺してしまったこと。みんな知っていた筈です。そして・・・」
「そして?」
「哲夫を殺したのは、あなたです!」。
一係。8ミリを上映している。
「なぜあなたはそう思うんですか?」
「哲夫の奪った2500万円が欲しくなったからです」
「私が聞きたいのはそういうことじゃなくて、なぜ私が弟さんを殺したのだと思っているのか?ってことですよ」
「哲夫は死ぬ3時間ほど前に、私に電話をかけてきました」
「ほう、それで?」
「外国への密航を助けてくれる人がいるから、心配するな、って言ってました」
「・・・」
「これから、その人と、ある場所で会うんだ、とも言ってました」
「なるほど」
「その時、私にはピンと来るものがあったんです。だから聞きました。その人がなっていう人か?って」
「で、弟さんはそいつの名前を言ったんですか? 佐山だと」
「いいえ、名前は知らないようでした」。
そこで奈美江は、佐山の人相をできるだけ詳しく伝えて「こういう人じゃないか? って聞いたんです。弟は、はっきりそうだ、と答えましたわ」。哲夫を殺したのは佐山しか考えられない。しかし佐山は「無茶苦茶ですな」と一笑に伏す。「あんた今の話を警察にしたんですか?」。頭を振る浪江。それは不自然だ、もし自分が殺人犯なら、放って置けないはずだと佐山。「もちろん、警察には届けます。もし、私のある条件を聞いて頂けないなら」
「ほう、条件?」
「あなたのことは誰にも話しません。ですから、私に一千万円をください」。
哲夫は自分の肉親だから、一千万円を受け取る権利があると奈美江。返事は翌日まで待つと立ち去る。
一係。フィルムを見終わった山さんが奈美江の度胸に感心する。殿下は「どんな名優だって叶いませんよ。たった一人の肉親の仇討ちですからね」。佐山に唯一「面の割れていない」ジーパンが、佐山を張り込んでいる。そのジーパンから、佐山がアパートに帰ったと報告。ゴリさんは、ボスの命令でジーパンに合流することに。不服そうなゴリさん、ボスに「今のフィルムは何も証明していませんからね」と言って出ていく。
佐山のアパートを向かいの部屋から監視しているジーパン。そこへゴリさんが到着。事務所から帰ってきて、ずっと酒を飲み続けている佐山。「ちょっとプカプカ」と言って押し入れに入ってタバコを吸うジーパン。高校生かよ(笑) 酒を飲み続ける佐山。それをじっと見ているゴリさん。
翌朝、「富士アパート」二階の部屋から出てくる奈美江。そこへ山さん「今日一日は、どんなことがあっても、あなたのそばを離れませんからね。覚悟してくださいよ」「よろしくお願いします」。
会社で、他の女子社員と一緒にタイピングをしている奈美江。山さんはソファーで新聞を読んでいる。刑事が来て、迷惑そうな社員たち。
張り込みをしているゴリさん。ウトウトしている。目を覚ますと、佐山が出かけようとしている。慌ててジーパンを起こす。「アパートを出たんだよ」「アパート、デパートって?」寝ぼけているジーパンを促して、尾行開始する。佐山は「鹿児島ラーメン・薩摩苑」の前の電話ボックスへ。奈美江の会社に電話をかけ、今夜奈美江のアパートに行くと告げる。しかし金のことには触れなかった。
パチンコを打つ佐山。隣にはジーパン。ゴリさんが向かいの喫茶店の二階で張り込んでいると、長さんがやってきて「奈美江さんのところに電話してきたのは佐山」と伝える。「今夜必ず、奈美江さんのアパートを訪ねる、そう言ったそうだ」。複雑な表情のゴリさん。「残念ながら本当だ」。長さんはゴリさんの気持ちが痛いほどわかっている。「そうですか・・・やっぱり、佐山か・・・」。ゴリさんには気になることがあった。さっき、佐山は二度電話をした。奈美江ともう一人、誰かはわからない。佐山、パチンコ「オメガ」から出てくる。ジーパン、尾行する。ゴリさんも合流することに。「相手は元デカだ。注意しろよ」と長さん。
地下街、新宿サブナードへ下りる佐山。ジーパンに追いつくゴリさん。サブナードでの尾行シーン、1973年の空気がパッケージされている。ゴリさん、若い男にぶつかり「痛えな、この野郎」「すいません」と謝る。佐山、尾行に気づいて、走り出す。地上への階段を上がって、そのまま「三平ストア」に入る佐山。歳末で賑わう店内で、ゴリさんを巻いてしまう佐山。隠し撮りだけど、キャメラに気づいたお客さんのリアクションがいい(笑)「三平ストア」の入り口にあるカップヌードルの自販機の前にはジーパン。そのまま尾行を続ける。結果的に陽動作戦となる。1973年、カップヌードルは新感覚のスナックで、お湯が出てくる自販機が、都内のあちこちにあった。お箸ではなくプラスチックのフォークも、自販機のポケットに入っていた。ああ、懐かしいなぁ。
再びサブナードへ降りる佐山。この頃は、どこもかしこも喫煙可能だったのね。タバコに火をつけ、地下街を歩く佐山。やがて、階段を上がり、新宿駅東口へ。ジーパン、三和銀行前の公衆電話からボスへ報告する。
「よしわかった。長さんにすぐに連絡する」。
新宿駅東口の前で新聞を読んでいる佐山。誰かを待っているようだ。やがて長さんとゴリさんの覆面パトカーが到着する。佐山の隣に、やはり新聞を読みながら近づいてくる髭の男(天坊準)。コートのポケットから包みを出し、佐山の方へ。佐山は胸ポケットから封筒を出し、新聞に挟んでその場に置気、包みを持って立ち去る。髭の男も封筒を包んだ新聞をピックアップして去っていく。
男は梶田組の安井(天坊準)。ゴリさんが安井を追い、ジーパンと長さんが佐山の尾行を続けることに。新宿南口、ゴリさんが安井に声をかけた途端に、安井は逃げ出すが、すぐにゴリさんに捕まる。「佐山に何を渡した?」「佐山って誰だよ!」。そこへ梶田組の若い衆が駆けつける。ゴリさん、久々に大暴れ! 安井を組み伏せ「渡したのは何だ?」とゴリさん「言わなきゃ(腕を)折るぞ!」。安井は拳銃と弾二発を渡したとゲロする。安井の胸ポケットには、佐山から渡された現金入りの封筒が入っていた。
一係。ゴリさんからボスに報告。ボスは「佐山は真っ直ぐアパートに戻った。長さんとジーパンが張っている。で、お前、どこにいるんだ? 彼女のアパート?」。
奈美江のアパートから、ゴリさんは奈美江の会社にいる山さんに電話で報告。「確かに危険だが、それくらいのことをやらんと、佐山の尻尾を掴んだことにならないからな」と、ゴリさんの考えに同意する山さんは、奈美江に電話を変わる。ゴリさんは何を企んでいるのか?
佐山のアパートを見張るジーパンと長さん。相変わらず酒を煽っている佐山、しばらくして先程の拳銃にサイレンサーを装着して、部屋を出ていく。あたりを見回し、ゆっくりと歩き出す。
奈美江のアパートへ入っていく佐山。拳銃を取り出し、ゆっくりと部屋の中へ。編み物をしている奈美江に、銃口を向け発砲する佐山。しかしそれは鏡だった!ゴリさんのトリックにまんまとかかったのだ。「佐山」ボスの声がする。
「佐山、このアパートは包囲されている。拳銃を捨てろ。殺人容疑で逮捕する」
「おう、ゴリか」
「俺は、最後まであんたがホシだとは信じたくなかった。どうして、こんな馬鹿なことになったんだ?佐山」
「ゴリ、くだらねえこと言うんじゃねぇ」
「何?」
「ことは簡単だ。悪党がな、小悪党をバラして、泡銭を奪った。それだけのことだ。おい、鏡とは見事にいっぱい食ったな。ふふふふ、あと一歩だってとこだったのにな」。
佐山に拳銃を向けるゴリさん。
「弾は入っているのか?」ゴリさんの拳銃がいつも弾なしなのを知っている佐山。
「弾は入っている」
「それは結構だ」ゆっくりと銃を構える佐山。フィルムノワールの味わい。
「佐山・・・佐山さん、拳銃捨ててください。俺撃っても逃げられませんよ」。
「ゴリ、犯人がいるのに撃てんのか? それでもデカか?」とボス。
拳銃を構える佐山。
「よし、俺がやる」とボス。
ボスに銃を向ける佐山。
「佐山さん!」。絶叫しながら銃を撃つゴリさん。佐山の腹部に命中する。倒れそうになる佐山を抱き抱えるゴリさん。駆け寄るボス。
「藤堂さん・・・いいんだゴリ、これで・・・拳銃にはな、弾込めておくもんだ」虫の息の佐山・・・。
「デカなら弾込めるんだ。撃つべき時は撃つんだよ、相手が誰であろうとな。いいか、デカにしがみつけ、でないとな、俺みたいになっちまう」
「佐山さん!」
「良いってことよ、これで。なぁ、俺なんかな、生きてたってしょうがないんだ。なんの目的もねえんだ。おめえに撃たれてな、良かったんだ」
ゴリさん涙を流している。
「藤堂さん」
「なんだ」
「ポケットにな、コインロッカーのキーがある。新宿駅東口だ。そこに金が・・・」。
佐山、息を引き取る。佐山のポケットには弾丸が・・・佐山の銃には弾が入っていなかったのだ。
「佐山、死ぬ気だったのか?」とボス。はっとなるゴリさん。立ち上がり、やがてうずくまって泣く。
一係。久美が「お昼、何注文します?」と聞いても返事をしないゴリさん。立ち上がり、ボスに「ちょっと外へ行ってきます」「どこへ?」「ちょっと」「一人でか?」「はあ」「だめだ」「は?」「許可しないと言ってるんだ。一人ではいかん。俺と一緒に行こう」とボス。ポケットから 喪章を取り出し「早くしないと、告別式に遅れるぞ」。思わず涙が出てくるゴリさん、喪章で目を拭うところでストップモーション。
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