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太陽にほえろ! 1973・第38話「オシンコ刑事誕生」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。
第37話 「男のつぐない」(1973.3.30  脚本・永原秀一  監督・土屋統吾郎)は欠番。

第38話「オシンコ刑事誕生」(1973.4.6 脚本・長野洋、小川英 監督・山本迪夫)

 今回は、少年係のシンコ=内田伸子(関根恵子)が刑事を拝命する回。ちょうど改編期の4月第1週放映で、僕は小学4年になる春休み。オンエアをよく覚えている。関根恵子さんが何となく「心のアイドル」になっていたし。

 羽田空港。シンコの同級生が結婚してハネムーンに。見送りの同級生たちとのガールズトーク。1970年代の女の子たちはみんな大人っぽい(映画やドラマに)。羽田空港で、やはり結婚式帰りの七曲署署長(南原宏治)のクルマに登場する。車中で「結婚の予定はあるか?」「いいえ?」。今じゃ立派なセクハラ発言だが、ここは署長の気遣いでもある。そこで署長「女刑事にならないか?」。

 七曲署の女性刑事第一号誕生か? しかしシンコの父・宗吉(ハナ肇)もボスも「絶対反対」。ボス「女を刑事にしてどんなメリットがあるんですか?」おいおい、今と価値観が違うとはいえ、男性中心だった時代。じゃあ、署長は理解があるかと思いきや「PR時代だからね」「内田君はカバーガールじゃありませんよ」とボス。

 警察のイメージアップのためにシンコが刑事に。猛反対するボス。憮然としたままの宗吉。「シンコが刑事になったら誰が面倒見るのか」とゴリさん。ずっとこう言う時代だったんだなぁと、改めて驚きますなぁ。ボスは署長の提案を受け入れ、シンコは刑事になることに。

 そこで事件発生。「花園の連れ込み宿で男が意識不明」早速、見習い刑事シンコが山さんと現場へ。長さん「ほほう、女刑事初出動ですか」どこまでもモラハラ時代。シンコは現場のラブホテルへ。入るのも躊躇するシンコ。現場の回転ベッドの上にSM雑誌が「イヤ〜」これセクハラですよ。今じゃ。ベッドが動き出し、ビックリするシンコ。ニヤニヤする山さん。あ、それセクハラですよ〜

 女刑事への洗礼とはいえ、作り手のこの目線にはビックリするが、そういう時代だったんだなぁと改めて。現場には「キャバレーピンキー」のマッチが落ちていた。連れ込み宿の女将は、日活映画でお馴染み福田トヨさん。山さんに「お連れの方は?」「立派な刑事さんだよ」。

 意識不明の男は、アートデザイン研究所勤務の新進デザイナー・緒方正一(天田俊明)26歳。「七人の刑事」の久保田刑事が「SM趣味」とは!(笑)続いてシンコは殿下の聞き込みをサポートに向かう。途中の公園でひとりぼっちの男の子・ススムくんが気になるシンコ。優しいね。さて、アートデザイン研究所の所長・菊地正嗣(川合伸旺)は、「緒方は新婚一年目で優秀なデザイナー、いかがわしい女と、そんなことをするとは思えない」と。

 だけど川合伸旺さんだからね。怪しいぞ!しかも緒方は「文化博のシンボルマークのデザイン」の公募で受賞したばかり。緒方は賞金1000万円を手にしているが、半年前の話。マカロニが連れてきた参考人「キャバレー・ピンキー」のミミちゃんによれば、緒方から心中を持ちかけられたという。「断ったら本当に殺されるかと思ったから」薬を飲んだふりをして、自分だけ逃げ出した。

 緒方は、所長ややくざ風情の男と、キャバレー・ピンキーに通っていた。やくざ風情の男は、来るたびに研究所のツケで飲んでいた。「ああ言うのをダニっていうんだよ」。山さんは病室の緒方に事情聴取「何となく何もかもイヤになった」と緒方。シンコは緒方の新婚の妻から「主人が変わったのは、あの文化博のシンボルマークが決まった日から」と話を聞く。あの日の夜「主人は初めて外泊した」。それから人が変わったように酒に溺れ、外泊が続いた。

 その間に、病室に偽医者(戸塚孝)が現れ「注射をします」。看護婦に見咎められ、山さんが追うが、偽医者は逃走してしまう。ボスに「その時、どこにいたか?」と聞かれたシンコを庇う山さん。犯人の顔を見たのか?「私、奥さんに気を取られていて」シンコ、責任を感じてしまう。「シンコ、家へ帰れ」とボス。

 「労働基準局がうるさいから」。半人前扱いが悔しいシンコ。山さんが優しく声をかける「そのうち思い出すよきっと」。マカロニは病院の庭で空を見上げている。昔、ボスに怒られた時に、家の窓から空を見上げていた話をゴリさんにする。

 「こんな汚い空でも星が見えるんだなぁ」とマカロニ。「泣きたきゃ家に帰って泣け。ああいう時のボスはまるで鬼だね」「その鬼とよくここまで付き合ってきたな」とゴリさん。「シンコだってわかってるよ。宗吉さんがついているよ。ベテランの元刑事がな」。「太陽〜」の魅力はホームドラマであり人情ドラマでもある。宗吉はシンコに「内田宗吉の娘だったら、立派に責任を果たしてみろ」

 そこまでカッコいいんだけど、包丁で指を切ってしまう宗吉。クレイジーキャッツのコントみたいに狼狽えるハナ肇さん。そこでシンコは犯人が指を怪我していたことを思い出し、緒方の妻から「文化博のデザインが決まった夜から緒方が豹変した」話を電話でボスにする。

 「よし、シンコよくやった」「当たり前だよ俺の娘だからな」翌朝。シンコは大張り切りで、山さんとデザイン研究所へ。やくざのと関わりを否定する菊地所長。「そういえば、あいつやくざっぽいかな」と思い当たるふりをする。山さんは何かを察知してその場を立ち去る。公園で再びひとりぼっちのススムくんを見かけるシンコ。

 ススムくんは、半年前、アートデザイン研究所の前の公園に置き去りにされて、今は養護施設「天使園」へ。山さんはススムくんの胸のデザイン用鉛筆に目を止め、彼の父は中尾文二(綾川香)43歳と判明する。去年の9月に行方不明になったデザイナーだった。中尾のアパートで聞き込みをするゴリさんと殿下。

 アパートの住人(大泉滉)「そんな奴、知らん。今住んでいるのはワシじゃ」。ゴリさんは、壁の穴塞ぎに使っている「文化博のシンボルマーク」デザイン画を見つける。緒方に中尾のデザインを見せる山さんとシンコ。「盗作だ」「あなたはデザインを盗んだ上に、中尾を殺したんだ」「違う、中尾は死んじゃいない」
中尾の居場所を問い詰める山さん。ススムの話をする山さん。

 「傷ついた子供の気持ちがお前にわかるか?」山さんの真剣な眼差し。「中尾さんのデザインを盗んだのはこの私です」アイデアに苦しんでいた時に、中尾が持ち込んできたアイデアを盗んだ。そのことを所長にも話したが、「万一当選しても、俺がうまく処理する」と所長。

 所長は緒方に「当選の功労者」として臨時ボーナス50万を渡した。中尾のことを聞くと「話し合いには応じない。告訴すると言っている」。所長は「心配するな。君に何が起こっても知らぬ存ぜぬで押し通すんだ」。所長、悪いねぇ。それで緒方は酒と女に溺れたというわけ。

事情聴取で、菊地所長を激しく責める山さん!中尾はやくざ風の男・柳田(戸塚孝)に脅されて記憶喪失になったことも山さんは見抜いている。菊地の鞄を取り上げようとする山さんに「民主警察のすることか!」そこへボス「そんなセリフはこの中では通用しないよ。この中に何にも入っていなければ、告訴でも何でもするんだね」と鞄を開けると・・・

 通帳が出てくる。大金が引き出されていることがわかる。「中尾の口封じのために、柳田に支払ったんじゃないかね?」菊地にとっては、緒方は簡単に口封じできるが、中尾の記憶を取り戻されたらアウトなので、前夜、柳田に100万円払ったのは「こいつは中尾を消すためじゃないのか」とボス。「殺人と殺人未遂じゃ、どれくらい刑が違うかしているのか?」と山さん。「死刑になりたいのか?」

 ついに菊地が「止めてください」と中尾の居場所を告げる。一方、柳田も中尾の隠れ場所へ。ところが中尾はいない。記憶喪失の中尾は、子供がいることだけは覚えていたのだ。そこでシンコがススムに「お父さんと行った場所を教えて?」中尾の行き先を、ベッドハウスの知り合い(辻シゲル)に尋ねるゴリさんと殿下。

 中尾がおもちゃを持って、出て行ったことを突き止める。天使園ではシンコがススムを見守っている。柳田も中尾を殺すべく動き出している。天使園に流れる童謡は「お山のラジオ体操」懐かしいね。幼稚園を思い出します。そこへ中尾が現れる。柳田が襲いかかる。シンコ「逃げるのよ!」ゴリさん、と殿下が駆けつける。

「天使園」の隣は墓地。柳田を追い詰めるゴリさん。ライダーキックのように飛び蹴り!逮捕! 中尾に駆け寄るススム。記憶を取り戻す中尾。「お姉ちゃん、ありがとう」とススム。「これがあるから刑事はやめられないんだよ」と殿下。シンコに辞令が降りて、晴れて宗吉で祝賀会。

 楽しく盛り上がったところで電話。ボスが「はい宗吉です。2丁目で殺し?」また次の事件が発生。現場に駆けつける刑事たち。もちろんシンコも!「オシンコ刑事誕生」これにて全巻の終わり。



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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
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