日活「機動捜査班」シリーズ
この2月、アマプラで連続視聴を続けてきた、日活「機動捜査班」シリーズ、全13本。2月28日、最終作『機動捜査班 警視十三号応答なし』(1963年)で完走(笑)2年ほど前に手持ちの作品で6作ほど観ていたけど、どうしても長谷川公之脚本ということで東映「警視庁物語」シリーズと比べてしまって、イマイチの印象だった。
で、その違いは「警視庁物語」が捜査一課で、「機動捜査班」が捜査四課つまり暴力団の事件専門であること。なので犯罪の描写が、仲間割れや、縄張り争いや、親分の情婦と通じて幹部にのしあがるとか、いわば日活アクションの「悪党」がデフォルトだったので、大宮刑事(青山恭二)や伊藤部長刑事(宮崎準)の捜査や推理の見せ場が自ずと少ないこと。また日活銀座オープンでの撮影が多いので、ロケ探訪の楽しみが「刑事物語」「事件記者」シリーズよりは少ないこと、などなどだった。
でも、1961年から1963年にかけてのシリーズなので、日活アクションにおける悪党の描き方の変遷が、ビビッドに反映されていて、また黒澤明『用心棒』の影響などが見て取れて、同工異曲のプログラムピクチャーの微妙な温度差を味わう楽しみが何よりのご馳走。
なんといってシリーズほとんど悪役のメインを務めているのが内田良平さん!というのが楽しくて「内田良平悪役大全」ともいうべき、ピカレスクキャラクター(ほとんどが野心家で上昇志向が強い)造型を眺めているだけで、このシリーズの価値があるというもの。
ヒロインもほぼ香月美奈子で、ファムファタールから運命に翻弄されるホステスなど、これまた魅力的。小杉勇監督の演出も最初は「刑事物語」シリーズのような捜査ものだったのが、だんだん内田良平の悪役のキャラクターや「その夢の挫折」を描くことにシフト。演出も乗っているのがわかる。
長谷川公之脚本は、シリーズ前半までで、後半は川島雄三の薫陶を受けた助監督でミステリ好きの遠藤三郎さんがシナリオでクレジット。ハリウッドの犯罪映画や、戦後まもなくのイギリスの犯罪映画のプロットをツイストしている。なので内田良平さんがリチャード・ウィドマーク的なキャラなのもいい。
第1作 機動捜査班(1961年4月公開)
第2作 機動捜査班 罠のある街(1961年5月公開)
第3作 機動捜査班 秘密会員章(1961年6月公開)
第4作 機動捜査班 都会の牙(1961年8月公開)
第5作 機動捜査班 東京危険地帯(1961年9月公開)
第6作 機動捜査班 暴力(1961年12月公開)
第7作 機動捜査班 無法地帯(1962年2月公開)
第8作 機動捜査班 東京午前零時(1962年5月公開)
第9作 機動捜査班 港の掠奪者(1962年7月公開)
第10作 機動捜査班 東京暴力地図(1962年9月公開)
第11作 機動捜査班 群狼の街(1962年12月公開)
第12作 機動捜査班 裸の眼(1963年1月公開)
第13作 機動捜査班 警視十三号応答なし(1963年3月公開)
というわけで玉石混交だけど、錦糸町・亀戸が舞台の第5作「東京危険地帯」や、カミナリ族が登場する第10作「東京暴力地図」、ピカレスクロマン第11作「群狼の街」あたりがおすすめ。
それから一作だけ、青山恭二さんが大宮刑事ではなく、木村刑事として登場した第3作「秘密会員章」は、木村刑事が拳銃と警察手帳を悪の親玉(嵯峨善兵)に奪われて、それをカタに揺すられて警察情報を流して汚職警官になっていく展開。これは長谷川公之&宮田達男脚本で、なかなかの佳作。
全作、主役クレジットは青山恭二だが、最終作「警視十三号応答なし」だけ、トップシーンでFBIで研修のため渡米してしまい、あとは出てこない。捜査は新人刑事・上野山功一にバトンタッチ。だけど、これでシリーズが打ち止めになってしまったので、上野山功一は「若大将対青大将」(1971年)の大矢茂みたいになってしまった(笑)
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