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太陽にほえろ! 1974・第103話「狼を見た少年」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。

第103話「狼を見た少年」(1974.7.5 脚本・柏倉敏之 監督・木下亮)

永井久美(青木英美)
小松謙次(上田忠好)
谷内勉(小高賢)
前原の妻(目黒幸子)
谷内常夫(橋爪功)
向かいの奥さん(安藤純子)
戸川(石山克己)
田沼(石丸博也)
戸川の妻(小園蓉子NC)

予告編、小林恭治さんのナレーション。
N「少年が見たと言う幻の殺人現場。あたりには花が咲き、蝶が待っていた。嘘つきのレッテルを貼られた少年が、固く口を閉ざす。壊れた心に忍び寄る低い唸り声。今、少年は一人ぽっち。潮風を浴びて笑顔を取り戻すとき。次回「狼を見た少年」にご期待ください」

 ゴリさんこと石塚誠刑事主役回。今回は、少年が目撃した幻の殺人事件をゴリさんが追っていく。ジョルジュ・シムノンの「メグレ警視」の「聖歌少年隊の証言」「メグレと田舎教師」などにもあったパターン。少年は殺人を目撃するが、誰も信じない。メグレ警視だけが少年に寄り添い、地道な捜査を重ねて事件の真相に迫るというもの。ゴリさんは最初、少年の言葉を信用せずに、そのことが事件を大きくしていき、その反省から少年を守るために必死の戦いをする。クライマックスは、裕次郎さん初主演作『狂った果実』(1956年・中平康)みたいに、葉山でのヨットとモーターボートのチェイス!

 公園で読売ジャイアンツの帽子を被り、捕虫網で蝶を追っている少年・谷内勉(小高賢)が銃声を聞く。音がした方向に走っていくと、ツツジの花が咲いている茂みに男の遺体。そこに怪しい男(上田忠好)がいた。怖くなって逃げ出す勉少年を男が追いかける。勉少年は、物陰に隠れ、なんとか男から逃れることができた。上田忠好さんは俳優座養成所第7期生で、田中邦衛さん、山さん・露口茂さんと同期で、「太陽にほえろ!」では情報屋の徳さんとして、これまでも何度か出演している。上田さんが出演している「太陽にほえろ!」は計7作品。

第6話「手錠と味噌汁」(1972年) - 情報屋
第52話「13日金曜日マカロニ死す」(1973年) - 徳岡(情報屋)
第58話「夜明けの青春」(1973年) - 徳岡(情報屋)
第103話「狼を見た少年」(1974年) - 小松健治
第141話「無実の叫び」、第142話「真実はどこに?」(1975年) - 横村
第275話「迷路」(1977年) - 戸浦
第633話「ホスピタル」(1985年) - 立川

 夏の暑い日差しのなか、ゴリさんが覆面車で七曲署に出勤。玄関で勉少年がゴリさんの背広を掴む。「なんだい坊や?おじさんに用かい? ははあ、友達と喧嘩でもしたな、早くいって仲直りしておいで」と署内へ入ろうとするが、勉少年はゴリさんを強く引っ張る。「どうしたんだい坊や?」。

 捜査第一係。「おはようっす!」とゴリさん、勉少年を連れて入ってくる。殿下、ジーパン、長さんが久美と談笑している。ボスはまだきていない。「どうした?」と長さん。「実はね、この子が殺人の現場を見たって言うんだよ」「え?どこで」「林ん中でね、蝶々を追っかけていたら、男が人を拳銃で撃った、って言うんですがね」。

 長さんが優しく声をかける。「坊や、名前は?」「谷内勉」「いくつ?」「七つ」。ジーパンに「どんな男だったか覚えてるか? ほら、拳銃撃った奴だよ、その男の顔、見たんだろ?」。勉少年はジーパンの顔をじっと見たまま無言。かなり怖かったのか、何も言うことができない。たまりかねた久美が「可哀想でしょ、そんなコワい顔したら」と勉少年に「心配しなくてもいいのよ、このおじちゃんたちとてもコワい顔しているけど、本当はとっても優しいんだから」とキャンデーをあげる。

 殿下「でも、本当ですかね? この子の言うこと。子供ってのはよく、突飛な空想をしますからね」。ゴリさんは長さんに「一応、その林に行ってみようと思うんですよ、どうだい、殿下?」「よし、後でボスに報告しておくよ」と長さん。ゴリさんと殿下は、勉少年とともに現場へ。

 公園に到着するが、勉少年は下を向いたまま。ゴリさん「何も怖がることはないんだぞ、おじさんたちがついているからな」。勉少年、ようやく歩き出す。殺人事件を目撃した現場。ゴリさん「さ、どこだっかな?」。ゆっくりと勉少年が指をさすが、そこにはツツジの花が咲いているだけ。殿下が現場を調べるが「何にもないですね、やっぱり何かの思い違いじゃないのかな?」「銃声を聞いたものがいるかどうか、調べてくれ」。殿下、聞き込みへ向かう。

タクシー運転手、付近の住宅の主婦に聞き込むが証言は得られない。

「勉くんのお母さんお家かい?」。首を横に振る勉。「じゃ、どこいったの?」「いないの」「どうして? じゃお父さんは」「会社」「じゃいつも勉くんはひとりっきりか?」。殿下が戻ってきて、銃声を聞いたものは誰もいないと報告。ゴリさんも収穫なし。「そうするとやっぱり・・・」と殿下。うなづくゴリさん。「俺はこの子を送っていく、一足先に帰ってボスに報告してくれ」。

「本当だよ! 僕見たんだ!」強い口調でゴリさんに訴える勉少年。「そうだよな、勉くんは見たんだよな」とゴリさんは否定しない。「さ、あとはおじさんたちに任して、お家帰ろう!」。ゴリさん、子供の扱い方慣れている。ゴリさんと子供ということでは、のちにも第146話「親と子のきずな」(1975年)や第157話「対決!6対6」(1975年)などのエピソードがある。

 勉少年の住む団地。ゴリさんが送ってくる。「仮面ライダー」サイクロン号の自転車に乗る幼児。懐かしい光景。ゴリさんは勉少年の住む、11号棟205号室「谷内常夫」宅へ。しかし部屋の前で立ち止まる勉少年。「あれ?どうしたい?ここは勉くん家だろ」とゴリさん。部屋から出てきたのは父・谷内常夫(橋爪功)。「七曲署のものですが、勉くんをお連れしました」。

 リビング。ゴリさんも座っている。常夫は「勉! どうしてそんな嘘ばっかりつくんだ?今度嘘をついたら承知しないって言っただろ!」と激しく叱責。「嘘なんかつかないもん!」「まだお前、そんなこと言ってるのか!」と激昂する常夫を「谷内さん!」とゴリさんが制止する。常夫は、勉がいつも嘘をついてると嘆く。「母親が出ていっちまったから、ひねくれたんですかね?」と自嘲気味の常夫。ゴリさんに礼を言う。「これがあたしたちの仕事ですから」そして一言加える「それより、勉くんをこれ以上叱らないでください」。ゴリさん、さすが!昔は、警察官ってこう言う人ばかりだと思っていたのは「太陽にほえろ!」の影響。

 しかし勉少年は納得できない。確かに目撃したし、犯人にも追いかけられた。この気持ちは視聴者も共有して、勉くんに感情移入して、早くゴリさん、気づいてくれよ、と思う。これがドラマの臨場感となる。

 捜査第一係。翌朝、ゴリさんが出勤すると山さん「長さんから聞いたよ、昨日はご苦労だったな」と労を労う。殿下「だけどどうしてあの子は、あんな嘘をついたのかなぁ」「勉の父親ってのが、奥さんと別れてからヤケになってね、子供のことをあまり構ってやらなかったらしいんだ、愛情に飢えてたんじゃないかな」とゴリさん。

 そこへボスが出勤、ノーネクタイ、シャツの胸もはだけて。殿下「あれ、ボス?ギプスまだ取れないんですか?」「ああ意外に長引いてな、歳かな」一同大笑い。「あ、ゴリ、事件じゃなくて何よりだったな」と声をかけてデスクへ。

「そらま、そうなんですけどね、俺、あんな親にはなりたくないっすよ、子供がかわいそうでね」とゴリさん。「難しいものなんだよ、子供の教育と言うものはね」としみじみ言う長さん。「ま、俺のところはカミさんが家を出ていく心配はないからな」「なんだい長さん、それお惚気かい?」と揶揄う山さん。BGMがスピーディなメインテーマなので、このシーンんは和やかなのに、勢いがある印象。

 そこへジーパンが慌てて入ってくる。「ボス、男の死体が発見されたそうです」。ゴリさん「なに?拳銃でか?」「いや、まだわかりません、矢追町の空き地です」とジーパン。

 矢追町の空き地。近くに清掃工場の煙突が見える。パトカー、覆面車が停められて現場検証。「山さん、被害者のポケットからこんなものが出てきたよ」。長さんが印鑑証明を見せる。前原雄吉とある。被害者は六十歳ぐらい。長さんは前原をあたることに。凶器は拳銃、至近距離から撃たれているとジーパン。山さん、ゴリさんに「慰留品はどうだ?」「それらしいものは別にありませんね」「銃声を聞いたものがあるかどうか聞き込むんだ」と指示。そこへ殿下「被害者の衣服に、こんなものが付着していました。何かの粉みたいですね。一応鑑識に回しておきます」。

 小田急線の線路が間近に見える古いアパートの2階。被害者・前原雄吉の住まいを訪ねている長さん。「主人は昨日、家を出たまま、帰ってこなかったんです」と前原の妻(目黒幸子)が話す。「あたし、変だなと思ったんです。でも、まさかこんなことに」堪えきれずに泣き出す。電車の通過音の騒音がすごい。この中で被害者は暮らしていたのか。「それでご主人は昨日、どこへ行かれましたか?」「土地を見に行ったんです。実は私ども家を建てる土地を探しておりまして、西北不動産にお願いしておりました。そしたら昨日、いい土地が見つかったから、すぐお金を持ってくるようにって電話がありまして、主人はそれで出かけたんです!」「お金はどれくらい持っていかれました?」「1000万円と言うことでしたけど、とりあえず500万円だけ・・・」大声で泣き出す夫人。
 
 捜査第一係。汗を拭き拭き、「暑かったね」と戻ってくる長さん。「ボス、西北不動産、行ってきました。西北不動産では被害者に電話なんかしなかったって言うんです」「なに?」。山さん立ち上がり「そうすると、誰かが西北不動産の名前を騙って被害者を呼び出したことになるな」「西北不動産では思い当たるものがいない、って言うんですがね」「そうか」とボス。

 そこへジーパンが戻ってきて「拳銃の仕様がわかりました。S&Wの35口径です」。その拳銃の前科はなかった。山さんはジーパンと拳銃のルートをあたることに。入れ違いに殿下が鑑識から戻ってくる。「ボス、被害者の服についていたものがわかりました。花粉です」「花粉?」「ツツジの花粉です」。それを聞いていたゴリさん。「なに?ツツジ?」。ボス「ゴリ、どうした?」。

 勉が殺人を目撃した公園。ツツジが満開である。ゴリさんと殿下、再び公園の目撃現場へ。殿下「ゴリさん、今の季節はツツジなんかどこにも咲いているし、それに死体が発見された場所とここじゃ、まるで方角が違うし、あの子の話を結びつけるのは、ちょっと無理じゃないかな」「とにかくもう一度調べよう、徹底的に調べるんだ」とゴリさん。

 公園の茂みや木の根などを調べるゴリさん、殿下。何か手がかりのあるものはないか?ゴリさんは何かを見つける。「殿下!」「はい。なんですか?」「髪の毛だ」。事件と関係があるものかどうか、鑑識へ回すことに。

 捜査第一係。ゴリさんが鑑識から戻ってきて「ボス、髪の毛が被害者のものと一致しました」。このショットは半分に開いたドアから、ボスのデスクをロングで捉えている。「じゃやっぱり、犯行現場はあの林だったのか!」と殿下。「ああ、勉くんが目撃したっていうのは本当だったんだ」ゴリさん真剣な表情。殿下「そうか」とショック。「それなのに、俺は信じてやらなかった、あの子があんなに言ったのに・・・クソ、信じてやらなかった」。ボスも真剣な表情。「ボス、もう一度あの子に会ってきます」とゴリさん。うなづくボスは「殿下」と同行するよう促す。

 公園の小さな池で、ひとりヨットの模型で遊んでいる勉少年。向こう岸についたヨットを持ち上げる男は、なんと、殺人事件の犯人!上田忠好さんの風態がかなり怪しいのでコワいショット。ヨットを差し出す男に、勉少年はどこかで見た顔だと首を傾げる。サングラスを降ろす男。気づいて逃げ出す勉少年。男は池の中をバシャバシャと走り、逃げる勉少年を追いかける。早く、ゴリさん来てくれ!

 自宅の団地まで逃げる勉を追いかける男。家に帰って玄関の鍵を閉めると勉少年。ホッとしたのも束の間、ドアの外から階段を昇る足音が聞こえる。怯える勉。足音がドアの前で止まる。ドアノブが回る。男は針金で鍵を開けようとしているのだ。ああコワい! 必死で鍵穴に入れた針金を回す男。向かいの主婦(安藤純子)が何事かと顔を出す。何食わぬ顔で階段を降りていく男。立ち去る足音を確認する勉少年。水を飲もうとしていると電話が鳴る。恐る恐る受話器を上げる。

「いいか坊や、林の中で見たことは、誰にも言うんじゃないぞ、言ったらお前を殺す」受話器を放り出して飛び退く勉。「殺されるのが嫌なら絶対喋るな、わかったな」と電話を切る。

 ゴリさんと殿下の覆面車が、団地へ。ドアをノックするゴリさんと殿下。鍵が空いている。部屋に入るゴリさんたち。しかし勉はいない。受話器がぶら下がったまま。何かあったのか? ゴリさんは向かいの部屋をノックする。「あ、どうも、お隣の勉くんは?」「中にいませんか?」「ええ」「おかしいわね、さっきまでいたんですけどね、じゃ、あの人が・・・」「あの人?」「変な男がドアを開けようとしていたんですよ」「どんな男ですか?」「顔は見てないからわかんないわ」。

 向かいの奥さんを演じた安藤純子(すみこ)さんは、特撮テレビではお馴染みの女優さん。「ジャイアントロボ」第13話「悪魔の眼ガンモンス」(1968年)ではBF団55号、「戦え!マイティジャック」第22話「東京タワーに白旗あげろ」(1968年)ではQの女、などを演じている。

 そこへ常夫が帰宅してくる。冴えない風態、くたびれたサラリーマンである。「勉くんに会いませんでしたか?」とゴリさん。隣の主婦が説明する。「変な人が来てね」「犯人らしいんです。勉くんが見たっていう」。驚く常夫「だってあれは勉の嘘だったんじゃないですか!」「本当なんですよ、勉くんは本当に事件を見たんです」「じゃ、どうしてあん時は嘘だなんて言ったんですか!」。おいおい、お父さんも頭から嘘つき呼ばわりしたじゃないか!

 ゴリさん、殿下、言葉もない。「勉にもしものことがあったら、どうするんですか!あんた方の責任ですよ、これは!」。たまりかねた殿下「谷内さん!」と声を荒げるがゴリさん制止して「まだ連れ出されたと決まったわけじゃないんですから、ご心配なく」と頭を下げて、勉を探しにいくゴリさんと殿下。

 必死に勉を探し回るゴリさん。公園に、ヨットの模型が落ちているのを見つける。勉のものかもしれない。殿下、団地の近くの商店で聞き込む。商店街、ヨットを手に勉を探すゴリさん。殿下も走り回る。橋の中ほどで川を見つめている少年を見つけ「勉くん!」と声をかけるゴリさん。しかし人違いだった。そこへ殿下「勉くんを見かけたものは出てこないよ」「そうか・・・」「でもゴリさん、大丈夫だよ、きっと友達の家でも遊びに行ってるのさ」と殿下。その言葉に「犯人は勉くんに顔を見られたことを知ってるんだぞ!どうして連れ出されたんじゃないって、言い切れるんだ!」と憤るゴリさん。「俺はな殿下、あの時、勉くんの言葉を信じてさえやっていれば、こんなことになんなかったって、それが・・・」。二人は、もう一度探してみることに。

 捜査第一係。ボス電話で「あ、ゴリか、山さんがタレコミ屋から情報を掴んだ。田沼ってチンピラがS&Wの35を持ち歩いていたらしい」「犯人ですか?そいつが」「いや、まだわからんが、山さんたちが張り込んでいる。お前らも合流しろ」。

 新宿歌舞伎町。山さんが張り込んでいる。ゴリさんと殿下も到着。田沼は店の中にいる。「奴は拳銃を持っているかもしれない。他の客を巻き添いにすると危ない、出てくるまで待つんだ」。必死のゴリさん「しかし・・・」と息巻いているが「中には長さんとジーパンが張り込んでいるよ」と山さん。サングラス姿がダーティコップな感じ。

 喫茶店。ウエイトレスに「今晩付き合えよ」と絡んでいる田沼(石丸博也)。ああ、こんな柄が悪いのが「マジンガーZ」の兜甲児なのか(笑)石丸さんは声優中心の活動だが、「新五捕物帳」「大江戸捜査網」などの時代劇にも出演。「太陽にほえろ!」では、第120話「拳銃の条件」(1974年)にも出演している。

 ジーパンと長さん、客を装って様子を見ている。田沼が店から出たタイミングでゴリさんと殿下、追いかける。逃げ出す田沼。山さんも後を追う。歌舞伎町の雑踏から、閑散とした昼の飲み屋街へ。ゴミ箱につまづいて転んだタイミングで、ゴリさん、田沼と乱闘。殿下も参戦して取り押さえる。「おい、子供をどうした?どうしたんだ」と田沼の頬を叩くゴリさん。「子供?なんのこったい?子供なんか知らねえよ」。流石にいい声。ジャッキー・チェンの声の人だからね。ゴリさん執拗に追及「子供はどこなんだ!言え!」。そこへ山さん、ジーパン、長さんが到着。檄しているゴリさんに山さんが「俺に任せろ」と、田沼に「お前、拳銃を持ってるそうだな」「拳銃、そんなもの持ってねえよ」「誤魔化してもむだだ、ちゃんと情報が入ってるぞ、お前はその拳銃で強盗殺人をやったんだろ」「よしてくれよ、俺はそんなことしないよ!」「ならその拳銃出してみろ」「もう売っちまったなぁ」。田沼は「戸川って男だよ」。ゴリさん「おい、今そいつはどこだ!どこなんだ!」。

 戸川不動産。ゴリさん、殿下、ジーパンがやってくる。ゴリさん、店に入って戸川の妻(小園蓉子NC)に警察手帳を見せる。「戸川どこですか?」「いませんよ」憮然とする妻。「昨日から帰ってきませんからね」「どこへ行ったんですか?」「それが判れば苦労はしませんよ」。ゴリさん出てきて、収穫なしの表情。殿下とジーパンに「張り込み頼むぞ」。そこへ覆面車に無線が入る。ボスが「勉くんが発見された。無事だったぞ」。仏頂面だったゴリさんの顔が明るくなる。「ほんとですか!」「今、並木町の交番にいる。迎えに行ってやれ」。ゴリさん嬉しそうに「了解!」。

 並木町交番。ゴリさんが走ってくる。「どうも、七曲署の石塚です」と交番へ。勉少年、毛布に包まってスヤスヤと眠っている。ゴリさん優しい顔。警察官に「君が発見したんだね」「河原をパトロールしていたら、この子が泣いていたんです」。ゴリさん勉の寝顔を見ながら「こんな遠くまで何し来たんだろう?」「なんでも家にいるとこわいおじちゃんが来るとか、ひどく怯えてました」ゴリさん涙ぐんで、勉に近づいて、勉の頬の涙をハンカチで拭いてあげる。「さ、家に帰ろうな」。

 夕焼け、眠っている勉をおぶって歩くゴリさん。「悪かったな、勉くん。信じてやらなくて、だけどもう大丈夫だぞ、おじちゃんがついているからな、もう何にも怖がることはないんだぞ、な」。勉は眠っている。

捜査第一係。お茶を淹れてきた久美、ボスに「でも良かったですね、勉ちゃんが無事で」「うん」「ゴリさんもホッとしたろうな」と山さん。そこへ長さんが戻ってきて「ボス、戸川の写真が手に入りました。奥さんに言って借りてきたんです」。戸川(石山克己)の写真。「戸川は商売がうまくいかなくて、金に困っていたみたいです」「そうすると犯人は戸川ですかね」と殿下。この写真をゴリさんに届けて、勉に確かめてもらうことに。

 団地。子供たちの遊ぶ声が聞こえる。張り込んでいるゴリさん覆面車から降りて当たりを見渡している。そこへ殿下が写真を持ってやってくる。ゴリさん、勉の家のブザーを鳴らす。勉、怖くなって部屋の隅へ隠れる。ゴリさんブザーを鳴らし続ける。隣の奥さんが出てきて「谷口さん会社行きましたよ」「ええ知ってます。昨日の今日だってのに、全く」。奥さんによれば勉少年は中にいるはず。

 「勉ちゃん、隣のおばさんよ。ここ開けて」。その声で安心して、ドアを開ける勉少年。「勉くん、いるじゃないか。今日はね、勉くんに見てもらいたいものがあるんだ」と戸川の写真を見せる。林の中で見た男かどうかを確認するゴリさん。勉は頑なになって「僕、何にも見なかったもん!」と言い張る。ゴリさんは「よしわかった、もう何にも怖がることないんだぞ、おじさんがついているんだから、ちゃんと教えてくれたらね、おじさん、一緒に遊んであげるよ」「ほんと?」「約束するよ」。改めて写真を見せる。「林の中で見たってのは、この人かい?」。勉、しばらく考えて「この人」と答える。違うんだけどなぁ・・・。ゴリさんそれを信じて「よく教えてくれたね、さあ、おじさんと遊ぼう」と勉を抱き上げる。

 七曲署、ジーパンが戸川を連行してくる。「何すんだよ!」。取調室に入る戸川とジーパン。「俺は人なんか殺しちゃいないぜ」「そうか」。そこへ落としの山さんが現れる。「往生際が悪いな戸川、惚けたってだめだ、ちゃんと子供が証言しているんだからな」「子供?どこの子供だい?」「お前が犯行現場で会った少年だよ」「嘘だ、そんなことは嘘だい」と否認する戸川。「それだけじゃない、田沼も自供したぞ、お前にS&Wの35を売ったってな、お前はそいつで前原雄吉を射殺した、そうだな」「ち、違う、俺はそんなことしちゃいない!」「誤魔化すな!いい加減に本当のことを言ったらどうなんだ?」。戸川は、田沼からS&Wは買ったことを認めた。しかし前原殺しは覚えがない。「本当だよ!」そこへ長さんが来て、山さんを呼び出す。

 戸川を演じた石山克己(のちに石山勝己)さんは1950年代から映画やテレビに出演。黒澤明監督『隠し砦の三悪人』(1958年)や、飯島敏宏監督『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリヤス』(1972年)などに出演。日本テレビ「ルックルックこんにちは」ではリポーター”もみあげパンダ”として親しまれた。「太陽にほえろ!」は第1話から第663話まで、計7話出演している。

第1話「マカロニ刑事登場!」(1972年) - 情報屋
第72話「海を撃て!! ジーパン」(1973年) - 金森先生
第103話「狼を見た少年」(1974年) - 戸川社長
第114話「男の斗い」(1974年) - 中光海運倉庫社員
第130話「鳩が呼んでいる」(1975年) - 前川の上司
第152話「勇気」(1975年) - 中岡
第663話「1970年9月13日」(1985年) - 東伊豆署刑事

 捜査第一係。ゴリさんが勉に、目撃した時の話を聞いている。そこに長さん「ゴリさん、ちょっと」と声をかけて、ボスのところへ。「戸川のアリバイを調べたんだがね、犯行時刻には麻雀をしているんですよ」「じゃ、戸川はシロか?」と殿下。「そんな、だってあの子が」とゴリさん。「確かな証人もいるんだよ」。ゴリさん、勉少年に、もう一度写真を見せて「君が見たっていうのは、本当にこの人かい?」「本当だよ!」と言って下を向く。ゴリさん「嘘なんかついちゃいけないんだぞ、おじさん怒ったりしないからな、本当にこの人なんだな?」うなづく勉少年。その様子をじっと見ているボス、長さん、山さん、殿下。

 「だけど、どうしてそんな嘘をついたんですかね?」と殿下。「一人でいるのが怖かったんだよきっと、犯人を教えれば、俺がいつもついててくれると思ったんですよ」とゴリさん。「ボス、俺に時間くれませんか?」「どうするつもりだ?」「ゆっくり時間をかけて、あの子の心を時ほぐしてやりたいんですよ」「いいだろ、お前に任せる」とボス。

 遊園地。ミニジェットコースターで絶叫するゴリさん、楽しそうな勉少年。いろんな遊具で遊ぶ。メリーゴーランドの馬に乗るゴリさん。子供に返って「ハイヨー」と叫んでいる。嬉しそうな勉。その様子をトイレの中からじっと見ている犯人・小松謙次(上田忠好)その手にはS&W 35口径が握られている。狙いを定めるも失敗。ゴリさんは下で勉に手を振っている。音楽はヨハンシュトラウスの「春の声」。小松は勉を探して遊園地の中を歩き回っている。ゴリさんは綿菓子を買いにその場を離れる。ダンボから降りて、ゴリさんを探す勉。近づく小松。その前をゴリさんが「勉くん!」と綿菓子を持って走ってくる。ゴリさんにしがみつく勉。本当に心細かったのだ。「おじさん、ちゃんと約束したじゃないか、一緒にいるって、おじさんは嘘なんかつかないからな」。勉に笑顔が戻る。ゴリさん、勉を肩車して歩く。綿飴を食べて楽しそうな二人。

「今度は何に乗るか?」「ヨット!」「え?ヨットはここにはないな」「海に行けばあるよ」「よし、じゃ海行くか!」。じっと二人を見ている小松。しかし上田さん人相悪いねぇ。

 初夏の海。ディンキーを操舵するゴリさん。免許持ってるんだね。念願が叶って嬉しそうな勉。「敬礼!勉くんはこの船の船長だから。勉船長、本日はどこへ参りましょうか?」「海賊退治!」「ようし海賊退治。それがいい、海賊ってのはね、人殺しで悪い奴なんだぞ、ほら勉くんが林の中で見たろ?あれが海賊だよ!どんな顔してたっけ?」。その話になると顔が暗くなる。「あれ?勉くん、おかしいぞ!船長ってのは強いんだろ?」「うん!」「さ、どんな顔してた?」。

 捜査第一係。山さんが「戸川の口から犯人が割れました」とボスに報告。小松謙次、42歳、一匹狼の土地ブローカー。戸川はこの男に拳銃を売ったと、小松の写真をボスに見せる。「前科があるのか?」「傷害で二度あげられています。戸川の話だと、ひどく凶暴性のある男で、谷内勉を付け狙っていたというんですがね」「大丈夫でしょうか?ゴリさんたち」と長さん。「よし、ゴリんところへすぐ行け」とボス。

 ヨットの上で、小松の似顔絵を書いて「こんな顔だったんだね」と確認するゴリさん。「うん」「この男か、この男の写真を見たら、こいつだって言えるね」大きくうなづく勉少年。「急いで引っ返そう!よし」と帆をあげるゴリさん。

 そこへモーターボートが近づいてくる。ディンキーに突進してくるのだ。おお、裕次郎さんの初主演作『狂った果実』(1956年・中平康)のクライマックスみたい! 小松、拳銃を二人に向けながら突進してくる。「伏せろ!」執拗に近づいてくる小松のモーターボート。ゴリさんは無線で応援を要請する。ゴリさん、自分の拳銃に弾が入っていることを確認。小松に向けて発砲!

 一方、長さん、ジーパン、殿下の覆面車が海沿いの道を走っている。無線からは拳銃とモータボートの音が聞こえてくる。

 洋上ではゴリさんと小松の銃撃戦が展開。伏せている勉少年。小松の弾丸がヨットの帆のロープを切る。操舵不能となるディンキー。ゴリさん煽られて海中へ。驚く勉少年。なおも銃を向けている小松。ゴリさんヨットになんとかしがみつき、艇内へ。

覆面車。トンネルを抜けて、銃撃戦の現場近くへ。

 拳銃を拾ったゴリさん、小松に向けて発砲。銃弾に倒れる小松。そこへジーパン、長さんたちのモーターボートが近づいてくる。「大丈夫ですか!」。ニッコリ笑って手を振るゴリさん。「さすが船長だな!」としがみついてきた勉をしっかりと抱く。「OK OK!さ、行こうぜ」。

 七曲署。ゴリさん、ジーパンが帰ってくる。また玄関でゴリさんの背広を引っ張る勉少年。「なんだ勉くんじゃないか、どうした?」「また海賊退治しよう!」「それがな、もう退治していなくなっちゃったんだよ」「またしたい!」「俺もしたいけどな、忙しいんだよ、また今度な」「ほんと」「ああ本当だよ、今度はきっと勉君のところに遊びに行くから」指切りをする二人。メインテーマが流れて、勉を見送るゴリさん。門には常夫が待っていて、頭を下げる。

 捜査第一係。ゴリさんが戻ってくる。みんな勉のことでゴリさんを揶揄う。「ま、親ともなれば責任重大だからな、可愛いんだけじゃすまないんだぞ」。


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