娯楽映画研究所ダイアリー 2021年7月26日(月)〜8月1日(日)
7月26日(月)『蛇娘と白髪魔』(1968年・大映・湯浅憲明)・『坊ちゃん』(1958年・松竹・番匠義彰)
角川シネマ有楽町「妖怪・特撮映画祭」で、湯浅憲明監督『蛇娘と白髪魔』(1968年12月14日・大映東京)をスクリーンでは35年ぶりぐらいに。初見は銀座大映で『妖怪大戦争』(大映京都・黒田義之)と二本立てで。幼稚園の年中の時で、やたら怖かった記憶がある。空前の妖怪ブームのなか、10月にNET系でスタートした「妖怪大作戦 河童の三平」(東映)で、河童の国のお姫様・カン子ちゃんを演じていた子役・松井八知栄ちゃんをヒロインに迎え、年少観客にも親しみやすかった。
昨夜の娯楽映画研究所シアターは、番匠義彰監督研究。好漢・南原伸二さんが夏目漱石原作の『坊っちゃん』(1958年6月15日・松竹大船)を演じた、カラー、松竹グランド・スコープの明朗篇。松竹のエース監督として、観客が楽しめる娯楽映画を安定の面白さで提供してきた番匠義彰監督に、佐々木孟プロデューサーが、松竹としては初となる「坊っちゃん」の映画化を任せた。主演はこの年3月11日封切り、山田洋次脚本、野村芳太郎監督『月給13,000円』でユニークな演技を見せた南原伸二(のちの宏治)さん。前年、11月3日封切り『愛して恋して喧嘩して』(川頭義郎)で、東映から松竹入りした南原伸二さんに、松竹がいかに期待をかけていたかがわかる。
7月27日(火)『かりそめの唇』(1955年・松竹・番匠義彰)
今宵の娯楽映画研究所シアターは、番匠義彰研究。記念すべきデビュー作『かりそめの唇 前篇・たそがれの過失 後篇・幸福の岸』(1955年8月24日・松竹大船)。北条誠さんの原作を馬場当さんが脚色した、松竹伝統のメロドラマの究極スタイル。主題歌「かりそめの唇」(作詞・西条八十、作曲・万城目正)は初代コロムビア・ローズが歌って大ヒット。戦前の『愛染かつら』(1937〜1939年)以来の、メロドラマと流行歌のタイアップは、戦後、昭和30年代まで連綿と続いていた。
7月28日(水)『東京ド真ン中』(1974年・松竹・野村芳太郎)・『追いつめる』(1972年・松竹大船・舛田利雄)・『喜劇 日本列島震度0』(1973年・松竹大船・前田陽一)・『暴れん坊三羽烏』(1960年・松竹大船・番匠義彰)
浅草の歯科医で定期治療。朝から強い刺激を受けてビリビリ^_^ 昼からは、ラピュタ阿佐ヶ谷へ。「松竹レアもの祭」で野村芳太郎「東京ド真ン中」、舛田利雄「追いつめる」・前田陽一「日本列島震度0」と、喜劇→活劇→喜劇の3本立て! これが「レアもの」鑑賞のオーラスとなります。「松竹レアもの祭」は、31日まで!
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で野村芳太郎監督「東京ド真ン中」を観ます。これ、宍戸錠さん版「男はつらいよ」的世界。榊原るみさんが可愛い! もちろん渥美清さんのアリア的なシーンも!渥美さんの登場音楽がなんとアレ!
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」。野村芳太郎監督『東京ド真ン中』(1974年6月1日)をピカピカのプリントで堪能。川又昂キャメラマンによれば、撮影が長引いていた「砂の器」の途中、会社からの要請もあり、製作費捻出のために急遽撮った「軽い喜劇」とのこと。
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で、舛田利雄監督、田宮二郎さん、渡哲也さん主演『追いつめる』(1972年2月23日・松竹大船・舛田利雄)を、ピカピカのプリントで堪能した。
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」の最終週、前田陽一監督『喜劇 日本列島震度0(ゼロ)』(1973年11月22日・松竹大船)を、綺麗なプリントで久しぶりに楽しむ。渋谷実監督の薫陶を受け、昭和39(1964)年『にっぽんぱらだいす』で監督デビュー。昭和40年代、松竹喜劇のエースとして、その作風やクオリティは不安定であるものの、発想やノリの良さもあって、前田作品はいつも気になる面白さがある。
今宵の娯楽映画研究所シアターは、番匠義彰監督としては3本目となる「三羽烏もの」、山本豊三さん、三上真一郎さん、津川雅彦さん主演『暴れん坊三羽烏』(1960年7月14日・松竹大船)。この作品が作られた昭和35(1960)年は、若者を中心に「ガンブーム」「ミステリーブーム」が席巻。映画界も「アクション」旋風が吹き荒れていた。日活が、石原裕次郎・小林旭・赤木圭一郎・和田浩治さんの「ダイヤモンドライン」を組んで、彼ら主演のアクション映画を交互に上映する「ピストン作戦」を展開していた。東宝では岡本喜八監督による「独立愚連隊」「暗黒街」シリーズが連作されていた。これまで「下町人情もの」をベースに、青春ものや音楽喜劇など、多彩なジャンルでモダンなコメディを撮ってきた番匠義彰監督だが、今回は、なんと「ミステリー要素」を取り入れて「三羽烏殺人事件」ともいうべきサスペンス・コメディとなっている。
7月29日(木)『黒部の太陽』(1968年・石原プロ・熊井啓)・『橋』(1959年・松竹大船・番匠義彰)
熊井啓監督『黒部の太陽』(1968年)を100インチ投影で見始める。1時間見たところで裕次郎さんが工事に参加する決意をするところで食事休憩。有無を言わさぬ映像の力、ロケーションのマジックで、引き込まれてしまう。
「黒部の太陽」いつ観ても、最大の見せ場は、滝沢修さんVS柳永二郎さん。柳さんが「こうなりゃヤケクソですわ」と降参する場面は、ゴジラVSコング超え!^_^
今宵の娯楽映画研究所シアターは、番匠義彰全38作品の堂々たるベストの一つ『橋』(1959年3月4日・松竹大船)をたっぷりと味わった。毎日新聞に連載の大佛次郎の同名小説を、番匠作品を手がけてきたベテラン・柳井達雄さんが脚色。艦長時代のことが忘れられない元提督と父を思う次女。そして彼女を愛する若者の善良さ。運命の皮肉と、人が人を思う暖かさを、番匠義彰らしいテクニックとセンスで描く文芸ロマン。文芸作といえども「花嫁シリーズ」同様の面白さとカタルシスに満ちている。どんな題材でも、番匠流の面白さにしてしまう、その語り口に感服!
7月30日(金)『浮気のすすめ 女の裏窓』(1960年11月20日・松竹大船)・『水戸黄門漫遊記 火牛坂の悪鬼』(1955年・東映)
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」では37作品を上映。うちDVD化は『眼の壁』と『みな殺しの霊歌』の2作のみ。名画座でないと観ることができないレアものを、なるべく美しいプリントで!という企画でした。番匠義彰監督作の面白さを、皆さんに発見していただことが何よりです!5月31日から2ヶ月間開催してきた、ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」。明日が最終日となりました。沢山のご来場、本当に嬉しいです。ありがとうございます!
7月4日の鰐淵晴子さんトーク、デイリースポーツの記事
7月18日の佐藤蛾次郎さんトーク、デイリースポーツの記事
今宵の娯楽映画研究所シアターも番匠義彰監督研究。伴淳三郎さん主演の風俗喜劇『浮気のすすめ 女の裏窓』(1960年11月20日・松竹大船)。番匠監督としては、7月公開の異色ミステリー喜劇『暴れん坊三羽烏』に続いて撮ったもの。原作は吉行淳之介さんが週刊サンケイに連載したエッセイ。椎名利夫さんが脚色したカラー作品。
続いては、月形龍之介さん版『水戸黄門漫遊記 火牛坂の悪鬼』(1955年・東映・伊賀山正徳)。ニセ黄門一行に、杉狂児さん、渡辺篤さん、清水金一さん! もうそれだけで、大満足!
7月31日(土)「佐藤利明の娯楽映画研究所SP」・「第二回石原裕次郎リサイタル」
阿佐ヶ谷ネオ書房「佐藤利明の娯楽映画研究所SP クレイジー大全2021 remix」今回は阿佐ヶ谷地域区民センター会議室で開催。ソーシャルディスタンスに気をつけつつ20名ほどの参加者にいらしていただきました。
2月「クレージー映画大全2021」、3月「クレージーTV大全2021」と開催したところで東京都に緊急事態宣言発令で、4月に予定していた「クレイジー音楽大全2021」が6月に延期となりました。そこで、これまでの全3回の総集編、よりぬき的に、ご紹介しきれなかった
昨年から「若大将」「石原裕次郎と渡哲也」「社長シリーズ」「クレイジーキャッツ」と昭和30年代から40年代の「娯楽映画」をテーマに展開してきました。次回から「ザッツ・ニッポン・エンタテインメント」戦前篇!エノケン・ロッパの時代へ!温故知新!
帰宅後、おやすみ前に1967年、大阪フェスティバルホールの石原裕次郎さんリサイタルへ、タイムトリップ! 原稿を執筆するため、昨夜、久しぶりに1967年5月、大阪フェスティバル・ホール「第二回石原裕次郎リサイタル」DVDを100インチスクリーンに投影。2011年に発売されたDVDのリイシューだが、フェスティバル・ホールのステージに立つ裕次郎さんに惚れ惚れする。司会の藤村有弘さんとのトークのリラックスした感じ。極め付けのメドレー「俺は待ってるぜ〜黒い海峡〜銀座の恋の物語〜赤いハンカチ」を歌う1967年の裕次郎さん。その歌のうまさに、今更ながら感動するプレスリーやビートルズ同様、間に合わなかった世代にも、このうまさを「発見」して欲しい。映像が残っていることの、有り難さ!
8月1日(日)『素晴らしき十九歳』(1959年7月14日・松竹大船)・『娘の修学旅行』(1955年・大映東京)
先日、イマジカで拝見した驚愕映像は、実はこのシークレット上映される「メイキング・フィルム」でした。とにかく、驚愕、眼福、至福のニュースフィルムです。公式プレスに大先輩の御二方と共に、コメントを寄せました!
ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で上映した、番匠義彰監督『素晴らしき十九歳』(1959年7月14日・松竹大船)は、番匠喜劇の面白さが詰まった青春音楽コメディ。松竹伝統の「若旦那もの」の現代版として、この二年後に『大学の若大将』(1961年・東宝・杉江敏男)を手がける笠原良三さんによる脚本は、加山雄三さんの「若大将シリーズ」前夜のプロトタイプとしても(後付けファンには)楽しめる。脚本は笠原良三さん!
今宵の娯楽映画研究所シアターは、水野洽監督『娘の修学旅行』(1955年・大映東京)。森口寅吉(潮万太郎)は、銀座の名物サンドイッチマン。ある日、九州に預けてある高校生の娘・小夜子(市川和子)が修学旅行で上京することに。東京で会社経営をして成功してると嘘をついていた寅吉は大慌て。そこでサンドイッチマン仲間が、人肌脱いで、寅吉を一日だけの社長に仕立てるが…つまり、デイモン・ラニヨン原作、フランク・キャプラ監督『一日だけの淑女』の頂き。脚本は高橋二三さん、池上金男さん。だ昭和30年の銀座ロケーションで、僕らは「娘の修学旅行」に同行している気分に! 何よりの楽しさ! トップシーンは服部時計店、三原小路。日本橋から、京橋のテアトル銀座前、銀座通りに、すずらん通り、並木通り!ああ、たのしき哉、東京映画探検