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『社長三代記』(1958年・東宝・松林宗恵)

「社長シリーズ」第4作!

 社長シリーズ第4作『社長三代記』(1958年・松林宗恵)。タイトルでいきなり、初代・河村黎吉、二代目・森繁久彌、三代目?となる。もうバトンタッチなのか?で、福富電機の10周年祝賀会では、先代社長の娘・雪村いづみさんが撮影したフィルムが上映され、先代社長のありし日の姿が上映される。

 このフィルムは『三等重役』のフッテージを使い、森繁課長と河村社長の蕎麦をハサミで切る名場面などで、郷愁が湧いてくる。つまり「社長シリーズ」は『三等重役』ありきだということを強調。もちろん小林桂樹も登場する。で、それぞれのキャラの延長だということ。このイズムは最終作まで続く。

 福富電機の本社ビルは、懐かしや東京フィルムビル!経理部長・池田定吉(三木のり平)の老獪さ、C調ぶりに磨きがかかっている。バーのマダム・エミ(中田康子)、新橋芸者・梅千代(扇千景)。このあたりの軽さの対比に、叩きあげの重役・大場太平(加東大介)の堅物ぶりが際立つ。それぞれのキャラの案配は、ここで固まった。

 しかし扇千景の声、オクターブ高いなぁ。半玉のうさぎを演じた笹るみ子(なべやかんのお母様)の可愛さ!社長・淺川啓太郎(森繁)と社長秘書・長谷川清(小林桂樹)のやりとりが絶妙。押したり、引いたり、捨て台詞も含めて良いなぁ。会社じゃ勤勉で忠実なる秘書の長谷川が、家に帰ると母・ちよ(英百合子)に対して横柄な態度をとるのがおかしい。東宝映画のお母さん・英百合子への(甘えが入っての)傍若無人な態度は、この作品から定番に。安定の面白さ。

 妻・厚子(久慈あさみ)との買い物約束を反故にして、芸者衆と銀座に買い物に行った浅川社長。女房とバッタリ、その時の言い訳がおかしい。「(社長クラブのゴルフ会で)こんなに商品もらっちゃった」って、そんなわけないだろう(笑)

 そして渡米が決まった浅川社長の代行となるのが、真面目だけが取り柄の営業部長・大場太平が抜擢される。ところが堅物の加東大介が社長になったために、会社はエライことになってしまう。という、シリーズのパロディともいうべき展開となる。

 大場新社長の妻・まつ子(杉葉子)が、なかなかしたたか。長男はのちに青春シリーズの優等生でお馴染み大沢健三郎。この後、成瀬巳喜男監督『秋立ちぬ』(1960年)に出演する。英語に弱い社長代理がトイレの表記で失敗するギャグは、東宝で実際にあった話と、当時文芸部担当の田波靖男さんから伺った。

 森繁社長が帰国、接待のアメリカ人・ハロルド・コンウェイの通訳にトニー谷。ここで、トニー、森繁、三木の珍芸タイム。トニー谷のインチキぶりは、いつも見てもおかしい。





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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所
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