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ラピュタ阿佐ヶ谷 番匠義彰:松竹娯楽映画のマエストロ 2022年2月20日〜4月2日


ラピュタ阿佐ヶ谷 2月20日〜4月2日


2022年、生誕100年を迎える番匠義彰監督(1922〜1992年)。昭和30(1955)年に『かりそめの唇 前後篇』でデビューを果たし、エース監督として日本映画黄金時代を駆け抜けた。昭和40(1965)年、『ウナ・セラ・ディ東京』を最後にテレビ映画へ転身。わずか十年間に38作を残した。

 そのいずれもクオリティは高く、娯楽映画としてもめっぽう面白い作品ばかり。有馬稲子、小山明子、倍賞千恵子、鰐淵晴子らをヒロインにした番匠の「花嫁シリーズ」は、ハイテンポ・ハイテンション・ハイセンス、ハリウッド喜劇のようなモダンなコメディとなった。今回はシリーズ全作を一挙上映。

メ ロドラマ、音楽映画、文芸作、青春映画どんなジャンルも、観客を飽きさせない「番匠スタイル」が貫かれている。一目瞭然、百聞は一見にしかず。松竹娯楽映画のマエストロ・番匠義彰の世界をご堪能あれ!

佐藤利明(娯楽映画研究家)

23作品連続上映

【トークイベント】

4月2日(土)14:30『明日の夢があふれてる』上映前
ゲスト:鰐淵晴子さん
聞き手:佐藤利明さん(娯楽映画研究家)
※料金:1,600円均一
※招待券はご利用いただけません。

抱かれた花嫁(1957年) 2月20日(日)〜22日(火)

松竹グランドスコープによる「花嫁シリーズ」第一作。浅草の老舗寿司屋の看板娘・有馬稲子と母・望月優子、二世代の恋をめぐる騒動。隅田川風景、懐かしの浅草オペラなどの風俗描写も楽しく、モダンでハイテンションの番匠コメディが本作で確立。

オンボロ人生(1958年) 2月20日(日)〜26日(土)

加藤芳郎の漫画を原作に、新宿を舞台に青空生活を満喫する自由人たちのユーモラスな行状を描く。東宝ミュージカルのスタア・宮城まり子とウエスタン歌手・小坂一也の歌もふんだん盛り込んだ総天然色ファンタジー。浜口庫之助が意外な役で登場!

花嫁の抵抗(1958年) 2月20日(日)〜26日(土)

結婚相談所の娘・小山明子と、いささか頼りない魚類学者の卵・田村高廣は果たしてゴールインできるのか? 母・清川虹子が勝手に決めた縁談や芸者・有沢正子の横恋慕など、次々とハードルが現れ、事態はややこしいことに。「花嫁シリーズ」第二作

橋(1959年) 2月23日(水)〜3月1日(火)

元海軍の父・笠智衆の頑固さ、父を慕う次女・岡田茉莉子の優しさ、彼女を愛する青年・石濱朗の善良さ。運命の皮肉と人が人を想う暖かさに溢れたハートウォーミングな佳作。築地界隈の「橋づくし」、隅田川を行く水上バス。東京風景も堪能できる。

空かける花嫁(1959年) 2月23日(水)〜3月1日(火)

日本橋大伝馬町の老舗繊維問屋の孫娘・有馬稲子と頑固一徹の祖父・志村喬の世代間の対立と融和をハイテンポで描く傑作コメディ。桂小金治、浪花千栄子などのベテラン喜劇人の賑やかな共演も楽しい。原作は松竹新喜劇の「花嫁シリーズ」第三作

新家庭問答(1958年)※NEW 2月27日(日)〜3月8日(火)

倦怠期を迎えた医師・佐野周二と文化人淡島千景の夫婦。佐野が愛人・高千穂ひづるを囲っているアパートを妹・九条瑛子が、ヒッチコックの『裏窓』よろしく覗き見たことから狂想曲が始まる。様々な人物が入り乱れてのスクリーボール・コメディの快作。

三羽烏三代記(1959年) 2月27日(日)〜3月5日(火)

三世代の三羽烏と三世代のヒロイン、九組のスターによる恋と思惑が錯綜する賑やかな「松竹映画3,000本記念」大作。浅草の煎餅屋を舞台に、謎めいた家出娘・桑野みゆきをめぐって私立探偵や新聞記者たちが右往左往。微苦笑と爆笑の傑作コメディ。

恋とのれん(1961年) 3月2日(水)〜3月8日(火)

湯島天神下の老舗料理旅館の「のれん」を守る若女将・桑野みゆき、近代的なホテルに改造して団体客を受け入れようと計画する母・淡島千景。二つの世代の対立と融和、そして恋を、モダンなタッチで描く「花嫁シリーズ」のバリエーション。

素晴らしき十九才(1959年) 3月2日(水)〜3月8日(火)

番匠喜劇の面白さが凝縮された青春音楽コメディ。松竹伝統の「若旦那もの」をベースに、学生バンド「シックスロビンス」を率いる津川雅彦と父・三井弘次の世代間の対立をユーモラスに描く。中村八大、ザ・ピーナッツなど豪華音楽ゲストも見逃せない。

ふりむいた花嫁(1961年) 3月6日(水)〜3月12日(火)

浅草の老舗どぜう屋を舞台に看板娘・倍賞千恵子と、テレビ俳優を目指して家を出た兄・小坂一也、男やもめの父・伴淳三郎。様々な人物が織りなすハイテンポの快作コメディ。『大学の若大将』の笠原良三脚本による快調「花嫁シリーズ」第四作

浮気のすすめ 女の裏窓(1960年) 3月9日(水)〜3月15日(火)

吉行淳之介のエッセイを原作に「愛人バンク」をテーマにした風俗喜劇。男やもめの伴淳が、高峰三枝子や岩下志麻になぜかモーションをかけられる。昭和35年の風俗スケッチも楽しく番匠のモダンな感覚と伴淳のローカリズムがベストマッチ。

渦(1961年) 3月9日(水)〜3月15日(火)

井上靖原作の朝日新聞連載小説を映画化。佐田啓二と岡田茉莉子の倦怠期の夫婦に、美しき岩下志麻が立てるさざなみと、三角関係の行方。佐田は洋画配給会社を経営、ヨーロッパのアート系作品を買い付けている。いわば1960年のトレンディ・ドラマ。

のれんと花嫁(1961年) 3月9日(水)〜3月15日(火)

深川木場の材木問屋の長女・倍賞千恵子と、長崎の老舗カステラ屋の御曹司・津川雅彦。倍賞の父・佐野周二と麹町のカステラ屋の主人・月丘夢路。二世代の「恋とのれん」をめぐるハイスピード・コメディ。「花嫁シリーズ」第五作

三人娘乾杯!(1962年) 3月13日(水)〜3月19日(火)

鰐淵晴子・岩下志麻・倍賞千恵子の松竹三人娘によるキュートな「花嫁シリーズ」のバリエーション。舞台はお茶の水・湯島・上野界隈。下町の濃密な人間関係に、一流商社の専務・津川雅彦が加わって、恋のさやあてが繰り広げられる。

イラスト 近藤こうじ


さまざまの夜(1964年) 3月16日(水)〜3月22日(火)

菊村到の原作を三村晴彦が脚色。ヒロイン・北林早苗は、婚約者・勝呂誉に身体を求められても拒み続けている。父・山形勲が三ツ矢歌子を愛人にしているのが不潔で許せない。永すぎた春の恋人たちが結婚前に惑う「愛とセックス」をテーマにした異色作。

花の咲く家(1963年) 3月16日(水)〜3月22日(火)

独善的な夫・渡辺文雄に嫌気が差した妻・岡田茉莉子が、インドネシア・バリ島で出会った独身の医師・佐田啓二と恋に落ち、離婚を真剣に考える。井上靖の「サンデー毎日」連載小説を原作に、インドネシアロケを敢行して堂々たる風格で映画化。

クレージーの花嫁と七人の仲間(改題『乱気流野郎』)(1962年)3月16日(水)〜3月22日(火)

空前の「スーダラ節」ブームのなか、倍賞千恵子とクレイジーキャッツを組み合わせた音楽コメディの快作。ザ・ピーナッツが「ふりむかないで」、植木等・谷啓・ハナ肇が「五万節」を歌う。夢のバラエティ映画!「花嫁シリーズ」第六作

はだしの花嫁(1962年) 3月20日(水)〜3月26日(火)

鰐淵晴子と倍賞千恵子のダブル・ヒロインによる華やか明朗喜劇。雑誌編集者・鰐淵が、作家・南原宏治の新連載取材で乗った瀬戸内航路の船で、父・佐野周二と神戸のマダム・月丘夢路と鉢合わせしてしまう。「花嫁シリーズ」第七作

太陽を抱く女(1964年) 3月23日(水)〜3月29日(火)

『モンローのような女』でセンセーションを巻き起こした真理明美をお手伝いさん役にした大家族コメディ。明るくて聡明なヒロインが、様々な屈託を抱えている佐野周二の一家に爽やかな風を巻き起こす。番匠コメディの集大成のような快作。

泣いて笑った花嫁(1962年) 3月23日(水)〜3月29日(火)

鰐淵晴子と倍賞千恵子による、東京と京都舞台にしたノンストップ人情コメディ。東の桂小金治、西の藤山寛美・芦屋雁之助の東西喜劇人の競演。S K Dの踊り子・倍賞の華やかなステージ。見どころ、笑いどころ満載の「花嫁シリーズ」第八作

明日の夢があふれてる(1964年)※NEW 3月23日(水)〜4月2日(火)

浅草の老舗天ぷら屋を舞台に、元気一杯の若女将・鰐淵晴子と父」下町の人々が織りなす騒動を描く、賑やかな人情コメディ。三田明の青春歌謡をフィーチャーしながら、新旧世代の対立と融和を明るい笑いで描いた、もう一つの「花嫁シリーズ」

ウナ・セラ・ディ東京(1965年) 3月27日(水)〜4月2日(火)

番匠義彰と鰐淵晴子の松竹での最後の作品となったメロドラマの佳作。ザ・ピーナッツのヒット曲をフィーチャーして屈託を抱えた商社マン(園井啓介)とBG(鰐淵)の切ない恋が描かれる。松本英彦カルテットの演奏、昭和40年の「札幌雪まつり」が楽しめる。

見上げてごらん夜の星を(1963年) 3月30日(水)〜4月2日(火)

永六輔作・いずみたく音楽による同名音楽劇の映画化。荒川区・光の球場「東京スタジアム」に隣接している高校。定時制の坂本九と昼間部の榊ひろみが文通で心を通わせる。厳しい現実に立ち向かう若者たちの日々を描く。坂本九の歌もタップリ。

【生誕100年記念出版】
佐藤利明の娯楽映画研究所 第一巻「番匠義彰 映画大全〜娯楽映画のマエストロ〜」(佐藤利明著・Amazon Kindle版1980円・ペーパーバック版2640円・Amazonで発売中)。

番匠作品の魅力を分析した総論、映画全38作解説など充実の272ページ。発売中。表紙イラスト・近藤こうじ。

ラピュタ阿佐ヶ谷でも販売中



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