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『ホラ吹き太閤記』(1964年10月31日・東宝・古澤憲吾)

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。

08『ホラ吹き太閤記』(1964年10月31日・東宝・古澤憲吾)

4月12日(火曜日)は、『ホラ吹き太閤記』(1964年10月31日・古澤憲吾)。クレイジー初、古澤憲吾初の時代劇スペクタクル。脚本は笠原良三さん。『日本一のホラ吹き男』の主人公のキャラクターを、そのまま木下藤吉郎に置き換えたら? という発想の痛快時代劇。なのでフォーマット的には、実は「日本一の男」シリーズ

冒頭、戦国時代のモンタージュに芥川隆行さんの名調子のナレーションが、時代劇きぶを高めてくれる。そして希代の名曲「だまって俺について来い」(作詞・青島幸男 作曲・古澤憲吾)を快調に歌う植木さん!歌い終わると、ひたすら走って画面の彼方へ。どうかしている古澤演出! それゆえに勢いが違う!

で、蜂須賀小六(東野英治郎)との出会い。大風呂敷を敷いて、将来は家臣にすると宣言するのもホラ吹き男。織田信長(ハナ肇)に取り入り、三段出世して、ねね(浜美枝)を娶るまでの痛快さ。もはや無責任男の片鱗はなく、高度成長を邁進するスーパーサラリーマンの鑑のようなホラ吹き藤吉郎の爽快さ!

桶狭間の戦いまで、有無をいわせず一気呵成に展開していくパワフルなスーパー時代劇。植木等さんも、古澤憲吾監督も、初めての時代劇だけど、作り手の迷いや、現場の混乱は、一切感じられない。コクはないけど、エネルギーの塊のような娯楽映画。

その迷いのなさが、われわれに開放感、爽快さをもたらしてくれる。つまり「だまって俺について来い」の精神である。この人についていったら、きっと幸せになれる。そんな幻想を抱かされる究極のポピュリズムである。この歌と、この映画の持つパワーには、ヒトを幸せにするチカラがある。まさに「無条件幸福」である。

ある意味、日本一シリーズの早過ぎた集大成。年に一度は見るべき日本映画の至宝!

1964年11月リリース


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