娯楽映画研究所ダイアリー 2022年8月8日(月)〜8月14日(日)
8月8日(月)『警視庁物語 自供』(1964年・東映・小西通雄)
ぼくは明日59歳になりますが、この夏、イベント、ラジオ出演と並行して、ぼくが子供の頃からの憧れの映画スターで最高の音楽人のラストコンサートのパンフの取材、執筆をしています。7月から9月にかけ裕次郎さん、植木等さん、エルヴィス、宝田明さん、ゴジラ… 憧れのスター全ての仕事を同時進行中であります。こんな名誉なことはありません。娯楽映画研究家の道をつけてくれた両親、支え続けてくれている妻に、感謝です。
松尾昭典監督が、ご自身の代表作と仰っていた傑作『人間狩り』(1962年・日活)が満を持してDVD化! 嬉しい、嬉しい。クライマックスの舞台は、荒川区町屋! 京成町屋駅、最終電車のサスペンス!刑事映画の金字塔。「特捜最前線」ファン必見!
NHKラジオ第二、8月の毎日曜夜8時からの「#クレイジーキャッツの音楽史」ご拝聴頂きありがとうございます。講座のサブテキストとして、拙著「クレイジー音楽大全 クレイジーキャッツ・サウンド・クロニクル」(シンコーミュージック)を!
今宵の娯楽映画研究所シアターは、東映チャンネルで2年がかりで放映中の「警視庁物語」シリーズ第23作『警視庁物語 自供』(1964年・東映・小西通雄)。トップシーンは、四ツ木の溝川。この時代、ゴミをドブに投棄することは「違法行為」という意識があまりなかった。そこで行李詰めの遺体が発見される。「警視庁物語」ではほぼレギュラー(全12本出演)の谷本千代子さんが、不法投棄をする主婦の役で、相変わらずの存在感。
捜査一課チームは、早速、本田警察に本部を設置、捜査を開始する。ロケーションは京成線、総武線沿線。被害者は葛飾の血液銀行で売血していた男だと判明。血液銀行といえば葛飾区立石にあった。そのシーンが生々しい。昭和39年、オリンピックで沸き立つ都心に比して、葛飾界隈、庶民の街にはその恩恵が感じられない。やがて、被害者(浜田寅彦)の身元が満州からの引揚者と明らかになり、戦争にまつわる母(楠田薫)と娘(本間千代子)の悲しい語が浮き彫りとなる。ヒロインは本間千代子さん。その出生の秘密をめぐる物語もドラマの陰影となっている。
8月9日(火) 『女の座』(1962年・東宝・成瀬巳喜男)
おかげさまで、8/28(日) 開催の阿佐ヶ谷ネオ書房【佐藤利明の娯楽映画研究所SP】~娯楽映画の昭和VOL.8 東京ド真ん中!~お席完売となりました。
ありがとうございます
朝からずっとオリビアを聞きながら、仕事をしている。小6のとき、銀座十字屋で初めて買ったのがこのアルバム『そよ風の誘惑』"Have You Never Been Mellow "10代の多感な時期に、毎日聴いていた。73歳は若いなぁ。オリビア、大好き!
本日は59回目の誕生日。Facebookでは200人以上の友人たちがバースディ・メッセージをくださり、LINEでは泰明小学校の同級生たちからも祝ってもらいました。本当に嬉しい。カミさんが、亀戸一のケーキ屋さんで名物「和三盆ロール」を用意してくれて、豪快にトリスをヒタヒタにかけて「江分利満氏式サバラン」で祝ってくれる。誕生カードは「海底軍艦・轟天号」のポストカード!(今から10年前、特撮博物館で購入・笑)
今宵の娯楽映画研究所シアターは成瀬巳喜男監督連続視聴。DVDで『女の座』(1962年・東宝・成瀬巳喜男)。11日に「宝田明を語る」トークショーがあり、宝田さん出演作ということで。高峰秀子さんは荒物屋・石川屋を切り盛りするお嫁さん。夫と死別して以来、義母(杉村春子)と義父(笠智衆)を支えながら店を切り盛りしていた。この石川家は子沢山で、近所でアパート経営をしている先妻の長女・三益愛子さんと、浮気性の夫・加東大介さん。生花の師匠で婚期の過ぎた次女・草笛光子さんは離れに住んでいる。次男(小林桂樹)は妻(丹阿弥谷津子)とラーメン屋を経営、三女(司葉子)は失業中、四女(淡路恵子)は九州へ駆け落ちしたが頼りない夫(三橋達也)と上京中。五女(星由里子)は映画館のモギリをしている。
というわけで東宝女優総出演。賑やかでかしましいドラマが展開。そこへ、母(杉村春子)の前夫との息子で、生き別れになっていた宝田明さんが現れて、石川家の女性たちはそれぞれ胸をときめかす。この宝田さん、二枚目の好青年と思いきや、詐欺の常習犯で、いつも女性を泣かせている悪い男。草笛光子さんも、高峰秀子さんも、まんまと騙されて・・・。石川屋の界隈はセットだが、一家が法事に出かける多摩川、墓所のある谷中、そして高峰秀子さんが宝田明さんと待ち合わせをする渋谷など、東京時層探検が楽しめる。
8月10日(水)『放浪記』(1962年・東宝・成瀬巳喜男)
明日、8月11日です! 宝田明さんの少年時代、映画俳優として、ゴジラへの思いを、宝田さん自身のことば、インタビュー素材を駆使しての、いつもの娯楽映画研究所スタイルのトークです。ぼくも久しぶりに35mmで「ゴジラ」を堪能して、登壇させて頂きます。只今、編集作業中であります。
8月11日(木)スターツおおたかの森ホール「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」で、13時から「ゴジラ」(1954年)上映後、14時50分から登壇してトークします。いつもの「娯楽映画研究所」スタイルで、宝田明さんの満州での少年時代、そして東宝スターの時代、後半は”「ゴジラ」第1作と戦争体験”について語ります。当日券もあるそうです。ぜひ、足をお運びください。
今宵の娯楽映画研究所シアターは、宝田明さんにとって忘れがたい一本、成瀬巳喜男監督『放浪記』(1962年・東宝・成瀬巳喜男)をスクリーン投影。東宝創立30周年記念大作で、林芙美子の「放浪記」の映画化としては、戦前P.C.L.(1935年・木村荘十二監督、夏川静江、藤原釜足、滝沢修)、戦後は東映(1954年・角梨枝子、岡田英次、宇佐美淳也)に続く三度目。林ふみ子(高峰秀子)が、母(田中絹代)と義父(織田政雄)と四国を放浪していた時代。東京でカフェーに勤めながら詩作に励んだ時代、作家として成功するまで、さまざまな男性遍歴のなかに描いていく。スカした二枚目の詩人・伊達春彦(中谷昇)、シニカルさで女を惹きつける売れない作家・福地貢(宝田明)。いずれもロクな男ではない。春彦に裏切られ、一緒になった福地がどうにもならないダメ男。才能にも、男にも嫉妬して、金もないのに、仕事もないのに、コンプレックスをDVに転嫁させる。宝田さんとしては、まさに渾身の演技。『女の座』の延長にありながら、さらに男の身勝手さを、息苦しいまでに演じ切る宝田さん!お見事です。
8月11日(木)『ゴジラ』(1954年・東宝・本多猪四郎)
戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭『ゴジラ』(1954年・東宝・本多猪四郎)上映後、「宝田明を語る ゴジラと歩んだ平和への道」トークの模様です。(写真・平早勉さん)
スターツおおたかの森「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」。
『ゴジラ』35m m上映後、登壇して「宝田明さんを語る」トークしました。
宝田明さんが2020年にこの映画祭で話した満洲での戦争体験の映像をご覧いただき、そこから、宝田明さんの足跡を、さまざまな映像、宝田さんのことばで辿る70分でした。この素材を編集しながら、宝田さんとの30年に及ぶ日々が蘇りました
2019年、宝田さんにご出演をお願いした客船「ぱしふぃっくびいなす」での「シネマクルーズ」で、宝田さんのショーの前に上映した、宝田さん監修のオープニング映像をお客様にご覧いただき、宝田さんの言葉の数々を紹介しながら、映画スターへの道をたどりました。
『ゴジラ』が作られた昭和29(1954)年の映画界、第五福竜丸事件、創設されたばかりの陸上自衛隊とゴジラの闘い、東京大空襲とゴジラ来襲。円谷英二監督の『君の名は』と『ゴジラ』の特撮シーンについての話などを交えて『ゴジラ』第1作を検証しました。
最後に、『ゴジラ』と歩んだ平和への祈り、宝田明さん自身が、2020年の「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」でのトーク(聞き手:立花珠樹さん)の映像で締め、10月から順次公開の、宝田さんの最新映画『日光物語』(監督・五藤利弘)のお話をしました。
さて、客席から「ゴジラ」上映と、佐藤利明の「宝田明さんを語る〜ゴジラと歩んだ平和への道」トークショーを観てくれた妻のレポートです。ご一読いただければ!
8月12日(金)『乱れる』(1964年・東宝・成瀬巳喜男)
昨夜、帰宅後から執筆してきた長編原稿を書き上げました。規定の分量の倍近くなったので、3時間かけてシェイプ。もうこれ以上はカットできません、というところまで「カタカナ→漢字」「英語→カタカナ」「体言止めの連発銃」に。なんといっても1937年の誕生から2022年の現在までの音楽人生ですから。でも担当できて本当に「幸せだなぁ」であります。
自民党議員、内閣閣僚が「統一教会」まみれという現実は、MCUでいうと「キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー」で、正義の組織「シールド」幹部がみんな悪の結社「ヒドラ」だったという衝撃の展開の現実化。それぐらい大変なことなのですよ。いや、ホントに。現実がフィクションを超えた異常。
今宵の娯楽映画研究所シアターは、成瀬巳喜男監督、加山雄三さんと高峰秀子さん主演『乱れる』(1964年・東宝)をDVDからスクリーン投影。亡兄の未亡人である義姉(高峰秀子)を愛した放蕩の次男。静岡県清水市の商店街にある小さな酒屋を、戦後切り盛りしてきた高峰秀子さん。『女の座』のバリエーションでもあるが、加山さんに愛の告白をされてから、女性として目覚めていくプロセスが素晴らしい。この時代の「モラル」ゆえの悲しいラストに、ああ・・・といつも思ってしまう。
8月13日(土)『女の歴史』(1963年・東宝・成瀬巳喜男)
(お盆休みに突入しておりますが、入稿リミットが迫り来るなか、インタビュー原稿や、キャプション、データなど、書きに書きまくっています。いわゆる雑誌的な仕事は久しぶりなので、リードやキャプションの文字数と格闘するのは久々です。
27年前「35周年」「若大将グラフィティ」の時もそうでした。
CD「若大将トラックス」1&2を作った時もそうでした。
25年前「地球音楽ライブラリー」執筆の時もそうでした。
17年前「45周年」の時もそうでした。
59歳になって、憧れのスターの仕事をふたたび出来る喜びは何にも換えがたいです。キャスティングをしてくれた方に、大感謝です。原稿を書きながら、27年前の自分と向き合っているような、25年前の自分に助けられているような、不思議なチカラが湧いてきます。仕事分量としては、どう考えても、オーバーキャパなのに、全然、大丈夫! どんと来い!という感じ。
植木等さんやクレイジーキャッツをラジオで語り、宝田明さんとゴジラのトークをして、その上での若大将の仕事だから、やっぱり、この夏は特別なのです。全てが、これまでの自分、娯楽映画研究家の仕事と繋がっているのです。
今宵の娯楽映画研究所シアターは、成瀬巳喜男監督研究、戦前、戦中、戦後を生き抜いた高峰秀子さん主演『女の歴史』(1963年・東宝・成瀬巳喜男)をDVDからスクリーン投影。東京深川、女学校への通学中、老舗の若旦那・宝田明さんにみそめられて結婚した高峰秀子さん。結婚してすぐ、義父(清水元)が破産して芸者と温泉で心中。一家は破産、苦労しながら義母(賀原夏子)と夫、息子とつまし暮らすも、夫は応召されて戦死してしまう。義母も高峰さんも未亡人として懸命に生きていく。それから十数年、自由が丘で美容院を切り盛りしながら、息子(山崎努)を苦労して大学まで出す。息子は自動車のセールスマンになり、キャバレーのホステス(星由里子)と一緒になるが、高峰さんはそれを認めない。しかしある日、息子は自動車事故で亡くなってしまう。星由里子さんは山崎努さんの子を孕っているが・・・
賀原夏子さん、高峰秀子さん、星由里子さん。いずれも最愛の男性を亡くしてしまうが… まさに『女の歴史』である。原作はなく「女の一生」をベースにした笠原良三さんのオリジナル脚本。宝田明さんの親友で、独身時代から高峰さんに惚れ抜いてきた仲代達矢さんのキャラクターが素晴らしい。闇市の食堂で腕を振るう、仲代さんの戦友で一流コック出身の加東大介さんのキャラクターの明るさに救われる。
8月14日(日)『日本敗れず』(1954年・新東宝・阿部豊)
今日も朝から原稿、インタビュー、座談会、ディスコグラフィー、楽曲解説と、次々と。27年前と同じエネルギーで。切り替えるために買い物散歩。
夜8時からNHKラジオ第二「クレイジーキャッツの音楽史 第二回 戦後ジャズブームと7人の猫たち」オンエアです!聴いてくだされ!
今夜の「クレイジーキャッツの音楽史」第2回は、昭和20年代に話を巻き戻して、クレイジーキャッツのメンバーのジャズ時代を語ります。音源もいろいろ紹介します。 始まりました。今日は戦後ジャズブームについて語っています。
第2回目のデジタルテキスト、放送を聴きながらまとめました。本日の復習、聴き逃しのお供に!
今宵の娯楽映画研究所シアターは『日本敗れず』(1954年10月26日・新東宝・阿部豊)をスクリーン投影、早川雪洲さんが川浪陸軍大臣=阿南惟幾を演じた、もう一つの「日本のいちばん長い日」。東京空襲のシーンから始まるが、このシークエンスの特撮、セット、逃げ惑う人々のモンタージュが見応えがある。言問橋に見立てた橋の上から次々と飛び降りる人々、阿鼻叫喚の光景。戦後9年、戦争体験を人々が共有していたことを実感できる。この映画の翌週、東宝で『ゴジラ』(11月3日)が公開される。
ドラマはポツダム宣言受諾をめぐる閣議の攻防、御前会議での「ご聖断」を承服できない陸軍の青年将校たちが、玉音放送の音盤奪取を目論んだ「宮城事件」を描く敗戦秘話。いずれのエピソード、展開も岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』(1967年・東宝)でお馴染みだが、映画で描かれたのは本作が初めて。ハリウッド仕込みのジャッキーこと阿部豊監督の演出、早川雪洲さんが演じた陸軍大臣の苦渋。登場人物たちの名前は変えられているが、それぞれのキャラクターの描き分けで、誰が誰かはよくわかる。