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HRこそセンスメイキングが必要なのではないかという話
数年前に知り合いを通じてセンスメイキング理論に出会ってから、これは今後必要になる考え方だと直感し、相棒とともにセンスメイキングプログラムまで作った私。
このプログラムは経営者や事業責任者をイメージして作っており、実際に受けていただく層も大半がそういう方々です。複雑性が高く不透明であり、常に変化し続ける世界において、新しい未来を創るプロセスとして受け入れてもらっている印象です。
一方、このプログラムの説明の中にも
「事業や組織に変化を生み出したい」
「組織に方向性と推進力をもたらす」
「組織の求心力を高められる」
というようなことを書いており、まさに組織を動かすHRにこそ必要な力なのではないかと思い始めたのです。そこで今回は別の視点も加えながら、HRとセンスメイキングをテーマにnoteを書いてみようと思います。
そもそもセンスメイキングとは?
改めてセンスメインキングとはどういう理論、考え方なのでしょうか?
詳しくは以下のコラムやnoteをご覧いただきたいのですが、
私たちはこう定義しています。
変化に意味を与え、
ストーリーによって納得感を醸成することで、
ベクトルの揃った自発的な行動を生み出すこと
入山先生は腹落ちの理論 というように紹介されていらっしゃるかと思いますが、私はこの理論を能動的に使う意識を持ちやすいように「意味づけの理論」である、というような説明をしています。(意味づけの結果、周囲のメンバーが腹落ちして行動を起こすということなので同じことではあるのですがw)
センスメイキングを理解してもらうためのエピソードとして「ハンガリー偵察隊」の話がよく使われますが、ビジネスの世界にもたくさん事例はあるように思います。
レゴ社の事例
例えば、レゴ社の事例などは非常に分かりやすくインパクトのある事例です。2000年代前半の業績低迷期を抜け出せたのはセンスメイキングの手法があったからだと言われています。
世の中にたくさんのおもちゃがあふれる時代になり、「子どもはどんなおもちゃを求めているか」を考え続けた結果、手っ取り早くて刺激的なおもちゃを開発するようになり、皮肉にもレゴらしさが損なわれ、他社と同質化してしまったレゴ社。
そこで新しくCEOになったクヌッドストープは、おもちゃのデザイン云々ではなく、「遊び」という現象の理解が大事であると気づき、最終的に彼らは「子どもが遊びに求めているものは何か」という問いを掲げ、再出発しました。
そこで見えてきたのは、子どもたちはスキルをマスターするために遊ぶし、それが自分にとって価値のあるものなら、習得のために努力し続けることができる。それは「子どもは時間に追われて手っ取り早い満足をおもちゃに求めている」というこれまでの前提とは真逆の洞察だったのです。
そこから「レゴブロックでの遊びを通じて熟達を目指す子どもたち」という中核ユーザーの存在を見出し、本当に大切にすべき顧客がだれなのかを理解した結果、核となる強みを取り戻すことができたという事例です。
これもこのように説明されると違和感なく受け入れることができると思いますが、当時その場にいたと想像するならば、その時の主流(流行り)とは真逆の選択をして、そこに全振りする意思決定を実行することは容易ではないと思いますが、そういう時にこそ(=論理的な判断を超越した意思決定)センスメイキングは非常に効果的なのです。
マツリカの話
かく言う、私が勤めているマツリカもセンスメイキングをしてきた会社だと感じています。
今でこそマルチプロダクトを展開している会社になっていますが、創業事業はMazrica Salesで現在でもメイン事業になっています。Mazrica Salesは領域でいうならば「SFA/CRM領域」ということになりますが、この領域は当時(今もだと思いますがw)、レッドオーシャンだと言われていました。
もちろん市場規模や市場成長率、自分たちのその当時のアセットなどを総合的に判断して決めているわけですが、センスメイキングの文脈でいうならば、大きな洞察を得たからとも言えます。それがペインの大きさとも言えるわけですが、その当時でいうなら意外な盲点になっていたように思います。
SFA(セールスフォースオートメーション)は日本では営業支援ツールと呼ばれています。では、実際の営業現場ではどんな風に使われていますか?マネジャーが営業パーソンを「管理するため」に使っていませんか?
つまりは、営業支援ツールではなく「営業管理ツール」になっていて、営業パーソンのためのツールではなく、営業マネジャー(もしくはその上の経営陣)のためのツールとして機能拡充されていたのです。
だからこそ、実際に日々触れてほしいはずの営業パーソンには直接的に必要ない機能や使いこなせない機能は充実する一方で、現場の使いやすさや効果性は後回しになっていたのです。(今は素晴らしいUI/UXのtoBプロダクトも増えていると思いますが、10年前はそういう状況ではありませんでした。)
ここに気付いたからこそ、私たちとしても勝負できると確信していたわけですが、やはり管理機能をできる限りそぎ落とし、現場主義でシンプルでUI/UXに優れたプロダクトとして展開するにあたっては、様々な葛藤はあったものの、上記の直感的洞察やそもそもの思想をもとにしたセンスメイキング(不確実なものに対する意味づけの力)によって、マツリカに関わるステークホルダーは迷いなく突き進めていたように思います。
HRにとってのセンスメイキング
ここまではセンスメイキング自体の理解を深めていただく目的で事例を含めて話を進めてきましたが、ここからはHRという役割において、どのように使っていけるのかについて触れていきたいと思います。(なお、主語が「HR」と大きいのですがw、基本的には私の実体験に基づくものなのでその点はご了承ください。)
きっかけ
私がこれまで経営者や事業責任者向けに伝えてきた「センスメイキング」という考え方は、実は自分がやっているHRにこそ必要なのではないかと思ったきっかけ。
それは、私自身が今まさに苦戦しているから(苦笑)、というところにあります。
私はマツリカでは「組織開発」をメインミッションとして働いています。当初、組織開発を専任担当している人はおらず、育休から復帰するタイミングに自分で決めて会社に申し出て、今に至っています。
「組織の効果性と健全性を高めることを目指した計画的で、長期的な変革の実践」だと言われる組織開発。特に広義な意味での組織開発は対象範囲も広いため、「何をやるのか」「何をやっているのか」も見えづらいところがあります(この辺りはまた別のnoteでまとめたい)。
また、例えば「採用」とは違って、「なぜやるのか?」という目的や背景、「その結果が何が得られるのか?」というアウトカムとなると、一層イメージしづらいのではないかと思います。
もちろん、「それ(組織開発≒人や組織に投資していくこと)は不要だ!」と考える人は少ないと思いますし、実際にマツリカのメンバーは経営陣筆頭に大切にしているメンバーが多いです。ただ、イメージが曖昧な分、どうしても目の前に迫っている課題に比べると、優先度が下がってしまう面はあるように感じていました。
それは、ひとえに私の働きかけに問題があるのだろうと考えていた時に、この構造は「センスメイキングが威力を発揮する構造に似ている」のでは?とはたとひらめいたのです。
意味づけの必要性
事業におけるセンスメイキングは、現象を観察する中で得る直感的洞察から生み出す勝ち筋などを実行に移す際に使われます。それは、その「勝ち筋」自体に何の確証もなく、それに気づき、そのことを信じているのはもはや自分だけという状況だったりするためです。
誰がも論理的に判断すればベクトルが揃うのであればそこにセンスメイクする必要はあまりなく、先行きが見えず論理を超えた判断にこそセンスメイキングは効果的です。
今回の私の例でいうと、「論理を超えた」という文脈ではないものの、先行きが見えないが故に、皆が変化への確信が持てない状況下で、組織(社員)を動かさないといけないという状況は、センスメイキングが事業側で威力を発揮する構造と近いと感じたわけです。
私自身も苦戦しているのでw、自らがセンスメイキングできているわけではないのですが、もしセンスメイキングを活用することで状況を打開できるのであればそれを活用しない手はありません。
センスメイキングは、
自分たちのアイデンティティに基づきながら
力強く方向性を示し(本来はその前に観察に基づく洞察がある)
ストーリーで語って巻き込み
何よりもアクションを重視する
このあたりを意識して、社員とコミュニケーションを取ることで少しずつ乗っかってくれる人も増えてきて、その継続によって組織の臨界点を超えることができれば、然るべき変化をもたらすことができるのではないかと思ってます。
繰り返しにはなりますが、自社においてもその状況に至ってはおらず、これは私自身のチャレンジ宣言でもあります。チェンジエージェントとして組織を望む未来へとナビゲートしていけるように、センスメイキングを大胆に取り入れてみたい今日この頃です。
その結果を別noteで紹介できるように引き続き精進します!!