2022/2023 リーグ・アン第30節 ニース vs PSG
公式戦14試合無敗を維持するニースと、ホーム2連敗中のPSG。調子の面では対照的と言って良い両チームの対戦。
スタメンは以下。
ニース 5-4-1
シュマイケル
メンディ、ヌダイシミエ、トディボ、ダンテ、バード
ペペ、ラムジー、ブダウィ、テュラム
モフィ
PSG 3-5-2
ドンナルンマ
マルキーニョス、ラモス、ダニーロ
ハキミ、ヴィティーニャ、サンチェス、ソレール、ヌーノ・メンデス
メッシ、エムバペ
まず、ニースは4-5-1のブロックを組み、組織された守備から入ってきた。中央を固く守り、サイドに追い込む意図が見えた。MFは2列目から飛び出してPSGのCBにプレッシャーをかけ、縦に展開させないタスクを担っていた。
この守備は、PSGにとって有利と思われた。2列目から飛び出すことで、中盤にスペースが空く。そこへメッシが受けに降りたり、技術溢れるMFたちが位置取りすることで、スペースを活用できる。しかしニースはよく整理されたチームであり、そこまで大きな穴を空けない。
一方のPSGは、概ね普段通り、ショートパスを繋ぎながらメッシとエムバペを中心に攻めるが、この日は見慣れない顔を見せた。ミドルシュートとクロスを連発したのである。PSGの攻撃と言えば、ショートパスを繋ぎ、ゴール前ではそのテンポを上げ、ワンツーやフリック、浮き球を織り交ぜた即興性の高い中央突破。調子良くイメージが合っている時は良いが、悪く言えば再現性のないワンパターン攻撃(矛盾したような表現だが、緻密に設計されておらず、ひたすら中央から攻めるのみ)であり、相手からすると守りやすい面があるだろう。その反省なのか、この日はメッシ、ソレール、マルキーニョスがミドルシュートを放ち、ヌーノ・メンデスのアーリークロスにダニーロがヘディングで合わせポストを叩く、といった場面が見られた。明らかにチームとして意図を持ち、変化を加えてきた。ただし前半途中から普段通りの攻撃に戻った。
前半26分、メッシのゴールでPSGが先制。ヌーノ・メンデスのクロスに合わせた、素晴らしいゴールだった。詳細は後述する。
その直後、ニースはフォーメーションを4-3-3に変更した。先制された影響に加え、中央および後ろに人数をかけ過ぎている、との判断だったのだろう。
前半はそのままスコアが動くことなく終了。
後半開始直後、ニースは猛攻撃を仕掛けてきた。サイド攻撃とCKから、シュートを放ち続ける。しかし、それら全てをドンナルンマが防ぐ。足元の技術や判断力について批判されることもある彼だが、ゴールライン上でのシュートストップ能力は間違いなく世界一の一人だ。
ダニーロのスタイディングでのシュートブロックも素晴らしかった。PK献上のリスクを避けるため、相手の足元へタックルするのではなく、シュートコース上を滑り二度足を伸ばす。老練なプレーだった。
ニースの猛攻撃を凌ぎ切ったPSGは、メッシのCKからラモスがヘディングで追加点。その後も失点を許さず、2-0で勝利した。
それでは、メッシのゴールを詳細に振り返りたい。簡単に決まったように見えて、駆け引きと技術が詰まっていた。
まず、PSGの攻撃は、ダニーロがゴール前でボールを回収したことから始まった。ボールは左のソレールを経由し、中央のメッシに渡る。ここでメッシは2人をかわし、プレッシャーを完全に無効化。ニースに撤退守備を強いた。メッシは左へはたいた後、左サイドでもう一度受け、中央のラモスに渡す。そして味方が左右にボールを回す間に、敵陣深くへ上がっていく。
ここからが面白い。メッシは普段通り、フラフラ歩きながら、相手のライン間および最終ライン前にポジションを取り、その後、下図のように動いた。
フラフラと歩きながら、4番ダンテの背中側を回る。一度オフサイドポジションを取った後、相手の視野から外れることで、フリーになる算段だ。そして、ボールが左サイドのソレールから右サイドに来るタイミングで、19番ケフラン・テュラムがスライドして空けていたスペースに顔を出す。当然ダンテはここまで付いてこないし、ケフラン・テュラムには気付かれていないため、完全フリーになれる。
そして、そこから一気にテンポアップ。ボールを受けたメッシは、エムバペとパス交換し、左のファビアン・ルイスに渡す。このプレーにより、相手中盤4枚とCB1枚を密集させ、ファビアン・ルイスがすぐに左のソレールに渡すことで、左サイドで2対1に近い状況を作った。
その間、メッシはゴール前に入っていく。ヌーノ・メンデスの1回目のクロスを相手がクリアし切れず、再びヌーノ・メンデスに戻ってきた幸運に恵まれ、2回目のクロスをメッシが仕留めた。
ヌーノ・メンデスのクロスは、完璧ではなかった。タイミングと速さは申し分なかったが、マイナス気味になった上、ゴロではなかった。難しいボールだったが、メッシは完璧に対応した。マイナス気味のクロスが来ると、シュートのインパクトポイントよりも軸足が前に出てしまい、さらにゴロではないと、シュートをふかしてしまう可能性が上がる。しかしメッシは、ハーフボレーのような形で、インサイドでうまく合わせた。メッシですら完璧なインパクトにはならなかった点が、その難易度を物語る。抜群のシュート技術だった。
これでメッシは1G1A。ネガトラでの切替も早く、退団が規定路線と言われる中、奮闘した。
彼への批判は理解できる。「守備免除は現代サッカーに適していない」「ロスト後あまりに無気力」等、事実と言って良いだろう。ただし、今節のようなプレーを見せられると、残り少ない時間、彼のプレーを楽しむべきだという気持ちになる。何せ彼は、押しも押されぬGOATだ。可能なら、後味悪い退団だけは避け、「GOATが自分のチームでプレーしていた」と自慢できる未来になることを願ってやまない。
以上。
2023/04/08
Ligue1 2022/2023 Journee 30
OGC Nice 0-2 Paris Saint-Germain
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