歴史上「ブランド」が着目されたのは危機の時代?
前回まで、コロナ時代に起きた環境変化や意識変化は、ブランディングで打破できるのかを何回かにわたって考えてきました。
今回は、「なぜ、このコロナ時代に、ブランディングが必要なのか?」という問いに、歴史的な観点から考えてみたいと思います。
ブランド・マネージャー認定協会の特別顧問として日頃大変お世話になっている中央大学ビジネススクール教授の田中洋先生(日本のブランド論の第一者)に教えていただいたことがあります。
それは、
ブランドは逆境の申し子
だというのです。
どういうことかと言うと、歴史上「ブランド」が着目されたのは危機の時代だということなのです。
約90年遡ります。
世界大恐慌は、1929年10月24日にニューヨーク証券取引所での株価暴落をきっかけに起き、1933年に一旦底を打ちますが、またその後、厳しくなり、940年頃まで景気後退が続きます。
このような大恐慌の真っただ中である1931年に世界で初めて、P&Gにおいて、ブランド・マネージャー制度が発足しました。
いわゆるブランドを単位として物事を考え始め、ブランド単位で責任をもって遂行するようになったのが、90年前の大恐慌という危機の時代なのです。
よく言われることですが、
営業 = 売る
マーケティング = 売れる仕組み
ブランディング = 売れ続ける仕組み
この売れ続ける仕組みや施策を検討し始めたのが、90年前の大恐慌時で、ブランディングの夜明けという時代です。
当時は、ほとんどの企業が企業全体で様々な商品を売っていました。今では、あたり前の考えですが、企業全体から、まず、1つ1つの商品に対して売る意識を向けます。
その1つ1つの商品に対して、「売り込む」のではなく、「売れる」こと、いわゆる「選ばれる」ことに着目します。さらには、「売れる」から、「売れ続ける」ための仕組みや施策を検討し始めた時代です。
1929年から始まった世界大恐慌、その後、1940年まで10年続いた景気後退、そのような経済危機に、いかにしたら売れ続けることができるのかの知恵が、ブランド・マネージャー制度の発足に繋がったのでしょう。
まさに、ブランディングの夜明けの時代です。今回のコロナショックは、株価が暴落しているどころか、むしろ上がっている状況なので、一概に大恐慌時代の再来とは言えません。
ですが、経済的にも逆境の時期であり、同様のインパクトがあります。
このことが田中先生が「ブランドは逆境の申し子」と言われた所以なのでしょう。
今回は、「なぜ、このコロナ時代に、ブランディングが必要なのか?」を歴史的な観点から考えてみましたが、コロナ時代は、ブランディングが必須な時代あり、各企業が自社のブランド価値に対して、改めて向き合う時期なのではないでしょうか?
次回は、ブランディングが必須な時代ということは分かったが、「そもそも、ブランドとは何なのか?」という問いを考えてみたいと思います。